オーデマ ピゲは2025年、150周年を迎えた。アニバーサリーイヤーの節目に登場したのは、複雑機構を生業にしてきたブランドのアイデンティティが宿るパーペチュアルカレンダーだ。オーデマ ピゲの歴史を紐解きながら、アニバーサリーモデルの卓越性を見てみよう。
2025年は腕時計の“名作”が改めてフォーカスされた1年であった。そして、名作と呼ばれる腕時計には、一つひとつの物語がある。時代を超えて受け継がれる100本の腕時計、その“物語”を読み解いていこう。
『未来へ受け継ぐ 名作腕時計、100の物語』
Pen 2025年12月号
150周年を祝う、アニバーサリーモデル
①「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー」
②「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」
2019年に誕生した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」。「CODE」は、挑戦、継承、追求心、進化という4つの頭文字、「11.59」は新しい一日が始まる直前という意味が込められている。ミドルケースを備えた多層構造やダブルカーブのサファイアガラスなど、先進的なデザインをベースに、アニバーサーリーを祝う「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー」ではオールインワンリューズの永久カレンダーを搭載。
1972年に誕生し、ラグジュアリースポーツという新ジャンルを確立した後、84年には初めてパーペチュアルカレンダー搭載モデルが生まれた。150周年を祝す「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」に搭載された「Cal.7138」は、カレンダー表示をリューズのみで修正できるオールインワンリューズを備える。直感的な操作を可能にし、超薄型と高い実用性を両立する。
創業期から極め続けた、複雑機構の進化は止まらない
1875年に創業したオーデマ ピゲは、いまもふたつの創業家一族が経営に携わる稀有なマニュファクチュールとして知られる。その150年の歩みは高級時計を追求し続けた軌跡であり、端緒となったのが複雑機構だった。
スイスのル・ブラッシュ生まれの幼なじみが共同開設した時計工房から歴史は始まる。その地はジュウ渓谷の奥深く、冬季は雪に閉ざされる厳しい自然環境にあり、移り住んだ修道士によって拓かれた。その忍耐力や強靭な精神、仕事に取り組む集中力に加え、大いなる自然が豊かな創造性を育み、複雑機構の製作に特化していく。
1950年代以降も少量生産による高級時計を手掛け、ついにはラグジュアリースポーツというジャンルを打ち立てた。72年に発表した「ロイヤル オーク」だ。以降、先進技術とデザインで腕時計を革新するパイオニアの存在感を際立たせる。新たなアイコン「CODE 11・59 バイ オーデマ ピゲ」もその先鋭化にほかならない。そして150周年の今年、メゾンの複雑機構でも重要な位置を占めるパーペチュアルカレンダーを進化させ、これを2大アイコンに同時搭載し、進化した技術を誇示した。
直近でも高精度の時計部品に特化したサプライヤーを傘下に収め、生産におけるエコシステムを強化する。それはスイス高級時計全体の発展を促すのだ。
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ROOTS
REGACY
パーペチュアルカレンダーの系譜。1885年に発表したグランドコンプリケーション懐中時計。パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、スプリットセコンドクロノグラフの3つの複雑機構を搭載した。
OTHER ICONS

柴田 充(時計ジャーナリスト)
1962年、東京都生まれ。自動車メーカー広告制作会社でコピーライターを経て、フリーランスに。時計、ファッション、クルマ、デザインなどのジャンルを中心に、現在は広告制作や編集ほか、時計専門誌やメンズライフスタイル誌、デジタルマガジンなどで執筆中。
