「まぶたの下で何かが動いてる…」女性が医師に駆け込み除去手術に成功。その正体に医師も戦慄

  • 文:宮田華子
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Photo:MAYA LAB/Shutterstock※写真はイメージです

まぶたの下に「何か動くものがある」という症状の女性が医師を受診したところ、驚くべき診断結果となった。この症例が学術誌 The New England Journal of Medicine(NEJM)で発表され、医療関係者のみならず広く注目を集めている。

不自然に“動く”病変

発端は、ルーマニア在住の女性(26歳)が左上まぶたに感じた違和感だった。

鏡を見ると、皮膚がわずかに波打つように盛り上がっていた。驚いた女性は病院に行ったという。医師が触診すると、細い線状の病変が皮膚の下でわずかに位置を変えるような動きを見せた。通常の炎症とは明らかに異なる所見であった。 

女性が「(この)症状はその日だけだった」と説明する一方で、その不可解な動きを前に、担当医はただの腫れではないと判断した。 

問診で浮かび上がった“1か月前の結節”

診察を進める中で、女性は1か月前に右こめかみに小さな結節(しこり)が現れ、まぶたが腫れる前に自然に消えたことを思い出した。痛みもなく、当時は深刻に考えていなかったという。しかし医師は、この結節と現在の移動性病変との関連を疑い、速やかな処置を決断した。

病変の動きは緩慢ではあるものの皮下をゆっくり移動していた。何かの「生き物」の存在を示唆していた。医師は手術前に症状を録画した。

切開で明らかになった“実体” 

局所麻酔下で上まぶたを小切開すると、白く細長い物体が姿を現した。摘出されたのは全長約11cmの細い寄生虫(線虫)で、生きたままゆっくりと身をよじらせていたという。

医療チームが詳細を分析した結果、この寄生虫は 「Dirofilaria repens(ディロフィラリア・レペンス)」 であることが判明した。主に犬などを宿主とするフィラリアの一種で、蚊を介して偶発的に人間へ感染することで知られている。人間の体内では成虫のサイクルを完了できないため、皮下をさまよいながら結節を形成し、移動を続けるケースが報告されている。

ペットと蚊、そして“偶発的宿主” 

女性は自宅で犬を飼っており、地域でも蚊の活動が活発な時期だったとされる。今回のケースでも、犬を宿主として吸血した蚊が、たまたま女性を刺したことで寄生虫が皮下に侵入した可能性が高い。こめかみに一時的に現れた結節はおそらく寄生虫が定着したサインで、そこから1カ月かけてゆっくりと移動し、右こめかみから左まぶたへ到達したものと考えられる。

線虫は摘出後、女性の症状はすぐに改善し、追加の治療を必要としなかった。

まぶたの異変、侮るべからず 

今回の症例は稀であるものの、ペットオーナーには決して無関係とは言い切れない。特に、移動性の腫れや短期間で現れては消える結節がある場合、背景に寄生虫感染が潜んでいる可能性も否定できない。

NEJM に掲載されたことで、このケースは国際的な注目を集め、医療現場でも警戒を呼びかける声が上がっている。小さな症状でも異変を感じた場合、速やかに医師に相談することが大切だ。

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手術前の女性のまぶたの写真(左)と摘出された線虫(中央)。@NEJM - Xより

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医師が撮影したまぶた。はっきりと線虫が浮かび上がっている。@NEJM) – Xより