【京都の昭和レトロ】老舗カフェ「喫茶ソワレ」に男ひとりで。アールヌーヴォーな時代に心が掴まれたひととき

  • 写真・文:一史
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京都を代表する昭和の老舗カフェ「喫茶ソワレ」。
名物「ゼリーポンチフロート」で、旅の歩き疲れをリフレッシュ。

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はじめて訪れました。
気になってた喫茶ソワレをようやく訪問。
コーヒー&古民家好きでして、京都では町家を改装した現代のコーヒーショップをよく巡ります。
カメラ片手に向かう東京からの男ひとり旅は、いつも一泊か日帰り。
時間が限られるため昔がらのカフェに行くのは「またこんど」となりがち。

昭和の老舗では「イノダコーヒ本店」(※コーヒが正式表記)には行ったことがあります。
このカフェのはじまりが戦後間もない1947年(昭和22年)。
喫茶ソワレが1年後の48年(昭和23年)。
同時代の社交場なんですね。

2店の大きな違いは、イノダがコーヒー文脈、ソワレがお洒落文脈で語られるところ。
ソワレは女性向けという勝手なイメージを抱いていました。
かつて女性ファッション誌の編集者をやり、“女性的とされるもの”がぜんぜんOKなわたしでも、「京都で行きたい店ランク」の上位には入らなかったのです。

ところが今年4月の京都旅で歩き疲れて甘い炭酸水が飲みたくなり、
「あ、そうだ。喫茶ソワレはクリームソーダが有名なんだっけ」
と思い出し扉を開けてみることに。

店内に一歩足を踏み入れると、

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聞きしに及ぶ真っ青な照明。
薄暗く青い幻想的な空間に包まれます。
音楽がない緊張感も心地よく、外界から遮断された別世界が広がります。

喫茶ソワレの誕生初期は蛍光灯を青いセロファンでくるみ、令和のコロナ禍以降に青色LEDに変えたそう。
(参照:オーナーへのインタビュー記事
https://www.felissimo.co.jp/gopeace/archives/1625/
 ←コピペアクセスでお願いします)

青照明が「女性を美しく、男性を若々しく見せる」という考えから考案されたことはよく知られたエピソードでしょうか。

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席につき冷静に周囲を見回すと、20世紀初頭のアールヌーヴォー(植物や生物をモチーフした曲線デザイン)とその後のアールデコ(幾何学的直線デザイン)とおぼしきインテリアや装飾が次々に目に飛び込んできました。
手仕事の木彫り装飾に囲まれる体験がとても新鮮で。
大理石、コンクリート、ガラスといった固いマテリアルの現代的なカフェ(またはファッション店)とは真逆の温かみ。
「あ〜、たまにはこんなのもいいなぁ」としみじみと。

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ステンドグラスも20世紀初頭によく見られる装飾でしょう。
このカフェができた戦後のヨーロッパでは、アールデコさえ流行が過ぎた時代かと。
でも遠く海を渡り島国に情報が流れてきたタイムラグも考慮すると、当時はとてもモダンだったことが推察されます。
初期は大人男性の溜まり場で、70年代に女性客を招きたくてフルーツポンチなどの美しいメニューが考案されたそうです。

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『京の繁華街で約80年 さながら美術館 あの名喫茶が国登録文化財に』という喫茶ソワレを紹介する朝日新聞のオンライン掲載記事(4月28日付)を先日見かけました。
国登録有形文化財そのものは京都では数多く、市内だけで243件(2019年1月末告示分)あります。
(京都市が運営する「京都市情報館」25年4月16日の記述より)

喫茶ソワレより古い34年創業の「フランソア喫茶室」もそのひとつ。
公式サイトの記述によると「2003年、フランソアは喫茶店としては初めて国の登録有形文化財に指定されました」とのこと。
レストランや喫茶店のジャンルに限れば、いまも登録されている建物はごくわずかしかありません。
学問都市だった京都に生まれた、知識人や学生が集ったカフェ文化が現代でも守られているのは素敵なことですね。

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椅子に座り、オーダーしたのがゼリーポンチフロート。
「せっかくだから写真映えさせよう」と、このメニューに決めました。
クリームソーダの炭酸水とアイスクリームの両方を味わえますから、「クリームソーダ飲みたい欲求」も満たせますし。

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甘みはさらりとして、ゼリーはとても薄味。
昔ながらの製法を守ってるそうです。
極上のスイーツが山ほどある現代では印象的な味ではないでしょうが、この場所にはよく合ってます。
頭のなかで「これでいいんだよ、これで」と呟いてました。

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上写真はノーマル色調に補正したセリーポンチフロート。

喫茶ソワレの場所は、鴨川に掛かる観光名所の四条大橋のすぐ近く。
京都河原町駅から徒歩1分(?)です。
京都市でもっとも賑わう繁華街の一等地にある2階建て。
暑い真夏に行くのも良さそうなんですよ。
きっと身も心も涼しくなるはず。

たぶん東京・目黒にある東京都庭園美術館の内装がお好きな方なら、訪れて満足できるでしょう。
昭和にタイムスリップしつつ、古き時代に京都に住む別の人間になったような不思議なひとときを過ごせます。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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