【BMW 新型iX3】加速・乗り心地・安全性能を日本導入までにチェック、まるでエンジン車のようなドライブ感覚

  • 文:小川フミオ
  • 写真:BMW AG
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電気自動車にかけるBMWの本気を見た。そう思わせられたのが、新型「iX3」。ドライブしてのたのしさと、乗り心地のよさは、もう別次元という印象だ。

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ロンダ山中にある「LAオルガニック」なるオリーブオイル製造所にて。写真:筆者

新型iX3は2025年9月に登場。バッテリー駆動EV専用モデルとして開発された。私が乗ったのは11月。場所はスペインのほぼ南端のマラガだった。

なんでマラガ?というのが、実は大事。理由は道にある。世界屈指の歴史ある古都マラガは港湾都市であるが、背後には山岳地帯が拡がる。そこを走るのが目的なのだ。

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前後長の長いルーフをのち室内は広いが、同時に躍動感がある。

私が乗ったのは、日本にも導入予定のiX3 50 xDrive。前後にモーターを1基ずつ搭載した全輪駆動で、あたらしさは新開発のバッテリーと、スーパーブレインなるコンピューターにある。

BMWはこのクルマのために、乾電池のような円筒形のバッテリーを開発。それを並べたバッテリーパックを、床下にシャシーの一部として組み込んだ。

新時代のEVとして、走りとともに、運転支援システムやインフォテイメントシステムも“進化”している。これも大きな特徴。

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縦長のキドニーグリルは1960年代から80年代初頭までベストセラーの地位にあった「ノイエ・クラッセ」から援用。

どこがすごいかというと、ひとつは運転する筆者に寄り添ったドライブ感覚。

EVを運転したことがある人は先刻ご承知のように、特徴は、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、どんっ力強く加速するところ。

iX3は、もちろん発進時はすっと出て、そこから息継ぎなしに加速する。一方で、やたらパワフルとは感じさせない。

アクセルペダルを軽く踏みこめば、クルマはそれに応じて軽くという感じで加速する。その加減が実にうまい。発進時を除けば、いいエンジン車を運転してようなフィーリングだ。

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平行四辺形型のセンターモニターと12時6時のスポークをもったステアリングホイールが特徴的。

同様のことは、ステアリングホイール操作にも言える。どんな路面を走っているか、手のひらに“情報”を伝えてくれる繊細な設定だ。

それでいて、ちょっとでも切り込んだとたんに車体がぱっと動くような過敏さは抑えられている。ナチュラルというか、ドライブは楽しめるが、それでいて落ち着いている。 

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人工皮革だが滑りにくく長い距離の移動も快適。

ふたつめは、走行安定性の高さ。上に、落ち着いていると書いたが、仮にとばせば、しっかり応えてくれる。

今回BMWは、マラガの山中にある「アスカリ・サーキット」なる、全長約5.2kmのプライベートサーキットがドライブコースに組み入れていた。

そこでは、道路工事現場で見かける円錐形のパイロンを、割と狭い感覚で並べたところを、やや高めの速度で右に左にとステアリングホイールを切りながら駈け抜けるプログラムが設定されていた。

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マラガはロンダにある「アスカリ・サーキット」ですぐれたハンドリングを経験。

加えて、緊急危機回避。時速120kmで真正面に置かれたパイロンに向かい、直前でフルブレーキングしながらステアリング操作でよける。その先にあるパイロンもよける、というもの。

iX3のブレーキはしっかり効き、加速もよく、さらにサスペンションシステムとステアリングシステムがしっかりしている、とよーくわかった。安心感は絶大だ。

自分の感覚に合うドライブフィールという点では、乗り心地も特筆点。常に車体の姿勢はフラット。加減速で前が持ち上がったり、つんのめったりしない。

日常的にタクシーやバスで往々にして経験する、あの困った動きが皆無なのだ。

これはブレーキをコンピューターで制御しているから、とBMWの技術者は説明してくれた。 

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横長のリアコンビネーションランプがあたらしさを感じさせる。写真:筆者

iX3には、4つのコンピューターが備わり、それらが「ドライビングダイナミクス」「自動運転」「インフォテインメント」、そして「ベーシック&コンフォート向上機能」を受け持つ。

4つのコンピューターが統合制御されているのも、注目点。

このメリットのひとつが、ブレーキを巧妙に制御して車体の動きを調整していること。故に路面状況にかかわらず、車両の姿勢はほぼフラットで、実に快適。

さらにもうひとつ。変速機の「B(ブレーキ)モード」を使うと、アクセルペダルを踏む足の力を緩めるだけで、車両の減速と停止まで行える。

驚きは、停止のときにショックが皆無なのだ。あれ、止まったの?と思う。どんなうまいショファーも、ここまで出来るだろうか、と思うほどだ。

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ウインドシールド下のモニターにボイスコマンドに対応するAIのエージェントが擬人化されて表示される。写真:筆者

インフォテイメントシステムも、スマートフォンのように使える。各ウィジェットを指で操作して、自分の使いやすいように並べ変えが可能。

とくにモニター画面の第1階層に、運転中によく使うものを並べておけるのは便利だし、ウインドシールド下に新設されたモニター画面にも、いつもチェックしたい項目を任意で表示できる。

「使い勝手と、車内でのたのしみ、2つの機能を両立させることをねらいました。ハードウェアとソフトウェアを同時に開発して、性能向上に努めたのです」

BMWの担当者がそう説明してくれた。 

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先行者追従型クルーズコントロールで走行中はドライバーの顔の向きで車線変更の意思を確認すると自動で隣の車線に移る。

あきらかに、新世代のEVと呼びたいiX3。日本には26年夏ごろ導入が計画されている。

BMW iX3

全長×全幅×全高:4782×1895×1635mm
ホイールベース:2897mm
車重:2285kg
電気モーター 前後各1基 全輪駆動
システム最高出力:345kW
システム最大トルク:645Nm
一充電走行距離:679〜805km
乗車定員:5名
0-100km/h加速:4.9秒
価格:未定 
問い合わせ:BMW Japan
www.bmw.co.jp/ja/index.html