ご無沙汰しております。エシカル・シューズデザイナーの勝川永一です。
「東京古靴日和」13回目のコラムですが、投稿に少し間が空いてしまいました。楽しみにして頂いた読者の皆様には申し訳なく思っております。
昨年11月にB Corp認証を取得したのですが、そちらの取り組みで時間的に余裕がありませんでした。そのプロセスにおいて、自然環境負荷低減という意味で改めて靴修理の意義を再確認することが出来ました。こちらでの情報発信も、出来るだけ投稿していきたいと思っています。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
さて最近、私が運営する靴修理店、The Shoe of Life(シューオブライフ)では、スニーカーの修理が増えています。メーカー自身がインフォメーションしているように、スニーカーの耐用年数は3年~5年ほどとなっています。
その理由は、合成素材の部分が劣化してしまうからです。合成素材とは、人工的に作られた素材のことを指します。自然に存在する素材とは異なり、人間の技術によってさまざまな特性を持つようにデザインされています。合成繊維は有用な機能性をもつ反面、天然素材よりも耐用年数が短いことは否めません。
詳細に説明すると、合成繊維はポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなど石油を原料としたものが一般的です。合成樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂などがあり、合成ゴムはSBR、BR、CRなど様々な種類があります。合成皮革は、PVC、PUなどです。
私も大好きで、若かりし頃から愛用しているnew balance NB (ニューバランス)は構造上、修理がしやすく、部分的に耐用年数が長い天然素材が使われているモデルも多く、スニーカーの中でも靴修理に適しています。その理由から、当店ではニューバランスの修理をおすすめしています。

前置きが長くなりましたが、最近多くのご依頼を頂くニューバランスの修理をいくつかご紹介します。
まず、いわゆるリフレクターといわれる部分ですね。この部分は合成繊維のため、本革の本体よりも早く劣化します。そこで当店では、耐用年数が長い天然皮革で修理をしています。ロゴは消えてしまいますが、天然皮革の素材感で高級感が出ます。この合成素材を耐用年数の長い天然皮革にすることで、また長く履いて頂けます。

仕上がりはいかがでしょうか。これでまた一足、廃棄を回避することが出来ました。一足の靴修理が少なからず自然環境負荷低減につながりますので、出来るだけ多くの靴を修理したいと思っています。

そして、こちらのパーツも修理のご依頼が多い箇所です。いわゆるプラスチック・カウンターパーツと呼ばれる部分で、このパーツも当店では、このように短期的な劣化をしない天然皮革で修理をしています。
このパーツを交換するには、一度ソールを剥がす必要があり、なかなか手間がかかり、気を遣う修理です。この合成素材を耐用年数の長い天然皮革にすることで、また長く履けるようになります。この場所は歩くたびにカカトがぶつかったり、こすれたりする場所なので、厚みのある天然皮革にリメイク修理すると、同じような劣化は起こらず、安心して長く履けるようになります。

仕上がりはいかがでしょうか。今回は、あえて本体の色と合わせた本革で修理しました。ある意味、高級感が出ておすすめできる仕上がりかと思います。
今回は、修理がし易く、修理することで長く履いていけるニューバランスの2つの修理事例をご紹介しました。ご自身の靴が快適に治るだけでなく、少なからず自然環境負荷低減につながります。私としては、その様な理由も大事な目的の一つとして、一足でも多くの靴を修理していきたいと考えています。
ニューバランスのお修理は、ぜひ私の運営する靴修理店、The Shoe of Lifeにご相談ください。

エシカル・シューズデザイナー
大学卒業後に国内靴メーカーを経て渡英し、英国ノーザンプトンのトレシャム・インスティチュートで靴づくりを学び、PAUL HARNDENに師事。2007年、修理職人として働きながら自身のブランドH.KATSUAKWAを設立、国内外の主要セレクトショップで展開。また著名ブランドとのコラボレーションも多数手がける。2010年に靴修理店「The Shoe of Life」を開業し、累計6万足以上を修理。2016年、作品「Return to the soil」が英国ノーザンプトン美術館に永久収蔵。2024年、国内靴ブランドとして初のB Corp認証を取得し、靴を起点にエシカルで持続可能なデザインを探求している。
大学卒業後に国内靴メーカーを経て渡英し、英国ノーザンプトンのトレシャム・インスティチュートで靴づくりを学び、PAUL HARNDENに師事。2007年、修理職人として働きながら自身のブランドH.KATSUAKWAを設立、国内外の主要セレクトショップで展開。また著名ブランドとのコラボレーションも多数手がける。2010年に靴修理店「The Shoe of Life」を開業し、累計6万足以上を修理。2016年、作品「Return to the soil」が英国ノーザンプトン美術館に永久収蔵。2024年、国内靴ブランドとして初のB Corp認証を取得し、靴を起点にエシカルで持続可能なデザインを探求している。