印象派の画家、絵画の中でも絶大な人気を誇るモネの睡蓮。我々は睡蓮のどこに、そんなにも魅せられるのか。三者三様の視点から、睡蓮の新たな魅力を探る。今回は、世界的ドレスデザイナーであるTOMO KOIZUMI。
印象派が登場し始めた119世紀中頃は、中産市民階級が台頭し、人々の楽しい“日常”が街にあふれ出した時代。画家たちはそんな暮らしを題材に新たな絵画を生み出し、1874年に「印象派」という言葉が誕生した。今号では、印象派や彼らと関わりのある画家たちが見つめた“日常”に注目。当時の社会を紐解きながら、現代の視点で読み解いた、 新たな印象派の魅力がここにある。
『自由な視点、その創造性――印象派を読み解く』
Pen 2026年2月号
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モネが自身の印象で描くのは、実際には見えていない景色
© Packychong Song
レディー・ガガがドレスを着用したことで一躍脚光を浴び、NYコレクションで発表したドレスはメトロポリタン美術館の永久収蔵品に。トモ コイズミはドレスデザイナーとして世界が認める存在だ。大学で美術を専攻したコイズミは、幼少期から絵が好きだった。
「小学生の時から美術の授業が好きで、最初に興味を持ったのはシュルレアリスム、ダリとかマグリット。将来は芸術作家になりたいと考えていました」
しかし14歳の時、ジョン・ガリアーノのドレスに出合い、ファッションに目覚める。ファッションのほうが人に受け入れられやすいアート表現だと考え、ファッションの道を選んだ。
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印象派という流れをつくるにいたった思考にも興味がある
最初から印象派やモネが好きだったわけではないと言う。
「いい意味で理解しやすい美しさ、受け入れやすい色彩だと思っていたので、もっとコンセプチュアルなアートに目がいっていましたね。でもアーティスト活動をするなかで改めて見直すと、実は自分も影響を受けているんだな、掘り下げていくとつながってるんだなと。ジョアン・ミッチェルという抽象表現主義の作家が好きなのですが、2023年にパリのフォンダシオン・ルイ・ヴィトンで彼女とモネの絵を対比して見せる回顧展があって、ジョアン・ミッチェルがモネから影響を受けていることを知り、モネの色彩の豊かさ、素晴らしさに気付かされました。睡蓮のあの色。見過ぎて当たり前になっているけれど、実際のジヴェルニーの庭とか睡蓮の池の色ってああじゃないわけですよね。実際に見えてはいないものを、自分の受けた印象をもとにああいう色彩で描いていいんだ、と思いいたりました。モネは印象派の中でもパイオニア的存在。写真が生まれて写実的な絵が必要なくなって、そうじゃない絵を求めたのが印象派のルーツだと僕は思っている。時代の変化に応じて新しい考え方が生まれる瞬間。作品自体もそうだけど、印象派という流れをつくるにいたった考え方、思考にも興味があります」
トモ コイズミのドレスは季節や時代を問わない普遍的なものだ。年1回、自分のタイミングでコレクションを発表し、オーダーメイドでドレスをつくる。23年にはドレスのモチーフであるフリルをキャンバスに見立て色彩を乗せた、アートの個展を開いた。
「ファッションとアートは表現方法が違うだけ。ファッションがアートたりえるものもあるし逆もある。どちらも人の心を一瞬でつかむことが大事です。当たり前なようで重要な要素だと思う」
新しいコレクションをつくった後でいまは油絵に集中しており、今後、油絵の個展も開く予定。トモ コイズミの活動はファッションとアートの架け橋だ。
クロード・モネ『睡蓮の池と日本の橋』
「モネのイノベーター(革新者)としての存在が自分のインスピレーションにつながっています。この作品の調和の取れた色彩、より多くの人が美しいと思える画面づくりに心惹かれました」とコイズミ。
1899年 油彩、カンヴァス 90.5 × 89.7cm プリンストン大学美術館蔵
© Alamy / amanaimages

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