グラフィック・空間・映像・アートピースなど、さまざまなアプローチで制作活動を行うアーティストYOSHIROTTEN。
この連載では「TRIP」と題して、古くからの友人であるNORI氏を聞き手に迎え、自身の作品、アート、音楽、妄想、プライベートなことなどを織り交ぜながら、過去から現在そしてこれからを、行ったり来たり、いろんな場所を“トリップ”しながら対談します。
YOSHIROTTEN:ノリとここで喋るのは久しぶりだね。
ノリ:そうですね。年末にかけて栃木、名古屋、鹿児島、栃木をもう一回経て、中国に出張でした。年越しは家からでないぞー。前回の連載で話してた、ロンドンにある日本食レストラン「Aki London」に作品展示した話も本当は一緒にしたかったです。
YOSHIROTTEN:現場にいたもんね。
ノリ:去年の春にロンドンのキュレーターのバージニーさんがよしろーさんの作品を見にきたことがきっかけでしたよね。鹿児島で初めて展示した〈メンヒル〉という作品をレストラン内でも目立つ場所に置いてくださって嬉しかったです。Akiはアートにとても力を入れており、収蔵作家にはRyan GanderさんやNabil Nahasさんもおり、レストランで作品を見ることができます。レセプションも楽しかったな。
Photo by Ayaka EndoYOSHIROTTEN:僕はレセプションでDJもして意外とロンドンでは初DJだった。
ノリ:僕の20年来の友人であり、ロンドン在住のDJ・Junki Inoueもプレイしにきてくれて賑やかな夜になりましたね。いつもヨーロッパ中を飛び回ってるけど、運良くロンドンにいるタイミングでキャッチできたよかったー。
YOSHIROTTEN:Junkiは15年ぶりくらいに僕も会ったけどロンドンで日本の90年代のテクノをレコードで再発するレーベルやってて面白いよね。
ノリ:「SAISEI」ですね。ロンドンにいく時はいつも彼にお世話になってて、仕事おわらせてから一緒に遊びに行ったり彼の家でダラダラと良い音楽を教えてもらうのが旅の楽しみなのです。よしろーさんは、東京戻ってからはどんなプロジェクトに?
YOSHIROTTEN:帰ってきてすぐに山下達郎さんのMV「アトムの子」が公開された。達郎さんのデビュー50周年を記念したアナログ再発シリーズの一環として、アルバム「ARTISAN」のアナログ盤とカセットテープがリリースされて。それを記念してMVも公開したんだけど、楽曲自体は91年に発表されたもの。以前、「SPARKLE」のMVを製作したご縁から繋がりました。
一見、全部AIでも作れそうなビデオに見えて、ちゃんと実写で構成していて。最初にアイデアの発端となったのは、ロンドンの郊外にあるホテルで水に映り込む光が動いてる様子を見ながら音楽を聴いていた時。その瞬間、光のなかに入るようなMVにしようってイメージが膨らんで。子どもが光のなかを走って怪物になったり、増えたり、霊魂になったり。今回も前のMVと同じく、Katsuki Kuroyanagaiに監督を依頼してCG製作にYARチームのKota Nakazonoを迎えて作りました。そのあと、SUNのインスタレーションを大阪のGRAND GREEN OSAKA うめきた公園 サウスパークで発表しに行って。ノリは「EASTEASTTOKYO 2025」が始まったところだったけ?
ノリ:そうですね。山下達郎さんのMVはいつ製作してたんですか?
YOSHIROTTEN:一昨年だね。2024年の年末から2025年の年明けにかけて製作は終わっていて。リリースするタイミングを待っていた感じかな。
ノリ:よしろーさんにとって山下達郎さんは思い入れのあるアーティストだと思いますけど、今回のMV製作の思い出はなにかありますか?
YOSHIROTTEN:縦でも横でも観れるビデオにしたいなと思って。中心点があるようでないような作り方にしました。あとは、このビデオはアンビエントや他の楽曲でも観てて成り立つ感じがあって、楽しみ方が自由自在に作れたなと思いました。この時期に聴いてたのはアイザック・シャーマンのアルバム「A Pasture, Its Limits」です。これ聞きながらアトムの子のミュージックビデオを見てみてください。

YOSHIROTTEN:ちなみに音楽だとレコードレーベル「MULE MUSIC」からリリースされたKuniyuki Takahashiさんのシングル「Open Window」のジャケットカバーを制作しました。今回のシングルタイトルや奥渋にあるバー「STUDIO MULE」のグリーンのドアなどイメージしたアートワークになります。以前の連載でも紹介した、ギリシャで見たシルバーの海の写真を使いました。


