サウジアラビア
2018年に停止されていた、サウジアラビアの超高層ビル「ジッダ・タワー」の建設プロジェクトがようやく再開された。その近未来的なデザインに加え、完成すれば世界一高いビルになることで話題となっただけに、工事再開のニュースで再び注目が集まっている。
工事中断から再開へ、サウジアラビアの新たな象徴!
ジッダ・タワーは、サウジアラビア北部の紅海沿岸に広がる開発地区「ジッダ経済都市」の中心となる象徴的な存在として設計された。商業・住宅建築群で構成されるこの地区は、サウジアラビアの経済多角化を目指す「サウジ・ビジョン2030」計画の一部で、投資と観光を促進することが期待されている。タワーの建設は2013年に開始され、2017年には約3分の1が完成していた。
ところが、プロジェクトの請負業者だった企業のオーナーが、国内の汚職一掃作戦により逮捕されたことで工事はやむを得ず中断。資金問題、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、地盤の脆弱性に関する技術的課題といった諸事情も影響し、工事の遅延が続いていた。しかし、2024年10月に工事再開を記念する式典が開催され、完成に向けてプロジェクトは再び動き出した。
ヤシの新芽をイメージした、近代的なデザイン
ジッダ・タワーの設計を担当したのは、シカゴの建築・設計事務所、エイドリアン・スミス+ゴードン・ギル・アーキテクチャー(AS+GG)。超高層ビルを専門とするスタジオとしても知られており、アラブ首長国連邦にある現在高さ世界一(約830メートル)のビル、ブルジュ・ハリファは、エイドリアン・スミスが他の事務所在籍中に手掛けたものだ。
AS+GGが目指すのは、エネルギー効率が良く環境にやさしい建築物で、ジッダ・タワーにはテクノロジー、イノベーション、持続可能性に裏打ちされたネオ・フューチャリスティック様式を取り入れている。鉄筋コンクリートと鋼鉄で構築され、ガラスで覆われた先細りの三角形のシルエットが特徴的だが、この形状は、頂部での風荷重を軽減するとともに、コンクリートコアのサイズを縮小することで上層階の有効空間を最大化することを目的に設計された。先がY字型になった三叉(みつまた)のようなデザインは、ヤシをイメージしている。細身で微妙に非対称な輪郭が、砂漠の大地から空に伸びるヤシの葉の新芽を連想させ、王国の未来の成長を告げる新たな生命の象徴となっている。
施設・設備も充実!急ピッチで工事進行中
ジッダ・タワーの総階数は157階とされている。工事再開の記念式典は64階で行われていたため、高さに関してはすでに予定の40%以上に達していることになる。今後は2028年の完成を目指し、4日ごとに1フロアを完成させる計画ということだ。超高層だけに、秒速12メートルという高速エレベーター56基が設置される予定で、3つのロビーを通じて、タワーの異なる部分を結ぶエレベーターの乗り換えも円滑に行えるという。住居、オフィス用のスペースに加え、高級ホテルの開業や展望台の設置も予定されている。最終的に、高さはブルジュ・ハリファを大きく上回る約1000mに達する見込みで、世界一高い超高層ビルの称号を獲得すべく、工事は着々と進行中だ。
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山川真智子
● Webライター
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。