【アウディ RS 3 スポーツバック試乗】 都会で忍耐ゼロ、峠で豹変100%のホットハッチ! 第237回東京車日記

  • 写真&文:青木雄介
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アウディ全体で電動化が進む中、コンパクトハッチのサイズ感に内燃機関+多気筒という“希少なパッケージ”で存在感を主張する。

「ホットハッチ(高性能ハッチバック)が欲しい」。そう言い続けて20年。ついに近しいクルマを購入するに至ったものの、これは大切な家族(猟犬)が山野を散策するための理想を追求した“お犬様スペシャル”。でも本当は、東京を移動する、きびきび走るためだけのクルマが欲しかったのだった。

“都会で乗る我慢”がない! ホットハッチの理想形

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専用の「RSトルクスプリッター」を採用し、後輪左右のトルク配分を可変制御。ESCと連携して旋回性能とトラクション性能を高める。

「これは!」と思った候補は、3ペダルの「GR ヤリス」と、400馬力超の「メルセデス AMG A45 S」。値段はさておき、譲れないのは峠での乗り応え。もっと言えば、四駆で片足をラリーに突っ込んでいるようなクルマがよかった。

この2台をサッカーでたとえるなら、いわゆる“ぴちぴち”したサッカーをする、俊敏で機動性が高いアンダー18世代ですよ。高校サッカー出身かクラブユース出身かのような生来の違いはあっても、どちらも峠(ピッチ)に入れば本気に豹変する。そういう手合いのクルマだった。

そんなホットハッチ界隈だけど、目立った新型の話が少ない中で、アウディから改良された「RS 3 スポーツバック」が出た。アウディの伝家の宝刀、直列5気筒もこれで最後になるかもしれない、なんて空気もある訳で。だったら「いま、乗っておこう」と思ったんだな。

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2.5L直列5気筒エンジンは独自の点火シーケンス(1-2-4-5-3)により、低くて太いエンジンサウンドを奏でる。

結論、マジで「RS 3」はいい。アンダー18でいえば、ブラジルで修行中のキングカズJrみたいな感じ(笑)。まず、普段乗りが、やたらと洗練されているのね。前述の2車種はどちらも普段からサッカーのことしか考えていないタイプだったけど、このクルマはかなり遊び慣れているタイプだね。

しかもこの手の峠心のあるクルマにありがちな、“都会で乗る我慢”がまったくない。アスファルトの継ぎ目だろうが、首都高のうねりだろうが、いちいち事件にしない。乗り心地がいいっていうのは柔らかいとか硬いとかじゃなくて、気にさせない余裕の話なのかもしれない。アウディらしい、しなやかさだけが印象に残るよいアシ。

その乗り心地があって、街乗りは軽快極まりなくて、ふとした瞬間に「ベビーV10」と呼ばれる、直列5気筒の本気を見せる。もっとビートが効いていた気もするけど、印象としては低音を聴かせる直列6気筒のクールさに寄った気もした。

革新よりも型で勝つ。「アウディ RS」の流儀

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フラットボトム形状のステアリングを中心に素材をスポーティな質感で統一した。視覚と触感の両面で、日常域でもRSのキャラクターを明確にしている。

そして走りの「RSモード」が最高。ESCをオフにすると豹変するね。自慢のRSトルクスプリッターの効きもあって4輪の食いつきが増し、きびきび走る。ステアリングはフラットなのに、速度が上がるほど舵角が絞られていく感覚がある。ドリフト含めて“どうとでもできますよ感”が憎らしい。

4000回転付近からギュンと勢いよく伸びるエンジンは、パドルで乗りこなすのが吉。この感じ、間違いなくアウディなんだけど、なにかに似てると思ってたら……、ランボルギーニの「ウラカン」を彷彿とさせたんだな。

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ホイールは19インチ。フロントには高性能ブレーキシステム(セラミックブレーキ設定もあり)を用意し、サーキット走行を含む熱負荷の高い条件に対応する。

ちょうど最新モデルである「テメラリオ」に乗った直後だったから、すごくわかりやすかった。「テメラリオ」はランボルギーニの専用セッティングが売りで、もはや「ウラカン」とは別物のスーパースポーツになっていたわけ。

その違いは、トルクベクタリングの味付けなのね。内輪をブレーキで制動して曲げていくタイプは、“出るはずのアンダーを出さない”工夫として効く。一方で「テメラリオ」は、駆動側の配分でラインそのものを“描く”ニュアンスが強い。この違いはすごくよく出てたし、本質的な違いなんだな。

そう考えると、シートに描かれたハニカム模様なんかのレガシーも、「アウディ RS」の専売特許として「今後は使っていくのかな?」と思った。ランボルギーニが革新なら、アウディは伝統の芸事で勝負する感じ。「型(ハニカム)があるから強い」みたいなね。

 

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フロントはワイドなスタンスを強調し、ヘッドライトにはマトリクスLEDを採用。仕様によりデジタルデイタイムランニングライトも備え、灯火のシグネチャーを選択できる。

アウディ RS 3 スポーツバック

全長×全幅×全高:4,380×1,850×1,435㎜
排気量:2,480cc
エンジン:直列5気筒ターボ
最高出力:400PS/5,600〜7,000rpm
最大トルク:500Nm/2,250〜5,600rpm
駆動方式:quattro(4WD)
車両価格:¥9,330,000(参考価格) 

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