ノリ:あのお店いいですよね。いつも混んでるけど、渋谷で一番美味しいワインが呑める素敵なお店。
YOSHIROTTEN:あと鹿児島の地元と千駄ヶ谷にある「Araheam(アラヘラム)」ていう植物屋さんのクリスマス限定の紙袋も YARとして制作したのだけど素敵にできたよ。araheamて文字を手描きでグラフィカルに書いたんだ。うちの植物もいくつかお願いしている素敵な店なんで是非行ってほしい。

YOSHIROTTEN:「EASTEAST_TOKYO 2025」 はどうだった?
ノリ:すごい濃密な時間でした。色々な変化はあったけど、空間設計は前回と大きく変えた部分ですね。建築コレクティブ「GROUP」とアーティストの松下徹が中心になってコンセプトと設計を考えていきました。個人的には大成功。ダイナミックな体験と会話が生まれる環境にできたかなって。
EASTEAST_TOKYO 2025 会場風景 | Photography by 髙羽快, Courtesy of EASTEAST
YOSHIROTTEN:GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEの屋外の作品良かったね。前回は自分がアーティストとして参加したから、今回は来場者としてまた見方が変わって。他のアートフェアとは全く違うことをやっていることは明白だけど、果たして「EASTEAST_TOKYO 2025」もアートフェアと名乗ってるほうがいいのかは不思議に思ったかな。「アートフェア」というのは対外的には伝わりやすいけど、一般的にいう「アートフェア」とは違うベクトルを目指して実現してるように感じた。もっと新しいイベントであることに振り切った伝え方のほうが面白くなるんじゃないかなとか。
ノリ:それは鋭い。終わってからすぐに仲間とした会話はそれだった。オープニングでパフォーマンスしてた「New York」のアルバムを最近よく聴いてるのと、ビデオプログラム「EEV/S/P_Program」の部屋に入ったら偶然プレイしてた「野流」のライブがめちゃくちゃ良かったり。プレパーティのDJ SprinklesのオールナイターDJも唯一無二の音楽体験だった。こんなに音楽の思い出がたくさんあるアートフェアは今までなかった笑。次は、YOSHIROTTENの作品もまた展示できたらいいなと考えています。
YOSHIROTTEN:地下に巨大な自家発電ディスコを作ろう。
EASTEAST_TOKYO 2025 会場風景 Photography by 髙羽快, Courtesy of EASTEAST_
ノリ:よしろーくんは「EASTEAST_TOKYO 2025」の時期、栃木の「大谷グランド・センター」で常設作品をお披露目する直前でしたよね。あ、読者の皆様インスタのフォローぜひしてみてください
Instagram@oya.grand.center
YOSHIROTTEN:そうだね。初めて自分の常設作品を日本で展示する機会になって嬉しいです。もともと日本を代表する石材「大谷石」で有名な土地に観光施設があって。30年近く廃墟となっていた場所だったのだけど、今回「The Chain Musueum」によって、現代アートと食の複合施設「大谷グランド・センター」として再生した場所に新作であり、常設の作品を展示しました。
鹿児島での展示の時と制作方法は同じで、1年かけて周辺をフィールドワークしながらその素材をもとに、唯一の空間作品を作っていきました。映像作品〈大谷石景〉に映るのは、スキャニングした素材をもとに制作した30種類のデジタルドローイングです。

YOSHIROTTEN:それと、もともとそこにあった石をそのままにミソと呼ばれる空洞に光を当てた作品〈Transtone〉は外の光の状況によって印象も変わるので、何度も訪れて会いたいです。


ノリ:場所にもインスピレーションを受けてましたよね。
YOSHIROTTEN:過去に大谷地域で「大谷テクノパーク構想」という都市計画があったみたいで。大谷石の産業と文化を集積する空間を採掘によってできた地下空洞に生み出すことを目指すプロジェクトだったそうです。文化を未来に繋ぐための多目的展示スペース「とらんすとーんエリア」の構想イメージも資料で見て、彼らの大谷石を通じて未来へメッセージを伝えるという想いに共感して作品制作を進めて行ったね。

ノリ:徒歩圏内にある「大谷資料館」もすごいので、ぜひ大谷石に囲まれた周辺を散歩しながらお越しください。はー!駆け抜けたわ。宇都宮の庄助で美味しい食事がしたいなあ!
YOSHIROTTEN:蕎麦も美味しんだよね。栃木は最高です。こういう風に、日本中の美しい自然や面白い場所をアートを通して伝えていけるのは、ほんとに楽しいなと思っています。もっとやりたいのでぜひ!
あと新しいウェブサイトができました。

グラフィックアーティスト、アートディレクター
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR