印象派の巨匠クロード・モネの没後100年を記念し、オルセー美術館との特別な協働による展覧会が、東京・京橋のアーティゾン美術館にて開かれている。初期から晩年へと続く画業の軌跡をたどりつつ、同時代の絵画や写真、浮世絵などの多彩な表現と交錯させながら、風景画家としてのモネの新たな魅力に迫っている。
オルセー美術館所蔵の約90点、および国内の作品を加えた140点の作品を公開!

モネの作品41点をはじめ、オルセー美術館所蔵の約90点に、国内の美術館や個人蔵の作品を加えた合計およそ140点で構成される本展。その冒頭を飾るのは、現存するモネの最初期の油彩画とされる『ルエルの眺め』だ。1857年にウジェーヌ・ブーダンと出会い、影響を受けた若きモネは、本作品においてもブーダンの傍らで戸外にて描いたと考えられている。まさにモネが自然と正面から向き合った風景画の出発点といえる。
『トルーヴィル、ロシュ・ノワールのホテル』は、上流階級が社交を楽しんだトルーヴィルの海岸を舞台に、壮麗なホテルのファサードと、青空の下でたなびく旗を軽やかな筆致で描き出した一枚。一方の『昼食』では、アルジャントゥイユ時代の自宅にて、家族と過ごす穏やかな食卓の光景を柔らかな光とともに捉えている。いずれも日本初公開となる貴重な作品であり、モネの初期から成熟へと至る軌跡を追う上で見逃せない。
傑作『かささぎ』が修復後、はじめて公開!新たに蘇った色彩とは
オルセー美術館のプロジェクトによって修復された『かささぎ』が、修復後はじめて公開されている。当時エトルタに暮らしていたモネは、1868年から翌年にかけての冬の間、「雪がもたらす自然効果」の表現の探究に取りかかる。画面は茨の垣根で水平に分割され、手前には厚く雪を湛えた野原が静まり返るように広がり、奥には農家の建物が淡い暖色で描かれている。そして画面左に立つ木の柵の上にただ一羽、ぽつんと佇むかささぎへと視線は自然に導かれる。
輝く面であり、白色でありつつも同時に色彩を帯びる雪は、モネの筆にかかるとより一層深みを増す。バラ色、薄紫色といった繊細なニュアンスにより、光を受けて刻一刻と変化する雪の色合いを見事に表現している。滑らかでありながら、ふんわりと積もる雪の質感は、冷たさよりもむしろ親しみと温もりを覚えるほど。今回の修復では、経年により黄変していた上層のニスが取り除かれ、モネ作品本来の清々しく鮮やかな色彩が蘇っている。---fadeinPager---
モネと日本の浮世絵の関係、さらに同時代の写真との共通点とは?
モネが浮世絵と出合ったのは、日本からの輸入品の包装紙として使われていた浮世絵を、若き日のル・アーヴルで偶然目にしたことがきっかけだと伝えられている。やがて彼は美術商やコレクター同士の交流を通し、浮世絵のコレクションを築いていく。またモネの日本への関心はジヴェルニーへの移住後にも形を変えて現れ、自邸の庭の池に日本風の太鼓橋をかけ、藤やアイリスなど日本を思わせる植物を育てた。
写真の誕生と同じ時代を生きたモネの風景画は、1880年〜1900年代にかけての写真作品と、水や反射といった題材、さらにモチーフを遠くに配置する表現手法などに共通点が見られる。そして当時の写真家たちもまた、モネの絵画のように自然を忠実に写すのではなく、靄やぼかしの効果を用いて消えゆくような風景を追求した。また写真に関する展示では、モネ本人やジヴェルニーの庭を写したクレマンテルのオートクロームの複製にも注目したい。
モネへのオマージュとしてつくられた映像インスタレーションに没入
現代の映像作家、アンジュ・レッチアが、モネへのオマージュとして制作した映像作品『(D’) après Monet(モネに倣って)』が日本初公開となる。モネ自身や彼の家、睡蓮、「水と反射の風景」などのイメージが暗室にて揺らめくように展開し、幻想的で静謐な世界を築き上げていく。1952年生まれのレッチアは、パリとコルシカ島を拠点に活動し、1986年にはヴェネツィア・ビエンナーレのフランス館代表として出展した実績を持つ。
当初、2020年に開催が予定されながら、コロナ禍によって2度の延期を経て、ようやく没後100年という節目の年に実現した今回のモネ展は、モネが風景画をどのように変革したのかを多角的に切り込むかつてない試みの展覧会だ。開幕から早くも約1ヶ月、待ち望んでいた多くの来場者で連日賑わいを見せている。来館の際は、公式サイトの「ウェブ予約チケット」の空きを確認し、事前に購入した上にて出かけたい。
モネ没後100年『クロード・モネ -風景への問いかけ』
開催期間:開催中~5月24日(日)
開催場所:アーティゾン美術館
東京都中央区京橋1-7-2
開館時間:10時〜18時
※3/20を除く金曜、5/2、5/9、5/16、5/23は20時まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日:3/16、4/13、5/11
www.artizon.museum/exhibition_sp/monet2026








