サメに襲われそうになったダイバーをクジラが助けた——。そんな驚きの出来事の一部始終を収めた動画が、今再び話題になっている。英ミラー紙が報じた。
異常接近するクジラ
クジラに救われるという貴重な経験をしたのは、海洋生物学者のナン・ハウザーさん。2017年9月、ナンさんは南太平洋クック諸島ラロトンガ島近海でザトウクジラの調査を行っていたところ、一頭のクジラが彼女に異常なほど接近し、頭や背中で彼女を押し始めたのである
「長年クジラを研究してきましたが、これほどまでに執拗に近づいてくる個体は初めてでした」とナンさんは振り返る。クジラのサイズは推定およそ22トン。逃げようとしても追いかけてくるクジラに、当初、ナンさんはぶつかってケガをすするかもしれない、水中にひきずりこまれるかもしれないなどと死の恐怖を感じていたという。しかし、クジラの行動の真意は別の場所にあった。
クジラの利他的行動
しばらくして、ナンさんは近くの海中に別の巨大な影を見つけた。それは体長約4.5メートルのイタチザメ。イタチザメは非常に攻撃的で、人間を襲うこともある危険なサメだ。
ナンさんはようやく目の前のクジラの意図に気がついた。無防備な彼女をサメの攻撃範囲から遠ざけ、自らの大きな体とひれで、文字通り盾になろうとしていたのだ。
よく見ると、サメの近くにはもう一頭ザトウクジラがいて、尾を激しく水に叩きつけたりしてサメを威嚇していた。二頭で協力して、ナンさんをサメから遠ざけようとしていたのだ。
ナンさんに接近してきたクジラは、彼女を大きな胸びれの下に押し込もうとしたり、背中の上に乗せようとしたりしたという。その行動は、ナンさんが調査船に戻るまで10分ほど続いた。
無事船に帰り着いたナンさんが船上から海を見下ろすと、先ほどのクジラは彼女が安全な場所にいるかを確認するように、水面に顔を出してじっとこちらを見つめていたという。
「私は人生の半分以上をクジラの保護に捧げてきました。あの日、まさかクジラが私を保護してくれるなんて夢にも思いませんでした」とナンさんは感動を語る。
ザトウクジラが、シャチなどからアザラシや他種のクジラの子供を守る行動をとることは科学的に知られていた。しかし、クジラが人間を危険から救う様子がこれほど鮮明に記録されたのは、世界でも極めて異例なことだった。ナンさんが撮影した動画は、発表後すぐに大きな反響と感動を呼び起こすこととなった。
なお、この出来事にはちょっとした後日談がある。およそ1年後。ナンさんが同じ海域で調査を続けていたところ、一頭のザトウクジラが調査船に近づいてきた。尾びれにある独特の傷跡から、彼女は確信した。それはあの日、命を懸けて自分を守ってくれた、あのクジラだと。
ナンさんは、いつかもう一度あのクジラに会いたいとインタビューで語っている。
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【動画】クジラがナンさんを守った時の一部始終