電気自動車といえば、それだけで市場で競争力を持てる、と信じられる時代はとっくに終わっている。

スズキが2026年1月に発売したBEV(バッテリー駆動EV)の「e(イー)ビターラ」は、積極的に日常生活での使い勝手のよさを考えた機能性が特徴的だ。
実際に乗ると、使いやすい。しかも「このクラスではほぼ見かけない」とスズキの広報担当者が言う4WDモデルも設定されている。
「多角形と多面体構造を採用」「冒険心を刺激する力強いデザインとしました」というボディ。フロントマスク、前後フェンダー、それにドア部のしぼりこみ、といった部分のデザイン処理が、つよく印象に残る。
姉妹車として開発され、eビターラと同じ工場でつくられるトヨタ「アーバンクルーザーエベラ」(日本発売の計画はいまのところなし)は、もうすこしマイルドな外観なのと対照的だ。
乗れば、前輪駆動モデルも気持ちよく走るが、後輪をもう1基のモーターで駆動する4WDモデルでは、オフロード性能(未体験)に加え、走行安定性や力強い加速感が味わえる。

BEVを特別視せず、趣味で山や海に行くことを含めて日常使いをしようという層には、eビターラの個性的なデザインは向いていると思う。
「すでにBEVを体験ずみのお客さまがひとつのターゲット」とスズキのマーケティング担当者。その狙いは、達成できているように私は思った。

300万円台(ほぼ400万円だけれど)からと、かなり“頑張った”価格設定だが、だからといって装備不足でガマンを強いられるところはない。
そのひとつが先述の通り、走りのよさ。カーブが連続する道でも期待以上に軽快な走りが楽しめる。
ステアリングホイールを切ったときの車体の動きはとても素直。少しだけアクセルペダルを踏んだだけでの加速がよいのはBEVならでは。

そのさきの加速はやたらパワー感を強調するのでなく、なめらかで、ドライブしている私の感覚に寄り添ってくれる。
大容量バッテリーのBEVに慣れている人には、少し物足りない加速力かもしれないが、私はこのぐらいで十分気持ちがよいと感じられた。むしろ好みかも、と思ったほどだ。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを床下搭載した専用シャシーを持ち、4275mmと比較的コンパクトな全長に対して、ホイールベースは2700mmとけっこう長い。

よって後席空間は広々としていて、大人ふたりでもまったく窮屈さがない。しかも後席シートは左右独立して前後に160mmスライドするため、荷室の機能性も上がっている。
もうひとつのターゲットは当然、これまでのスズキ車のオーナー。
「初めてのBEVに抵抗感のある方にもすんなり受け入れてもらえる操縦性に心を砕きました」というスズキの開発者の思惑通りの仕上がりなのは、私の感想でも述べた。
もしスズキがeビターラをいわゆるライフスタイルカーとして売ろうと思っていたら、いろいろやりかたがありそうだ。

スタイリッシュなデザインの充電器とか、アウトドアならせっかくの外部給電機能を活かしたタープ用照明とか、オリジナルの電気器具を用意したらどうだろう、というのが私見。
なかなか難しいかもしれないが、スズキの説明によればeビターラは「スズキのBEV世界戦略車第一弾」だそうだ。きっと元はとれるのでは、などと期待を込めて思うのだ。

ラインナップは3モデル。ベースの「X」(399万3000円)はややひかえめな仕様。49kWhの駆動用バッテリーをもつ前輪駆動だ。一充電走行距離は、433kmに達する。
上には2台の「Z」がある。共通するのは61kWhのバッテリーで、520km走る前輪駆動(448万8000円)と、472kmの4WD(492万8000円)だ。
スズキ e ビターラ Z(4WD)
全長×全幅×全高:4275×1800×1640mm
ホイールベース:2700mm
電気モーター 4輪駆動
最高出力:135kW
最大トルク:307Nm
車重:1890kg
一充電走行距離(WLTC):472km
価格:492万8000円
https://www.suzuki.co.jp/car/evitara/









