なんでだろう。スポーツカーというのは、古びない。1960年代のアルファロメオやアストンマーティンが、いまも大きな魅力を持つのは、その証左。

ただし、アスリートのように、内容はどんどん向上している。2025年12月にトヨタ自動車が発表した8気筒のスポーツ「GR GT」と「GR GT3」(ともにプロトタイプ)も同様だ。
スポーツカーに注目してほしいのは、開発者の情熱のような、人間的な要素が感じられるからだ。

今回の「GR GT」も同様。レースをするときはモリゾウというオルター・エゴを持つ豊田章男会長の熱い思いが背景にあったとされる。
発表時のプレスリリースでも「マスタードライバーのモリゾウからは『振り切ってほしい』『もっと突き抜けてほしい』という言葉も投げ掛けられました」と“告白”しているぐらい。

そのぶん、クルマづくりには徹底的にこだわったようだ。トヨタ初のオールアルミニウムの軽量骨格を持ち、エンジンは低重心のドライサンプ方式の4リッターV8を新開発。
前後の重量配分を考えて、ギアボックスはリアに搭載。エンジンからの出力伝達は、軽量・高剛性(かつ高価)の炭素樹脂を使ったトルクチューブを使う。

あんまり専門的になっても、と思いつつ、もうすこし追加すると、ギアボックスと機械式差動装置が一体化したトランスアクスルには、モーターも組み込まれているそうだ。
「あらゆる技量のドライバーにとって扱いやすく、クルマとしっかり対話できるドライビングパフォーマンスを提供します」とはトヨタの弁。

メディア向け発表会の席上では、トヨタ自動車でチーフブランディングオフィサーを務める執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏が登場。
「サーキット走行の帰りにいいレストランに寄れるような、そんなクルマです」とGR GTを定義した。

欧米ではよく見る光景で、あれは洒落ている。え、こんな名車が!とびっくりするようなクルマが、洒落たレストランに横付けされていたりする。レースのあと友人たちと食事をしているのだろう。
日本でもこんなことが出来るようなったらすてきだ。コインパーキングだと、ちょっとかっこつかないけれど。
社会がもっとクルマを容認して、GR GTがそんな存在になったら、とクルマ好きとしては願うばかりだ。
「サーキットでも走れる“日常のクルマ”。サーキットでは野生的に、街中では扱いやすく」
これがハンフリーズ執行役員による、GR GTのコンセプトだ。

もっとレース志向のひとのために、GR GT3が並行して開発されている。
「GR GT3は、レースで勝ちたいと願うすべてのカスタマーに向けて提供する、GR GTベースのFIA・GT3規格のレーシングカー」(トヨタ)

市販車をベースとするカスタマーモータースポーツのトップカテゴリーのFIA・GT3規格に沿ったレーシングカーとして開発されている。
GT3の国際レースにも出場できる。GR GT3でそこを目指す顧客がいる場合、「TOYOTA GAZOO Racing」として最適なカスタマーサポート体制の構築を視野に入れている。

GRからの2台に加え、同時に「レクサスLFAコンセプト」が発表された。
25年8月に米で開催された「モンタレー・カー・ウイーク2025」で話題を呼んだスポーツコンセプトにさらに手を入れたものだ。

かつてのLFAの名を再び継いだモデルで、「お客様の想像を超えるバッテリーEVスポーツカーの実現を目指したコンセプトモデル」とうたわれている。詳細はこれからの発表だ。
「3台は、低重心、軽量・高剛性、空力性能の追求という3つのキー要素を核とする共通の思想の下、一緒に開発を進めています」(プレスリリース)とのこと。この先が楽しみだ。

GR GT
全長×全幅×全高:4820×2000×1195mm
ホイールベース:2725mm
パワートレイン:3998cc V型8気筒ハイブリッド 後輪駆動
システム最高出力:650ps
システム最大トルク:850Nm
最高速度:320kph以上
価格:未定
https://toyotagazooracing.com/jp/gr/grgt/wp/













