【米の旨味あふれる濃厚にごり酒】「生酛のどぶ」が日本酒嫌いを変えた理由

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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久保本家酒造/生酛のどぶ

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天然の乳酸菌を活かした生酛づくりで醸し、搾る前のもろみを粗漉しした米感たっぷりのにごり酒。米そのものを食べているような豊かな旨味が特徴だが、後味がスッキリと軽く、飲み飽きしない。特に熱々に温めるのがお薦め。こっくりと深みが増し、飲むほどに腹の底から幸せになる。つまみは、白ごはんに合うものならなんでも合うが、特に漬物や魚、あるいは肉の粕漬け、チーズなど発酵食品と相性抜群。720mL ¥2,090/久保本家酒造 TEL:0745-83-0036

飲んべえに人気の下町、東京都葛飾区立石にある「ブンカ堂」は、あらゆる酒を楽しめる人気居酒屋だが、とりわけ純米酒の燗酒に熱い店だ。軽やかな「鯉川」からどっしりと骨太な「竹鶴」までさまざまなタイプの燗で美味い純米酒を揃え、多くの燗酒ファンが足繁く通う店として日本酒界では知られている。店主の西村浩志さんも燗酒党で、「自分もふだんは燗酒が飲める店しか行かない」と教えてくれた。

ところが意外にも、もともと燗酒はおろか、日本酒が苦手で興味がなかったと言う。

「日本酒には先輩などから強引に飲まされるイメージしかなく、気分的にも受け付けない酒でした。なので、『二毛作』で働いている時に日本酒好きな常連さんたちにいろいろとお薦めされても興味が湧かず、いつも話を右から左に流し、適当にスルーしていました(笑)」

そんな西村さんの日本酒嫌いが180度変わったのが約20年前。「二毛作」時代の常連がぜひ飲んでほしいと現物(日本酒)を持参したのが転機になった。それが今回イチオシの自腹酒、“生酛のどぶ”である。

「美味い!と唸りました。しっかりと旨味があるのに後味がきれい、しかもにごり酒なのに燗酒にすると炊きたてご飯のようにさらに美味い。ここから日本酒、特に燗酒にハマりました」

お気に入りのおともは、立石出身のシンガーソングライターで、実家が立石の中華料理の名店「蘭州」のにたないけんの音楽だ。

「彼のギターと声が奏でる素朴な曲は、スッと自然に身体に入ってくるので、同じく素朴な生酛のどぶにしっくりくるんです。この組み合わせがあればいくらでも飲めますよ」

酒も音楽もじわ〜っと身体に染みるおいしさで、飲めば飲むほど心地よく、この快感にいつまでも浸っていたくなるだろう。

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気取らない曲が奏でる、酒と音楽のハーモニー

「ブンカ堂」のBGMでもあるという、にたないけんの音楽。「年に一度は店でライブを開催するほど、うちの店と燗酒に合う」と西村さん。“生酛のどぶ”が心地よく進むはずだ。

西村浩志

葛飾・立石の人気居酒屋「ブンカ堂」店主。立石生まれ、立石育ちで、地元の名店「二毛作」で修業し、2018年に独立。店名はかつて両親が立石で経営していた玩具店「文化堂」に由来する。
ブンカ堂●東京都葛飾区立石4-27-9 TEL:03-5654-9633