【温室の正体は書店】ヴェネチアに現れた“透明なブックハウス”が美しすぎる

  • 文:山川真智子
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イタリア

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Photo: Iwan Baan

ヴェネチア・ビエンナーレは、イタリアのヴェネチアで開催される国際的な芸術の祭典だ。美術展と建築展が毎年交互に開催されており、今年は建築展が行われている。その会場となる庭園の入り口に設置されたのが、三角柱を横に倒したようなテント型の建物「ラ・リブレリア」。透明素材に覆われた外観から温室にも見えるが、実は仮設書店だ。

軽量でスタイリッシュ、自然光を感じる空間 

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Photo: Iwan Baan

「ラ・リブレリア」は、書籍販売用の店舗がある中央パビリオンの改修・閉鎖に伴い誕生した。今年の建築展のキュレーターであるカルロ・ラッティが、仮設書店のアイデアをファッションデザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグと相談。彼女のコンセプトに基づいて、ニューヨークを拠点とし様々な革新的プロジェクトを手掛けてきたデザインスタジオ、ディラー・スコフィディオ+レンフロ(DS+R)が設計した。建物内部に足を踏み入れる前から、訪れる人の目はその構造に向かう。24メートルのスペースの両端から突き出ているのは、細長いテンセグリティ(太い柱同士を直接つなぐのではなく、張力を使って一体化させる超軽量構造)の梁。建物の外側は壁ではなく、軽量で透明な繊維強化材の外装で覆われ、内側が透けて見える。

建物自体は地面に固定されていないが、バラストと書籍によって安定化する仕組みだ。内部は風通しが良く、たっぷりと入る自然光で明るい印象。昼間は木々の天蓋の下で本を探すような感覚になり、夜になるとランタンのように輝く建物が、ビエンナーレを後にする読書好きの人々を誘うという。

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Photo: Iwan Baan

移動、組み立てが容易。図書館としての可能性も

「ラ・リブレリア」は、もともとリテラシーと読書愛をサポートする目的で設計された。軽量構造であるため、分解・輸送・再組立てが可能で、世界を巡り人々と交流する移動式書店となることが期待されている。オンラインデザイン誌、ヤンコーデザインは、図書サービスが届きにくい地域での移動式図書館としての「ラ・リブレリア」の可能性に言及。軽やかで可動性のあるこの建築は、ヴェネチア・ビエンナーレで注目を集めるとともに、知識へのアクセスの民主化にも貢献できるだろうとしている。

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Photo: Iwan Baan
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Photo: Iwan Baan
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Photo: Iwan Baan

山川真智子

●Webライター
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。