【箱を積んでつくる家】家族とともに成長する、“組み替え可能な住宅”の驚きの構造

  • 文:山川真智子
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オランダ・アムステルダム

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Photo by Studioninedots_Light House©Sebastian van Damme

アムステルダムの人工島に造成された新興住宅地に、ユニークな住宅が誕生した。家は箱型のモジュールを積み重ねて構成されている。綿密に計算されたレイアウトにデザイナーの遊び心が加わって、多様な空間体験を提供する独創的かつ実験的な建物となっている。

人工島の新興住宅地という立地 自由かつエコな設計を歓迎 

「ライト・ハウス」と名付けられたこの家は、アムステルダム市が新たに整備した人工島『セントルムアイランド(Centrumeiland)』に建てられた。オランダは欧州で特に人口密度が高い国の一つだが、アムステルダムを含む西部都市圏ラントスタッドには残された土地は少なく、ほとんど拡大の余地がなかった。そこで、過去の干拓事業により作られた人工湖のアイメーア湖に、新たな住宅用地として複数の島々が造成された。

『セントルムアイランド』は、その一つとして2015年に誕生。持続可能性と個人の表現や実験を後押しする文化を前面に打ち出した新興住宅地として、1200~1500戸の住宅建設が計画されている。

 家のオーナーは、長らくアムステルダムで暮らしていた2人の子供を持つ夫婦だ。新居の建築に際し、地元の建築事務所、スタジオ・ナインドッツに設計を依頼。「夫婦と子供たちの絆、そして周囲の環境とのつながりを大切にした住まい」という条件だけをつけ、デザインはほぼ完全に設計事務所に委ねた。

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Photo by Studioninedots_Light House ©Sebastian van Damme

箱と箱の空間を利用した、ガラスブロックで採光

従来の住宅では多くの要素が1階に集中しがちだが、この家では「箱」を垂直方向に積み重ねることで、家族の主要なアクティビティを家全体に分散させている。さらに箱の内部だけではなく、箱の上下にも住空間を設置。例えば家の心臓部であるキッチンエリアの真上には、プライベートな時間をのんびりと過ごせる空間が広がっている。最上階には天井まで届くアーチ形の窓を備えた開放的な家族用スペースがあり、その先にはアイメール湖を一望できるテラスが設けられている。箱と箱の間の自然に開かれた空間を移動するうちに、通常の上と下という感覚は次第に消えていくという。

 建物の外観も独創的だ。正面のファサードの下半分は正方形のガラスブロックをはめ込んだ壁で構成されており、日光を家の奥深くまで取り込む。通りからの視線が気になりそうだが、ブロックが視界を歪めるため、見られているという感覚は生じにくい。正方形のリズムは、背面ファサードに沿ったスチール製格子壁のデザインにも引き継がれ、建物に統一感を出している。

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Photo by Studioninedots_Light House©Sebastian van Damme

 

軽量かつ柔軟性に富む構造 家族の成長とともにアレンジも可能

構造面では、鉄骨フレームにプレハブ式の木製エレメントを組み込んだ軽量システムが採用されている。このモジュール式かつ循環型のアプローチにより、柔軟性や解体の容易さ、そして長期的な持続可能性が実現されている。可能な限りカーボンフットプリントを抑えることを掲げる、『セントルムアイランド』のモットーに沿った住宅となっている。

 「ライト・ハウス」は、上と下、内と外、開放と閉鎖といった境界の感覚を曖昧にすることで、住む人に異なる空間体験を与えると同時に、家族のつながり方について考えさせてくれる存在でもある。レイアウトは、家族のライフスタイルが変わることを考慮してデザインされており、時間の経過とともにアレンジし、成長する余地も残されている。

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Photo by Studioninedots_Light House ©Sebastian van Damme
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Photo by Studioninedots_Light House ©Sebastian van Damme

山川真智子

Webライター

早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。

山川真智子

Webライター

早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。