
『白地人物城郭文様更紗裂』18世紀 Karun Thakar Collection, London. Photo by Desmond Brambley
インド更紗は、花や鳥、動物、樹木などの自然をモチーフに、華やかでエキゾチックな文様を特徴とするインド発祥の木綿の染め物。更紗の歴史は古く、紀元前二千年頃にまで遡るといわれているが、16世紀から17世紀にかけてインドの重要な交易品として、ポルトガルやイギリス、オランダの東インド会社によってヨーロッパ圏へ持ち込まれると、当時のヨーロッパにはなかった、軽くて丈夫で洗濯もできる綿織物として広まっていった。日本にも桃山時代に伝わり、大名や豪商、茶人たちに珍重され、その後独自に発展した江戸更紗は、インド更紗を基にしながら日本の職人の技術と美意識が融合した伝統工芸品となる。
世界屈指のコレクターとして知られるカルン・タカールのコレクションを日本で初めて紹介する本展は、インド国内向けにつくられた最長約8mの完全なかたちで残る優品から、アジアとヨーロッパとの交易で生み出されたデザインを伝える掛布や服飾品、そして国内のコレクションも交えた日本での展開を伝える貴重な作品が展示される。
『白地人物城郭文様更紗裂』は、上段に占い師とオランダ国旗を掲げた砦、下段には宮廷内のくつろいだ貴族と使用人を配したデザインで、おそらくオランダ向けに生産されたと考えられる。また生命の象徴とされる立木が中央に描かれたベッドカバーや掛布は、ヨーロッパの人々の暮らしを彩る装飾品として人気を博した。布に直接染料や媒染剤を手描きする「カラムカリ」や、木版に彫られた模様を布に押し当てて染める「ブロックプリント」といった更紗の技法は、インドにおける染織文化を代表するものとしていまも世界中で受け継がれている。現代のファッションやインテリアの分野においても愛され続けるインド更紗の魅力を堪能できる展示だ。
『カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語』
開催期間:~11/9会場:東京ステーションギャラリー
TEL:03-3212-2485
開館時間:10時~18時(金は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日、10/13、11/3は開館)
料金:一般¥1,500
www.ejrcf.or.jp/gallery