【京都の工房探訪】和傘の老舗「日吉屋」で、“和紙の卓上照明”をつくった

  • 写真・文:一史
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着物を着る習慣がない人にとって、和傘は縁遠い存在かもしれません。
少なくともわたしはそうでした。
「工芸的な魅力がありそう」と思いつつ、これまで横目で眺めていた無粋な人間です。
着物は業界最大手「やまと」の展示会に近年通っており、多少は知識が増えてきたものの。
(仕事の主軸がファッション分野の文章・写真です)
和傘にも関心はありまして、今回嬉しい機会を得て老舗の工房を訪れることができました!

オリックスホテルズ&リゾーツが京都市で7年間運営している「クロスホテル京都」の期間限定宿泊パッケージのひとつに、京都で2軒しかないとされる和傘の老舗のひとつ「日吉屋」でのワークショップがあります。
ミニ和傘、もしくはミニ照明器具をつくるワークショップ。
そこへの参加&ホテルの宿泊体験のオファーをいただき、大喜びで行ってきました。
制作したのは日吉屋オリジナルの照明器具「古都里(ことり)」のデスクトップ用ミニサイズ。
和傘のつくりをシェードに応用したものです。
記事上部の写真がその結果の照明器具。
クロスホテル京都のベッド横に飾ってみた様子がこちら ↓
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光で和紙の凹凸が透けてなんとも美しい風情。

今回の記事では日吉屋の様子をお届けします。
京都市内の繁華街のど真ん中にある、アクセス最高のクロスホテル京都については別記事にて。
ぜひ両方を併せてご覧くださいませ。

ミニ照明/ミニ和傘のワークショップ

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つくりながら撮るのが時間的に厳しく、指導する小野寺さん(元和傘職人の営業担当)に作業していただきました。
ただし貼る紙はしっかり選ばせていただきましたよ。

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通常のワークショップ参加者が選べる素材がこの華やかな模様。
耐久性の高い不織布で貼り直しやすく、誰もが手軽に扱える素材です。

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こちらはクロスホテル京都宿泊者だけが選べる和紙。
極薄にカットした木材に和紙を貼ったものまであります。

和傘と同様の和紙にしたくて、さらに無地好きなこともありこちらから探すことに。
一枚一枚を照明に当てて透かしたところ、明暗のコントラストがもっとも美しいと感じた黒に決定。

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竹の骨組みは日吉屋が組み立て済みで、紙を貼る作業のみのワークショップです。
上写真で骨組みの内側にあるグレーの筒は制作時に骨を固定させる土台。
骨一本一本の外側に両面テープを貼っていきます。

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慎重に和紙を貼っていき、重なった余分な部分を竹骨に沿って切り目立たないように仕上げます。
そしてこのあと、古都里(及び和傘)の要ともいえる折り目づけの作業に移ります。

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骨と骨の間の中央に手加減で折り目をつけます。
実際の和傘でも同様に手で行うそうです。
小野寺さんによると、「この作業用の器具も存在しますが、むしろ疲れてしまいやりにくいです」とのこと。
この工程はベテラン職人でも難しいそうで、つねに満足のいく、納得のいく仕上がりになるとは限らないそう。

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美しく完成!
そりゃそうです、元職人さんがつくってくれたんですから。
食事メニューを選び目の前で料理人に調理してもらう割烹の客の気分でした。
いいんです、わたしは自分でやるよりレポートすることが性に合い取材者、撮影者の仕事に就いたのですから。
(ワークショップをただ見てるだけの者の言い訳)
にしても黒和紙って色の深みが最高ですね。
黒麻のプリーツスカートのような佇まい。

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単3乾電池4本の照明器具の上に被せて飾ります。
ほのかな明かりが部屋を彩ります。

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ミニ和傘づくりも人気のワークショップ。

クロスホテル京都での参加プランの簡単な概要は以下です。

[和の手仕事 ミニ和傘またはミニ古都里の制作付きステイプラン
予約期間:2026年3月24日(火)まで
宿泊期間:2026年3月31日(火)まで
料金:1泊1室2名さま 35,683円から]

詳細は以下のアドレスよりご確認くださいませ。
https://cross-kyoto.orixhotelsandresorts.com/
コピペでお願いいたします。

なお日吉屋は常設のワークショップもあり、費用は8800円。
時間は工房見学も含め90分です。

日吉屋工房
京都市上京区寺之内通堀川東入ル百々町546
https://hiyoshiya.wagasa.com/workshop/

ここでミニ古都里でも本格的な品であることがわかるウンチクをひとつ。
竹素材は和傘の本場でもある産地の岐阜県に発注しているそうです。
下の写真が送られた状態で、シート状に一本一本並べられています。

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小野寺さんが指を差す箇所が糸で繋がっているように見えますが、実は表面につけた軽い傷です。
これはマーキングで、バラバラにほどいてもまったく同じ並びに戻せるようにした工夫。
なぜ岐阜の業者がこれほど手間を掛け納品したかというと、一本の和傘の骨は一本の竹だけを使うのがセオリーだから。
天然素材だからこそ、竹は曲げのしなりや強度に微妙な違いがあります。
きゅっと束ねて広げることを繰り返す和傘の制作は、筒状の竹を正しい順番で組み上げる必要があるそう。
ミニ古都里、ミニ和傘にもこだわりの伝統が息づいていることを知ると、なんだか嬉しくなりますね。

日吉屋の玄関を開けるとそこは店舗

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お茶の表千家、裏千家の家元がすぐ近所にある、歴史的な風土に包まれた日吉屋 京都本店。
一方で近代的な住宅街でもあるユニークな土地柄です。
日吉屋は一軒家のなかにオフィス、工房がありとても家族的に感じました。

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和紙に亜麻仁油を塗り内部まで染み込ませ防水性を与えています。
油だから時が経つごとに黄色っぽく色が変化。
エイジングの魅力ですね。
上写真の傘も、最初は白かったそうです。

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和傘の立てかけは、雨水を落とすため持ち手部分を下にします。
西洋傘のように逆さに置くと、雨水カバーの先端部分に水が溜まり傷んでしまうらしく。

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閉じた状態で漆などを塗装するのは、ぶつけたときも痛みにくくする補強だそう。
見た目のよさ優先でなく機能美に基づく意匠です。

女性職人が働く工房

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ものづくりの現場大好き人間としては、老舗和傘の工房に入れたのが今回の訪問のいちばんの収穫でした。
創造的なムードに満ちた工房にテンション爆上がりです。

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「ポップな色の傘がたくさん並んでる」と思ったら、某学校の応援チームが使う目的だそう。
よく見ると傘に大きくアルファベットの文字が!
応援グッズを老舗に発注するとは、なんとも豪勢な学校があるものです。

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ミニ傘をつくっている職人さんもいました。
発注主はインドの人だそう。
自身の豪邸に飾るためのオーダー?
または経営する店舗のインテリアにでも使うのでしょうか。
「日本っぽければなんでもいい」では済まさない贅沢な本物志向ですね。

とはいえ、わたしのシンパシーは注文主よりつくり手のほうにあり。
訪れたとき働いていた職人さんは全員女性でした。
年配の人はおらず若い印象。
女性の色彩感覚や優しいニュアンスが、京都らしいワビサビの美が漂う日吉屋の京和傘にほどよい現代性を与えているのだと思います。

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クロスホテル京都の1階ロビーでは期間限定で、日吉屋の古都里と紹介パネルがディスプレイされました。
海外客が9割という圧倒的な外国人率のホテルにおいて、日本の美を示すいいショーケースになったでしょう。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。