皆さんは旅先でどのような時間をお過ごしだろうか。大人旅を快適にするバッグは、旅に何を求めるかで大きく変わってくる。ここにお届けする5つのバッグは、現地でアクティブに動き回る人のためのセレクション。収納力が高く軽量で、身体を楽にする実用的なものばかりだ。都会的なファッション性の高さも兼ね備えるスポーティな旅のサポートアイテムを集めてきた。
※各バッグの問い合わせ先は記事末のリンク欄にて。
1.驚きの整理機能のミニショルダー
【ABLE CARRY/Core Sling】
エイブルキャリーは重さを分散させるバックパックで一躍名声を得たブランドだ。2025年には東京の「MoMAデザインストア」でポップアップショップが開催されたほど機能美にも定評がある。その彼らが満を持して11月にリリースした初のショルダーバッグが、ここに掲載するコンパクトな製品である。収納性を追求するエイブルキャリーの思想を凝縮した仕上がりになっている。
生活のライフライン、例えばスマホ、財布、パスポート、薬、ドリンクなどを収めて身を託せるバッグだ。ストラップを外せばポーチになるから、普段はポーチにして必要なときストラップをつけ持ち歩くのもいい。
本体素材は固く頑丈で耐水性が高い、ヨットの帆由来の「Ultra200X」。本体下部にマチがあり、物を入れると少し広がる。収納品が少ないときは全体が逆三角形のスマートなシルエット。カーブした構造の効果もあり、肩にラフに突っ掛けても斜めがけしても身体に馴染む。
さらに見事な工夫なのが、搭載された数多いポケットの種類と配置だ。それも単に数を増やしているのではない。素材を伸び縮みするストレッチ、中身がわかるメッシュなどに切り替え、抜群の整理能力の高さを実現している。内部で荷物がバラバラに飛び散ったり、何がどこにあるのかわからなくなる状況を防いでいるのだ。この利便性は実際に物を詰め込むと実感できる。
掲載の例でこのバッグの優れた収納性がおわかりになったと思う。バッグ自体にタイトに戻ろうとする性質があるため、荷物の固定力が高い。エイブルキャリーが現代のモバイルワーカーの生活をサポートするため入念に工夫を重ねたことが伺えるデザインである。
一方で一眼カメラのように分厚く形が複雑なアイテムは収めにくいようだ。あくまでもメインバッグのサブとして、生活必需品を持ち歩く役割に特化させよう。
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2.ワンショルダーで“肩に優しい”ミリタリー系ボストン
【WHITEÂGE/MOD.NAVY Boston Bag】
このボストンバッグの飾り気のない佇まいは、あたかもアノニマスなミリタリーバッグのようだ。ラフにラギッドに荷物を持ち運ぶシーンがよく似合う。手掛けたのはスタートして3年目になる日本のバッグブランド、ホワイタージュ。ミニマルな印象のなかに現代人の行動を楽にする工夫を詰め込んでいる。
ボストンでも背負えるのが大きな個性である。それもバックパックのような両肩乗せではなく、片肩だけのワンショルダー。スリングバッグ、もしくはメッセンジャーバッグと呼べる構造だ。肩にひょいっとバッグを突っ掛ける男性的なムードがカッコいい。成人男性のバックパック姿をランドセルのように幼く感じてしまう人こそ、このワンショルダーを存分に活用できるだろう。
斜めがけと別ストラップで3点止めすれば、背中へのフィット感が格段に高まる。本格バックパックのような分厚い背面パッドはないが、内側にPC収納部があり適度なクッションが確保されている。バックルをナスカンつきのベルトにつなげればショルダーバッグにもできる。この分厚いストラップはホワイタージュの製品に共通する最重要パーツだ。
ポリエチレンなどの「3Dメッシュスプリング構造」のクッション材を内装。「ミヤヴィエ」のブランド名で家具などにも使われているこのハイテク素材は、高い耐圧分散効果を発揮して肩への負担を和らげる。通気性がよく、ヘタりにくく、衛生にも優れ、空気を多く含むため軽量なのも特徴だ。
軽量なのはバッグ本体も同様だ。構造やパーツをシンプルにして軽くしている。そのうえで必要なポケットは過不足なく搭載している。
本体素材は防水性、防風性、透湿性に優れる、ドイツの会社が開発した「シンパテックス」。ファスナーや縫い目は防水仕様でないものの、悪天候のときでも心配が少ない。
このボストンバッグにはトラベルポーチとナップサックが付属している。ポーチはバッグ内部で縦にスナップ留めできる。服を畳んで入れておけば、移動でつくシワに悩まされずに済む。
「気づいたらよく使う愛用品になっていた」、そんな生活に寄り添う親しみやすさこそこのバッグの持ち味だ。
3. 旅のワードローブを補完する“着るバッグ”
【côte&ciel/PO Smooth Black】
床に置いて自立するほどハリがある、洋服地のようなナイロンを使ったショルダーバッグ。斜めがけすると身体に馴染み、荷物の重さも分散される。なんでも放り込めて旅歩きを快適にしてくれる。フランスのバッグブランド、コートエシエルの製品だ。
実はこれは単なるショルダーバッグではない。真価はトランフォームできることにある。バッグサイドをぐるりと覆うファスナーを広げると、なんとユーティリティベストに変身するのだ!
