【ゴルフ界のテスラ】AI搭載で自動運転! バッグ運びからスコア分析まで、次世代のゴルフトロリーが機能充実

  • 文:山川真智子
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ベルギー

ゴルフでコースを回る際、日本ではカートに乗って移動するのが主流だが、海外では歩いてラウンドする人も多いという。その際キャディバッグを運ぶためには、伝統的な手引きトロリーが使用されてきたが、近年は電動を使うゴルファーも増えている。GPS やリモコンを備えた製品が市場を賑わしているが、さらにその上を行き、操作なしでキャディのようにお供してくれる、自律型 AI搭載トロリーが登場した。

着想はテスラの自動運転! 勝手に進むトロリー

世界初のスマート自動運転ゴルフトロリー「iXi」は、人工知能(AI)ソフトウェアを活用してコースを自律走行。カメラとマイクを内蔵し、ジェスチャーや音声コマンドでのコントロールを可能にしている。開発したのはベルギーのソフトウェア企業、ボトロニクスだ。ロボットに反復的で退屈なタスクをさせることで、人間の生活を有意義で充実したものにするというのが同社のビジョンで、「iXi」はまさにそれを具現化したものと言える。開発の出発点は、共同創設者のエリック・ピローの体験だ。2021 年にテスラ車の自動運転でゴルフコースから帰宅する途中、「ゴルフでも同じことができないはずはない」と考えたという。そこでこの発想をかたちにするため、市場調査、資金調達、パートナー探しを経てボトロニクス社を設立。そのようにしてエンジニアチームを結成し、「iXi」の開発に取り組んだ。

もはやキャディ不要…AI搭載で機能満載

「iXi」は、GPSと事前に搭載された4万以上のゴルフコースの地図をもとに、移動経路を計画する。ユーザーが手を見せると、通路やフェアウェイに沿って後を追い、ショットを打ち終わるまで止まって待機。搭載されたカメラでユーザーがバッグからパターを取り出すのを認識すると、自動的にカップ(ホール)のある方向に動き出す。自律移動するだけでなく、「iXi」は人間のキャディのような役割も果たす。ハンドル部分にはタッチスクリーンが付いており、ユーザーのスタイルや普段の飛距離に基づいて、使用するクラブのアドバイスを提供。さらに各ホールの規定打数、グリーンの詳細に加え、パフォーマンスを追跡・分析するデジタルスコアカードも表示する。「iXi」アプリを使えば、仮想マップでラウンドの再現
を行うことや、撮影した映像や取得したパフォーマンスデータなどを他者と共有することも可能だという。

トロリー本来の機能も素晴らしく、デザインを担当したフューチャーウェイブ社のクリエイティブ・ディレクター、ヨアキム・フロメントは、軽量で頑丈なアルミフレーム、最大25度の傾斜地でも走行できる安定性、ワンクリックで折り畳み・展開ができるシステムも、ユーザーにとっての利点になると説明している。

量産を本格化。ユーザー体験の向上を目指す

開発チームは「iXi」のコンセプトを、CES2025(世界最大のテクノロジー見本市)とPGAショー2025(ゴルフ界最大の見本市)で発表。クラウドファンディングを成功させ、現在はプロトタイプを量産モデルへと発展させる作業を進めている。すでに注文も受け付けており、2026 年初頭の納品を見込んでいる。価格は5385ドル(約80万円)となっている。自律移動、コンパクト設計、デジタル機能にスタイリッシュなデザインが組み合わさった「iXi」は、プレーする楽しさをさらに向上させる個人用キャディとして注目されている。アップダウンの激しい日本のゴルフ場では普及のハードルは現状高そうだが、機会があればぜひ試してみたいAI ガジェットだ。

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