9月4日(現地時間)、ファッション界の巨匠ジョルジオ・アルマーニが91歳で逝去した。最後の日まで創作に情熱を注ぎ続けた彼の50年にわたる美学と哲学を辿る特別展示「ARMANI/Archivio」が、今、銀座の中心地に立つアルマーニ/銀座タワーで開催されている。10月27日から11月16日までの期間限定で、約30体の貴重なランウェイピースが、その揺るぎない創造の軌跡を静かに物語る。
今回の展示は、2000年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で開催された回顧展から着想を得た構成だ。時系列という枠組みを超え、「色」「フォルム」「素材」という3つの要素を軸に、90年代から2000年代初期を中心としたルックが並ぶ。この斬新な展示方法により、各ピースが持つ独立した物語と、ブランド全体を貫く長期的なテーマが同時に浮かび上がってくる。
軽やかで非構築的なアンコンジャケット、ジェンダーの垣根を越えたシンプルでニュートラルなエレガンス、そして象徴的なグレージュのカラーパレット。これらはすべて、アルマーニが世界のファッション界にもたらした革新的な価値観の証だ。決して華美ではないが、控えめな洗練さの中に宿る力強さこそが、半世紀にわたってファッションの概念そのものを更新し続けてきた原動力となっている。
会場の壁面には、X線写真を使用したムードボードが設置され、衣服の構造や素材のレイヤリングが可視化されている。これは単なる展示演出ではなく、実際の修繕・修復過程にも通じる要素であり、創造と保存の両面からブランドの姿勢を象徴的に表現したものだ。
「ARMANI/Archivio」プロジェクトは、単に過去の遺産を保存するだけではない。衣服やスケッチ、ルックブック、広告ビジュアルなど多様な資料をデジタル化し、時代やテーマを横断して閲覧できる「生きた知識体系」として機能させる壮大な試みだ。アーカイブの対象となるランウェイピースは、テクニカル要素・文化的要素・文脈的要素の3つの軸に基づいて選定されている。

メンズウェアでは柔らかなジャケットが、ウィメンズウェアでは繊細な刺繍が印象的だ。それぞれ異なる方向性を持ちながらも、シンプルなラインの美しさやバランスのとれた比率によって見事に調和し、アルマーニが追求する本質的なエレガンスを体現している。
このアーカイブは、現代や未来のクリエイター、研究者に新たな学びとインスピレーションをもたらす文化的資源として位置づけられている。デジタルプラットフォーム(https://archivio.armani.com/ja)も同時に公開され、世界中からアクセス可能な知の集積地として機能し始めた。
時流に左右されることなく、スタイルの本質を問い続けてきたジョルジオ・アルマーニ。この展示空間は、訪れる者に静かな問いを投げかける——真のエレガンスとは何か、と。


ARMANI/Archivio 展
会期:2025年10月27日(月)〜2025年11月16日(日)
場所:アルマーニ / 銀座タワー 東京都中央区銀座5-5-4
https://archivio.armani.com/it