テキサス州西部にある小さな町マーファは、ドナルド・ジャッドによるアート作品の恒久的な設置を具現化した「聖地」として知られる。ジャッドは70年代にNYからマーファへ移住し、広大な砂漠の風景の中に建築と作品と家具を一体化させた空間を時間をかけて築き上げた。ジャッドが移住したおもな理由は、美術館のホワイトキューブに一時的に置かれるのではなく、自らの芸術哲学を具現化するべく、自身と知人アーティストの作品を「理想の場所」に永遠に残そうとしたからにほかならない。
この町には、ジャッドの遺志を継ぐふたつの重要な組織があり、それぞれ異なる役割を持つ。そのひとつは、旧陸軍基地の施設や敷地を利用した広大な美術館を運営する「チナティ財団」。荒野に並べられた巨大なコンクリート作品や、砲兵舎として使われていた倉庫に設置した、銀色に輝く100個のアルミニウム箱からなるインスタレーションなど、光や周囲の環境と共鳴する大規模な作品を当時のまま展示している。一方「ジャッド財団」は、彼が意図した「ありのままの姿」で作品を保存・管理する非営利団体で、ジャッドが拠点としていた建物を当時の状態で維持し、一般公開している。
本展は、日本初公開を含む50年代の抽象表現主義的な初期絵画から、代名詞ともいえる10個の箱状のユニットを垂直に等間隔で壁に設置した「スタック」と呼ばれる立体作品などを展示。4階フロアでは、マーファの空気感に触れられるよう、ジャッドがマーファで手掛けた25カ所以上の建築・展示空間について、ドローイング、図面、写真、映像を用いて紹介。さらにワタリウム美術館の前身「ギャルリー・ワタリ」で開催された日本初個展のアーカイブ資料も展示するなど、ジャッドと日本の交流にも触れられている。
