工業デザイナーの中森大樹と、建築家の海老塚啓太、桝永絵理子からなるデザインチーム、アアティズモ。2022年からミラノサローネの35歳以下のデザイナーが出展できる「サテリテ」に出展するなど、いま注目される若手デザイナーだ。
中森はデザインチームのタクラムに、海老塚はマルアーキテクチャにも所属しながら活動している。15年のレクサスデザインアワードに出展者としてふたりが選ばれ、そこで意気投合したことから始まった。海老塚はこう語る。
「ミラノでのレクサスの展示準備の合間に、中森と一緒に古い教会を見に行ったりしました。そこで好きなものや、その見方に共感して。一方で、桝永とは大学院が同じだったので、彼女も誘って16年から3人で活動し始めました」
彼らが目指すのは、建築、デザイン、アートなど分野を超えて、物事の根源的な価値を探求することだという。かつてレオナルド・ダ・ヴィンチが絵画から戦車、橋まで生み出したように、現代では異なるものに捉えられがちなアートとテクノロジーの分野を近づけるようなものづくりをしたいと海老塚はいう。
「チーム名の由来は、Art and Technologyの頭文字『AAT』と、『〜主義』を示すイタリア語の接尾辞『-ismo』を組み合わせた造語です」
プロジェクトを進める際には、まず3人がそれぞれアイデアを持ち寄り、議論することから始まる。建築家がプロダクトを考えたり、その逆も然りということだ。一緒に考えることで、より柔軟なアイデアが生まれる。
プロダクトと建築とでは、ディテールへの解像度が異なる。建築ではなかなか難しい実寸の試作品も、プロダクトであれば自分でつくりやすい。そんな姿勢は、エンジニアリングを得意とする中森から影響を受けたと桝永は言う。
「プロダクトの視点を知って、素材に対する意識が変わりました。以前は決まったものから素材を選ぶことが多かったのですが、最近では素材そのものを自分たちでつくることも増えました」
今年9月に竣工する「ハニヤスの家」は、まさに彼らの素材実験が活かされている。陶芸家である桝永の両親と海老塚・桝永の夫婦が暮らす家で、築50年以上の木造のリノベーションだ。建物の一部に敷地の土・陶芸の土・金属粉などを用いたオリジナルの土壁を左官で仕上げる。
「敷地の近くには横穴の洞窟があったり古代からの歴史を感じる場所。父がここで陶芸をし、私たちもここで設計をするので、生活と創作が一体となった古代の集落のような空間にしたいと考えました。耐震補強を兼ねて、建物の四隅に洞窟のような個室を設け、ここを左官で仕上げます」と桝永。
素材から考えた土壁は、触感や表情も独特なものになるだろう。プロダクトの分野の解像度が、建築にも活かされている一方、プロダクトも建築から影響を受けているようだ。
「プロダクトは、いい意味でも悪い意味でも、便利で見た目がよければ、深いコンセプトがなくても成立してしまうことがある。僕は建築設計のコンセプトメイキングに興味があるので、なぜ必要なのか、根源から問い直すようなものをつくっていきたいですね」と中森は語る。
今回ミラノで発表した『シード』は、人間や動物についていく種子のように自在に運べるというコンセプトだ。壁に掛けるだけでなく、手にして持ち歩いたり、プロダクトそのものだけでなく空間でどのような見え方、存在になるかを意識している。それは自分も建築をつくるようになった影響が大きいと、中森は言う。
3人それぞれの分野があるからこそ見えてくるよさがある。しかし、建築やプロダクトといった境界なくものづくりしていた先人たちの姿こそ、彼らが目指す場所なのだろう。
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PERSONAL QUESTIONS
よく聴いている音楽は?
最近よく聴いているのはキット・セバスチャンというトルコ出身のシンガーとイギリス・フランス出身のミュージシャンのデュオです。中東的な雰囲気のサウンドが混ざり合ったレトロでポップな曲調にはまっています。(中森)
いまの職業でなければなにをしている?
高校生の頃に料理人か建築家を目指したいと思いました。料理本を読んではつくってみたり、レシピを考えるのが好きでしたが、自分は味よりも見た目や料理の断面が好きだということに気が付いて大学で建築を学ぶ進路に転換しました。(桝永)
犬派?猫派?
犬派です。10歳頃からずっと実家でも犬を飼っていたし、今も3歳になるミニチュアブルテリアを飼っています。毎日一緒に寝ているほどで、とてもかわいいです。猫もいいのですがちょっとアレルギーです。(海老塚)
いま注⽬したい各界のクリエイターたちを紹介。新たな時代を切り拓くクリエイションと、その背景を紐解く。