これぞまさしく“着るバッグ”。ベストに姿を変えてもポケットがすべて機能するから、スマホ、財布、モバイルバッテリー、パスポートなどの旅グッズを収めておける。布を渦のように捻りドレープを寄せたつくりの視覚効果で、膨らんだポケットが不格好に見えないのもこのバッグの巧みな点だ。
旅に服を一着持って行くことに相当するファッション性の高さも秀逸だ。アクティブに活動するときはベストに、出先で食べ物や土産を買ったり荷物が増えたときバッグに作り変えよう。
軽装でのショートトリップなら、メインバッグをこれにしてしまう手もある。ホテルにチェックインしたあと着替えなどの余計なものをホテルに置き、近隣の散策や食事に行くときベストに変える。旅ライフのインスピレーションを広げてくれる、アイディア満載の個性派バッグだ。
4.増えた荷物も難なくクリアする折り畳みトート
【KARRIMOR/mars tote 30】
折り畳めるパッカブルバッグをレジ袋の有料化以降にたくさん見かけるようになった。しかしいざ使ってみると、生地がペラペラで不安定だったり、肩に掛けられなかったり残念なことが多い。持ち運び最優先で作られたバッグは旅先で増えた荷物の収納には不向きなものだ。そんなエコバッグの不満を解消し、見栄えにも優れる製品がある。イギリスのアウトドアブランド、カリマーの「マーストート30」である。
折り畳んで内側のポケットに収納できるパッカブルバッグだ。旅向けの優れた特徴は以下の6つ。
1.安定した固めの生地。
2.最大でA3が入る大容量。
3.手持ちとショルダーのダブルハンドル。
4.外側に3つ、内側に1つのポケット。
5.荷物が飛び出さないファスナーつき開口部。
6.トロリーバッグに差せるパーツつき。
一般のバッグに遜色ない機能を搭載しつつ、約240gに抑えた軽さも特筆すべき点だ。競技用ランニングシューズなら片足250gで“軽量”と呼ばれるなかで、この重量は素晴らしい。
100デニールのナイロン生地には光沢があり、大人がスーツ姿で持ってもサマになる。ただし裏地がつかない構造なだけに、支えられる荷物の重さは限られそうだ。いざ持つとハンドルに引っ張られ形が歪み、フロントポケットのフラップが開いてしまうのも簡易バッグゆえの仕方のないところか。
たとえ“完璧”とまではいかなくても、折り畳み携帯バッグを高性能に仕上げた秀逸なトートである。小さなバッグに入れて持ち歩けば、旅の散策を軽装で過ごせるようになる。土産物を買ったとき紙ショッパーの持ち運びに困っても、トートを取り出して紙袋ごと収め肩から下げれば解決する。一家に一個は備えて損なしの役立ちグッズだ。
5.幅広マチが使い道を広げるボックスメッセンジャー
【MONOLITH/SHOULDER PRO FLAP】
黒のワントーンで大人の風格を醸すショルダーバッグ、モノリス「ショルダー プロ フラップ」。斜めがけすれば身体にフィットするメッセンジャーバッグになる。自転車通勤するビジネスシーンで便利に使え、さらに役立つのが荷物の種類が多い旅の時間だ。
アクセスしやすいポケットなどの機能が充実したこのバッグのなかで、ひときわ個性を放つのがボックス型の形状だ。モバイル機器などを詰め込んだポーチ、ジム用のスニーカーなどのかさばる荷物をきっちりと整頓できる。畳んだ服を平たく置けるメリットも大きい。一般のメッセンジャーバッグはトップが狭いものが多いが、これは上まで空間が空いている。シワが心配で底面に敷きたくない服を、詰めた荷物の上に乗せることが可能なのだ。
中空糸で軽量化した厚手のコーデュラナイロン、適所に配されたクッション材、堅牢なフラップなどが作用して、ラフに持ち歩いても型崩れしにくいバッグだ。形が保たれることが荷物を守る信頼感につながる。旅先で購入したものも不安なく家に持ち帰れる。機材を詰め込んだカメラバッグを肩に突っ掛けて各地を飛び回るフォトジャーナリスト気分で、このバッグと共に行動的な旅を愉しんではいかがだろうか。

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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