【2025年秋最注目】日本史上最大規模のブルガリ展! 名作ジュエリーの色彩と技巧を間近で体感

  • 文:はろるど
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『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』 国立新美術館 2025年 展示風景

日本におけるブルガリの過去最大の展覧会である『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』が、東京・六本木の国立新美術館にて開かれている。豊かな色彩にあふれた約350点のマスターピースが並ぶだけでなく、ユニークな会場デザインや現代アート作品など見どころ満載の展示とは?

色彩を操るメゾンの卓越した手腕に光を当てる

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『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』 国立新美術館 2025年 展示風景

1884年の創業以来、鮮やかな色の宝石を自在に組み合わせ、唯一無二の輝き放つジュエリーを生み出すローマのハイジュエラー、ブルガリ。「カレイドス」とはギリシャ語に由来し、「美しい(カロス)」「形態(エイドス)」を意味する。そしてブルガリの卓越した色彩表現に光を当てる本展では、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションに加え、個人が大切に受け継いできた貴重なジュエリーも集結。あたかも万華鏡のなかを覗き込むように、きらめきの迷宮を旅するような体験を味わえる。

ブルガリの色彩の革命とは…?創業者ソティリオ・ブルガリの銀細工にもすでに色への関心は見られたが、真の革新は第二次世界大戦後に訪れる。従来の色味を限定した因習的な配色に対し、ブルガリはイエローゴールドにサファイアやルビーなどをあしらい、さらに半貴石と見なされていたアメシストやターコイズにも新たな美と価値を見出す。そしてブルガリ・スタイルを象徴するカボションカットを通して色彩の強さを表現し、メゾンを「色石の魔術師」として世に知らしめた。

女優、エリザベス・テイラーが愛用したネックレスも公開!

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『ネックレス』 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド 1962年頃 エリザベス・ テイラー旧蔵 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』 国立新美術館 2025年 展示風景

第1章「色彩の科学」 では、「原色」を起点に「暖色」と「寒色」などの対比を通して、色彩の効果を科学的にアプローチしている。ゴールドとプラチナにダイヤモンドとシトリンを配した『ブレスレット』(1940年頃)は、イタリア国外では初めて披露される貴重な逸品。またプラチナにカボションカットのサファイアやルビーをあしらった『バングル』(1954-55年)は、ブルガリを象徴する赤と青のコントラストを礼讃している。その丸みを帯びたカボションカットの造形が、パンテオンの構造を思わせる点でも注目される。

続く第2章「色彩の象徴性」にて目立つのが、「セブン・ワンダーズ」(7つの不思議)と呼ばれる特別な 『ネックレス』(1961年)だ。イタリアの女優モニカ・ヴィッティなどの著名人に愛用されたことで知られ、ジュエリーの色彩美を示す傑作として名高い。そのほかでは、エリザベス・ テイラーがパーティーで身につけたことで脚光を浴びた『ネックレス』(1962年頃)や、フランス語で「震える」を意味し、繊細な花をルビーで象った『「アン・トランブラン」ブローチ』なども見どころといえる。---fadeinPager---

ブルガリを代表するモチーフのひとつ、蛇(セルペンティ)に込められた意味 

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『コンバーチブル・ソートワール=ブレスレット』 ゴールド、アメシスト、ターコイズ、シトリン、ルビー、エメラルド、ダイヤモンド 1969年頃 ブルガリ・ヘリテージ・コレクション 『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』 国立新美術館 2025年 展示風景 Photo:harold

蛇(セルペンティ)を象ったジュエリーの数々にも注目したい。古代ローマにおいて知恵と生命力の象徴とされた蛇は、ブルガリを代表するモチーフのひとつ。色とりどりの蛇の鱗は畏怖を呼び起こすのではなく、それらの色に宿る力強さによって、身につける人にエネルギーを授けるという。ゴールドやグリーンエナメル、ダイヤモンドで彩られた『「セルペンティ」ブレスレットウォッチ』を前にすると、妖艶な輝きに心を奪われて、思わず時を忘れてしまう。

展覧会のグランドフィナーレを飾る唯一無二の傑作、『コンバーチブル・ソート ワール=ブレスレット』(1969年頃)に何よりも強く魅せられる。アメシストやターコイズ、ルビーなど多くの色石が用いられたこのジュエリーは、ブルガリの色彩への情熱を華やかに体現。それだけでなくエメラルドの裏にエナメルの細工が施されたり、ネックレスからブレスレットに変形できるなど、メゾンが受け継いできたクラフツマンシップが結実している。

誰も体験したことのない、新次元の会場デザインにも注目!

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森万里子『Onogoro Stone Ⅲ』 『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』 国立新美術館 2025年 展示風景

古代のカラカラ浴場のモザイクのパターンと東京のイチョウの葉の形にインスピレーションを得た、かつて誰も見たことのないような会場のデザインも心に刻みたい。これはブルガリと、妹島和世と西沢立衛が主宰する建築家ユニット「SANAA」、イタリアのデザインユニット「フォルマファンタズマ」が協働して手掛けたもので、曲線的なフォルムや洗練された半透明の素材を通して、ジュエリーの輝きや光が折り重なって余韻を響かせるような効果をもたらしている。

ララ・ファヴァレット、森万里子、中山晃子の3名のアーティストによる作品も、ジュエリーの放つ色彩との対話を生み出している。森万里子の『Onogoro Stone Ⅲ』とは、意外にも古事記の創造神話に着想を得た作品で、未来的な素材と霊性を融合させつつ、結晶構造を彫刻のスケールへと拡張させ、知覚を揺さぶるような空間を築いている。ブルガリのジュエリーを基盤に、アート、デザイン、建築が響き合う『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』を、祝祭のように心ゆくまで愉しみたい。

『ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧』



開催期間:開催中〜2025年12月15日(日)
開催場所:国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10時〜18時 ※毎週金、土は20時まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
観覧料:一般 ¥2,300
※本展は日時指定券を導入。詳しい情報はホームページ等を参照。
www.bulgari.com

はろるど

●アートライター / ブロガー
千葉県在住。WEBメディアを中心に、アート系のコラムや展覧会のレポートを執筆。日々、美術館や博物館に足を運びながら、作品との出会いや発見をSNSにて発信している。趣味はアートや音楽鑑賞、軽いジョギング。そしてお酒を楽しむこと。