毒や牙、圧倒的な力など、自然界には人間にとって脅威となる能力を備えた生き物がいる。そうした「危険生物」を科学の視点から解き明かす特別展『超危険生物展 科学で挑む生き物の本気』が、東京・上野の国立科学博物館で開催されている。生き物たちの驚くべき能力と、その背景にある生存戦略に迫る。
大人しそうに思える草食動物に秘められた「強いパワー」
全体を「危険生物研究所」のラボ(研究室)に見立て、危険生物を「肉弾攻撃系危険生物」と「特殊攻撃系危険生物」の二つのエリアで紹介する本展。冒頭では自らの肉体を武器とするパワーファイター型の巨大生物が登場する。ここで目を引くのがアフリカゾウやキリンといった、一見あまり危険なイメージのない草食動物が並ぶこと。穏やかに見えるゾウも、長い鼻を振り下ろせば、カバを投げ飛ばすほどに強烈な打撃を相手に与えることができる。
キリンも決しておとなしいだけの動物ではない。ネッキングと呼ばれるオス同士の争いはとても激しく、対峙した個体はそれぞれ長い首をしならせ、互いの胴や首へと強い一撃を叩き込む。その近くではメスが様子を観察し、勝利したオスと結ばれるという。また南アフリカではかつて撮影中の映画制作者が、キリンに襲われて亡くなるという事件も起きていて、その力の大きさを物語っている。
世界最大級のイリエワニ、通称「ロロン」のレプリカが日本で初公開!
「キラーバイト型」と分類された危険生物の大きな特徴は、鋭い牙と強力な咬む力で獲物を仕留めることだ。トラをはじめとするネコ科の動物で最も強い咬合力を持つとされるのが、中南米に分布するジャガー。南米最大級の肉食動物として知られ、咬合力は最大6,000N(600kg以上)に達するとする文献もある。人間の最大咬合力が約980Nとされることを考えると、凄まじい破壊力がうかがえる。
全長6メートルを超える世界最大級のイリエワニ、通称「ロロン」のレプリカが日本で初めて公開されている。イリエワニもまたカメの甲羅さえ砕くほどの強烈な咬合力を持ち、その危険性から人身事故も多く報告され、しばしば「人食いワニ」と呼ばれることもある。なおワニが獲物の一部に食いつき、自身の巨体を水中で回転させ、肉をねじ切る「デスロール」の解説映像もキラーバイトの威力を体感するものといえる。
※咬合力(こうごうりょく)は実測値や標本からの推定値など測定条件によって異なるため、数値には幅がある。---fadeinPager---
毒やにおいで天敵から身を守る生き物たち
力そのものを武器とする「肉弾攻撃系危険生物」に対し、「特殊攻撃系危険生物」はどのような能力を持つのだろうか。その代表例が、毒によって敵から身を守り、獲物を捕食する生物たち。クロクビドクフキコブラは、天敵に遭遇するとフードを広げて頭部を持ち上げ、威嚇しながら相手の目を狙って毒を吹きかける。毒は2メートル以上先まで届くだけでなく、体内に多く蓄えていて、実に10回にわたって噴射できる。
一方、スカンクやイタチ科のサハラゾリラは、クマも逃げ出すという激臭をお尻から分泌して防御する生物だ。そのにおいは捕食者への直接的な攻撃となるだけでなく、周囲の嗅覚環境をかく乱し、自らの存在を覆い隠すことで逃げる時間を稼ぐ役割も果たす。なお会場では、2005年に制作されたサハラゾリラの仮剥製も展示されており、現在でもわずかにケミカルなにおいを放っているという。
全生物で最大の発電圧力! デンキウナギの知られざる生態とは?
最後に水族館やアクアリウムでの観賞魚としても人気のあるデンキウナギを紹介したい。身体の全体の7割を発電器官が占めるデンキウナギの発電圧力は、全生物で最も強い最大約850V。この強い雷撃により、川に入ったウマなどの動物をも死に至らしめるというが、実は弱い電気で対話したり、空気呼吸をする、さらに子育てするなど、生物学的にも興味深い魚といわれる。
危険生物の能力を「必殺技」と呼んだり、工事用のカラーコーンを配した展示空間など、まるでアトラクションのような遊び心も散りばめられている本展。そして危険生物を理解し、「正しく恐れる」ことは、より安全な生活に結びつくと同時に、その能力が新たな素材や技術のヒントとなる可能性も示している。スリルの背後に広がる、自然が育んできた精緻な仕組みに触れながら、人間と生き物との関係を見つめ直したい。
特別展『超危険生物展 科学で挑む生き物の本気』
開催期間:開催中~2026年6月14日(日)
開催場所:国立科学博物館
東京都台東区上野公園7-20
開館時間:9時〜17時 ※入場は16時30分まで
※4/25~5/6は18時まで開館 ※入場は17時30分まで
休館日:月、5/7
※ただし3/30、4/27、5/4、6/8は開館
観覧料:一般 ¥2,300
https://chokikenseibutsuten.jp









