始まりは2017年——「Pen クリエイター・アワード」は、あらゆるジャンルのクリエイターへ敬意を表し、功績をたたえてきた。第9回となる25年は、5組の受賞が決定。そのひとりである、映画監督の川村元気は、斬新な視点で日本映画に新風を吹き込んだ。
Pen最新号、2026年1月号の第2特集は、『Pen クリエイター・アワード2025』。第9回目となる25年は、5組の受賞者を選出。彼らの2025年の活躍を振り返りつつ、その素顔に迫った。
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“新しい映画体験”をもたらした、『8番出口』の快挙
『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』『怪物』……。原作、スタッフ、キャストの才能を絶妙に組み合わせ、数々のヒット作を生み出してきた川村元気。2010年にはアメリカのエンターテイメント業界誌「ハリウッド・リポーター」の「ネクスト・ジェネレーション・アジア」に選出され、翌年、優れたプロデューサーに贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。同時に『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』などベストセラー小説や絵本も執筆し、多彩な才能を見せてきた。
自身の小説『百花』を映画化し、監督デビューを果たしたのが22年。同作にてサン・セバスティアン国際映画祭の最優秀監督賞を受賞した映像手法と、海外における興行的な反省点を熟考し挑んだのが、監督第二作『8番出口』だ。
「ゲームの映画化は基本的に失敗が約束されている。それならゲームと映画の境界線が曖昧な“新しい映画体験”をつくり出そう」と考えた川村は、KOTAKE CREATEによる大ヒットゲームを斬新な手法で脚本化し、二宮和也に出演をオファー。無類のゲーム好きである二宮は、ある時はゲームプレイヤーとして、またある時はクリント・イーストウッド作品に出演した実力派俳優として、目から鱗の意見を繰り出した。
さらに、ゲーム業界に明るい企画プロデューサーの坂田悠人とともに、数学的なセンスを持つディレクター平瀬謙太朗を共同脚本に、若手の名手・今村圭佑を撮影監督に招き、若く柔軟なクリエイターたちとチームを組み、各部門の垣根を越え、現場でトライ&エラーを繰り返した。
見慣れた地下通路や黄色い看板といったシンプルな舞台を閉塞感に満ちた無限回廊に仕立て、観客を出口のない日常の鏡と対峙させる『8番出口』が完成。25年のカンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングを熱狂させ、日本では興行収入51億円を突破しいまなおロングラン中。北米ではアカデミー賞作『パラサイト 半地下の家族』や『ANORA アノーラ』を手掛けたNEON社の配給が決定。目下、海外からリメイクのオファーも殺到し、その旋風は収まる兆しがない。

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