【東京古靴日和 #15】 メゾン マルジェラの「タビ」を末永く愛するために

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    いまや「タビ」は、メゾン マルジェラのアイコンであると同時に、ファッションの定番として定着しました。定番になったからこそ、「どう履いていくか」が大切になります。

    タビを長く履くというのは、ただ“傷ませない”という話ではありません。タビは、買った瞬間に完成する靴ではありません。履くほどに表情が増し、佇まいが整っていきます。その一方で、構造上どうしても負荷が集中する場所があり、確実に消耗もしていきます。

    だからこそタビは、「履き切るまで放置する」のか、「傷む前に整える」のか……その判断が、末永く愛するための分かれ道になります。

    タビには、負荷がかかりやすいポイントがある

    靴は歩行動作のなかで摩耗していくものです。それはどの靴も同じです。ただタビは構造上、負荷がかかりやすいポイントが明確です。前足部(つま先側)、踵、そして割れ目(指股)周辺。だからこそ、早めに整えるほど、違和感なく自然に長く履けます。

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    新品時がオススメ! ハーフラバー(裏張り)で、つま先の削れを防ぐ

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    購入直後、前足部にハーフラバー加工を行った際のアフター写真。タビはつま先が摩耗しやすいため、きれいに長く履くためには新品時、履く前のハーフラバー加工が有効です。

    タビを長く愛用するうえで、最も効果が分かりやすいのが、着用前のハーフラバー加工です。つま先側の摩耗を抑え、滑りにくさも改善されるため、歩行が安定します。履き込んでから貼るよりも、新しいうちに加工したほうが仕上がりは自然で、結果として靴そのものの寿命も伸びやすくなります。

    タビは見た目が大切です。だからこそ、ソールの色みはできる限り近づけ、違和感が出ないように自然に整えることがポイントになります。

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    踵(トップリフト)は、「ヒール自体が削れ切る前」が鉄則です

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    踵の摩耗箇所のビフォー/アフター写真。こちらも摩耗が激しい状態で、減ってしまったヒールに革を継ぎ足し修復しました。ヒールが黒という色であったことで、補修も目立たずにすんでいるかと思います。

    次に重要なのが、踵(ヒール)のトップリフトゴム交換です。踵がヒールまで削れてしまうと、継ぎ足しの工程が必要になり、オリジナルのヒールのまま美しく整えるのが難しくなります。仕上がりにも加工感が出やすくなります。

    逆に言えば、削れ切る前にこまめに交換しておけば、自然で美しく、結果として長持ちします。目安としては、踵の角が落ちてきた段階で早めに交換すると、きれいに仕上がりやすく安心です。

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    指股まわりの“破れ”の補修

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    前足部摩耗のビフォー/アフター写真。摩耗が非常に激しく、仕上がりも補修感が否めません。しかし、出来る限りの修理で履けるようには戻せたかと思います。

    最近、The Shoe of Life(シューオブライフ)では、タビの指股周辺の破れのご相談が増えています。指股まわりの破れは、一般的には修理が難しいとされる場所でもありますが、シューオブライフでは、状態に合わせて可能な限り修理に挑戦してきました。

    もちろん、素材や裂け方、ダメージの深さによっては難しいケースもあります。それでも、補強の設計や工程の組み立て次第で、再び履ける状態に修理できる場合があります。

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    指股破れ(重度)のビフォー/アフター写真。こちらに関しては、指股部のレザーを交換することで修理が出来ました。破れ方によって方法を変えたりする必要があることも多いです。またすべての靴で、指股部が交換出来るとも限りません。早めのご相談をお願いいたします。

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    使用頻度と環境が、タビの“寿命”を決める

    タビは同じ負荷を繰り返すほど、消耗が偏りやすい靴です。末永く愛するには、使用頻度と環境の設計も欠かせません。たとえば、連日履きを避けてローテーションする、雨の日をできるだけ避ける、長距離を歩く日は別の靴にする——その小さな配慮が、割れ目や踵への負荷を減らし、結果としてタビの輪郭と品を守ってくれます。

    タビは、定番になったからこそ、履き手の姿勢がそのまま現れる靴です。傷む前に整える。環境と頻度を選ぶ。必要なときは修理に頼る。その積み重ねが、タビを「消耗品」ではなく「一生ものの相棒」に変えていきます。

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    ヒールの革巻き補修のビフォー/アフター。番外編ですが、ヒールの巻側は傷つきやすく摩耗します。交換することで新品の様にきれいに直ります。

    足元からはじめる、エシカルな選択

    長く履くことは、環境へのやさしさでもあり、エシカルな選択でもあります。修理して履き続けることは、廃棄を減らし、少なからず自然環境負荷の低減にもつながります。私としては、そのような理由も大切な目的の一つとして、一足でも多くの靴を修理し、長く履ける状態へ整えていきたいと考えています。

    メゾン マルジェラ「タビ」のお修理は、ぜひ私の運営する靴修理店、The Shoe of Life(シューオブライフ)にご相談ください。

    勝川永一

    エシカル・シューズデザイナー

    大学卒業後に国内靴メーカーを経て渡英し、英国ノーザンプトンのトレシャム・インスティチュートで靴づくりを学び、PAUL HARNDENに師事。2007年、修理職人として働きながら自身のブランドH.KATSUAKWAを設立、国内外の主要セレクトショップで展開。また著名ブランドとのコラボレーションも多数手がける。2010年に靴修理店「The Shoe of Life」を開業し、累計6万足以上を修理。2016年、作品「Return to the soil」が英国ノーザンプトン美術館に永久収蔵。2024年、国内靴ブランドとして初のB Corp認証を取得し、靴を起点にエシカルで持続可能なデザインを探求している。

    勝川永一

    エシカル・シューズデザイナー

    大学卒業後に国内靴メーカーを経て渡英し、英国ノーザンプトンのトレシャム・インスティチュートで靴づくりを学び、PAUL HARNDENに師事。2007年、修理職人として働きながら自身のブランドH.KATSUAKWAを設立、国内外の主要セレクトショップで展開。また著名ブランドとのコラボレーションも多数手がける。2010年に靴修理店「The Shoe of Life」を開業し、累計6万足以上を修理。2016年、作品「Return to the soil」が英国ノーザンプトン美術館に永久収蔵。2024年、国内靴ブランドとして初のB Corp認証を取得し、靴を起点にエシカルで持続可能なデザインを探求している。