【背筋が伸びる遺稿集】やわらかな言葉で「生」を見つめた、鈴木るみこの『ふらんすの椅子』

  • 文:辻山良雄(書店「Title」店主)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『ふらんすの椅子』

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鈴木るみこ 著 港の人 ¥1,760

鈴木るみこは、雑誌『クウネル』や『暮しの手帖』などを中心に活躍していたライターだったが、2018年、若くして急逝した。そのやわらかくて芯の通った文章にはファンも多く、長年単著が待ち望まれてきたが、今年、その遺稿集がようやく発売となった。水を飲む時のように、すっと身体に入ってくる文章で、読めばひとりの女性の魂の道行きが、自然なかたちで浮かび上がってくる。彼女は自身の人生を駆け抜け、ささやかな王国を形成したのだ。自らの「生」を省みずにはいられない、背筋が伸びるエッセイだ。