クルマはプレミアム度が増すほど、同じクルマを持つ他者との差別化をより強く求めるようになる。そんな一般的な傾向があるなか、アストンマーティンも「S」モデルの展開を強化している。そこが興味深い。

2025年に「ヴァンテージS」と「DBX S」、さらに「DB12S」を発表。首を長くして待っていたファンもいるなか、26年2月の終わりにようやく、ヴァンテージSと、SUVのDBX Sの実車のお披露目が行われた。
「Sとは私たちにとって伝統的な名称です」
そう語ったのは、東京の「アストンマーティン青山ハウス」でインタビューに応じてくれた、ヘッド・オブ・プロダクトマネジメントを務めるニール・ヒューズ氏の言葉。

ヒューズ氏の仕事は、モデルを企画して実現までもっていくことだ。
「Sモデルの起源をたどると、1953年のレーシングカー、DB3Sにたどりつきます。Sとはスポーツであると同時に、“スペシャル”の意味をこめたアルファベットです」

彼の言葉どおり、ヴァンテージSとDBX Sは従来のモデルに対して軽量化。同時に、出力を上げ、シャシーに手を入れ、サスペンションを強化し、スポイラーなど空力性能を高めた。これは”スポーツ”の領域といえる。
加えて”スペシャル”の領域として、新意匠のグリル、塗色、手のこんだ内装など、従来モデルとひと味もふた味も違う仕上げがあげられる。

「アストンマーティンの定評あるスポーツカーの中で最もパフォーマンスにフォーカスしたモデル」とされるヴァンテージS。
4リッターV8ターボエンジンは、ターボチャージャーに手が入り、最高出力が、従来の「ヴァンテージ」の668psから680ps(500kW)へ引き上げられた。
リアサブフレームのマウント、サスペンションはスプリングとダンパーの変更やチューニングの見直しで、ハンドリングと乗り心地のどちらも向上させている。
スポーツカーとしてドライバーとの一体感を高めることに注力し、加速時などよりナチュラルなフィーリングの実現に気が配られたそうだ。

DBX Sでは、4リッターV8の最高出力がDBX707から20ps上がって727ps(535kW)に達している。
やはり軽量化がSモデルの重要な課題で、高価だけど軽量な、レーシングカーなみのパーツが多数用意されている。
たとえば、グラスルーフに代わる炭素樹脂のルーフ、アルミホイールの3分の2の重量という軽量マグネシウムホイールなどがえらべる。

「顧客は人と違うよりエクスクルーシブな仕様を欲しがります」
ヒューズ氏とともに来日したアジアパシフィックおよび中国を担当するリージョナルプレジデントのカール・ベイリス氏は言う。
より特別なモデルであることは、商品力にもつながる重要な要素なのだ。
同時にアストンマーティンでは、多気筒エンジンにこだわる。

ハイブリッド化は、レースで活躍するハイパースポーツ「ヴァルハラ」(V8プラグインハイブリッド)にまかせて、量産モデルはガソリンエンジンの8気筒と12気筒にこだわる。
「電動化はもちろん視野に入れていますが、いまは顧客自身が8気筒や12気筒を好んでいるので、私たちとしても、まだ多気筒ガソリンエンジン車をつくlり続けます」

ベイリス氏は、アストンマーティンの多様なプロダクトラインナップが、ブランドの商品力に寄与すると語る。
もうひとつ、アストンマーティンのブランド力には、007ジェイムズ・ボンド映画も貢献している。
アマゾンMGMによる新作は2028年公開ともいわれているのは、読者もご存知では? 噂によると物語は、若き日のボンドを中心としたものになるとか。

そこでアストンマーティンは、従来のようにボンドカーとして登場するのか。もしそうなれば、どんなモデルが使われるのか。
これもアストンマーティンだからこそ、私たちに与えてくれるたのしみだ。
Vantage S
全長×全幅×全高:4495×1980×1275mm
ホイールベース:2705mm
エンジン:3982cc V型8気筒ターボ 後輪駆動
最高出力:500kW@6000rpm
最大トルク:800Nm@3000〜6000rpm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.4秒
本体価格:¥2,760,000
DBX S
全長×全幅×全高:5039×217×1680mm
ホイールベース:3060mm
エンジン:3982ccV型8気筒ターボ 全輪駆動
最高出力:535kW@6250rpm
最大トルク:900Nm@3000〜5250rpm
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:3.3秒
本体価格|¥3,590,000









