始まりは2017年——「Pen クリエイター・アワード」は、あらゆるジャンルのクリエイターへ敬意を表し、功績をたたえてきた。第9回となる25年は、5組の受賞が決定。そのひとりである、メディアアーティストの落合陽一は、「2025年大阪・関西万博」のシグネチャーパビリオンで話題をさらった。
Pen最新号、2026年1月号の第2特集は、『Pen クリエイター・アワード2025』。第9回目となる25年は、5組の受賞者を選出。彼らの2025年の活躍を振り返りつつ、その素顔に迫った。
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大阪・関西万博で「null²(ヌルヌル)」が大成功、ポストAI時代の世界とは
大阪・関西万博でテーマ事業プロデューサーを務め、シグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」が大成功をおさめた落合陽一。万博という大舞台で予算も限られる中、作家的な手作業も駆使してパビリオンを完成させた。会期中は足繁くパビリオンに出向き、抽選に外れた人々が一部でも体験できるよう「ウォークスルーモード」を開設。地下鉄の運行トラブルで観客が足止めされてしまった時には遠隔で「null²」を再起動して観客を励ますなど、現場への心遣いも話題になった。AIが一気に日常に浸透した2 02 5年、パビリオン展示を通じポストAI時代の世界観を提示した功績は大きい。
落合の活動はアーティストと研究者の2本柱だ。10年頃からメディアアーティストとして多くの作品を発表する一方、15年より筑波大学で主宰する「デジタルネイチャー研究室」では自らの研究を行うとともに後進を育成する。
落合が掲げるビジョンは「計算機自然(デジタルネイチャー)」だ。
元来の自然と計算機の内なる自然が融和し、計算機があふれる環境による「新たな自然」を構想し、作品制作と工学的研究(音響/光学ホログラフィ・デジタルファブリケーション・インタラクション)を世に送り出してきた。近年は計算機自然における民藝をメディアアートと定義し、日本の土着的芸術や仏教的世界観は計算機自然においてどう展開されるかを志向し、表現を拡大。茶道や民藝などの文化と計算機自然の融合に着目した頃から、アーティストとしての独自性を開花させた。ほかにも音楽やサッカーとの協業も行う。集大成ともいえる万博の「null²」において、参加者は全面鏡張りの内装を持つパビリオンで、AIが生成した自分の分身と対話を通じた計算機自然の世界を体験。老若男女が我を忘れて没入した。
「null²」は新たな形態への転生に向けて引っ越しを計画中だ。クラウドファンディング開始3週目には2億円を達成した。“ぬるロス”の熱狂は、まだまだ終わりそうにない。

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