【光る夏 旅をしても僕はそのまま】“旅する時間”そのものを描いた、 詩的で美しい紀行文学

  • 文:辻山良雄(書店「Title」店主)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『光る夏 旅をしても僕はそのまま』

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鳥羽和久 著 晶文社 ¥1,980

本書では、キューバのハバナ、スリランカやメキシコなど、著者がこれまで旅してきた11の国や地域での出来事が語られる。一つひとつのエピソードは断片的で、それらが自然につながりながら続いていくさまは、詩的で美しい。この本で著者が書こうとしたのは、わかりやすい物語ではなく、不安や喜びに満ちた旅の時間そのものなのだ。いま旅のスタイルも変化しているが、見知らぬ土地に自分の身を置き、「他者」と出会うことには変わりがない。本書はそれを実践した、まれな本と言える。