
大丸と松坂屋、ふたつの百貨店がショッピングバッグと包装紙を同時にリニューアルした。大丸は35年ぶり、松坂屋は23年ぶりとなる取り組みだ。モチーフに採用された「百様図(ひゃくようず)」は、両百貨店が掲げる価値観を示す言葉「百様」をかたちにしたビジュアルアイデンティティ(VI)として、日本デザインセンターの三澤遥が手掛けた。
「大丸と松坂屋で使われてきたシンボルマークを元に、伝統をつないでいこうという思いでデザインしました」と三澤は話す。大丸はピーコックグリーン、松坂屋はロイヤルブルーをベースとし、伝統的に用いられているそれぞれのロゴから大丸は丸を、松坂屋は井桁の紋から四角を抽出して柄を構成している。
「色紙に丸と四角の穴を開けて、重ねることで模様をつくりました。単純なかたちと、誰もが知っている紙。ありふれたものの組み合わせで、どういうことができるかということを探り、紙に穴を開ければ誰もができる遊びの中から、“百様”のあり方を浮かび上がらせようと試行錯誤しました」と言う通り、模様は穴を開けた紙を何度も動かして、実際に手を動かしながらつくりあげたもの。紙の質感や紙同士が重なる影が立体的に見え、平面的な紙袋に現れた奥行きのある構造が特徴的だ。
「大丸と松坂屋を兄弟姉妹のような関係と捉えてみました。どこか似ているところもあるけれど個性が違うように、百様図も共通のかたちから構成されていますが、柄や色の個性が豊かでさまざまな表情をしています。そうした互いの存在や距離感を紙袋などの包材の関係性でも成立させることができないだろうかと考えました」
歴史を踏まえ、色とかたちを幾重にも重ねたデザインが新たな定番となって、次の伝統を生み出してゆくだろう。

大丸松坂屋百貨店VI「百様図」
www.daimaru-matsuzakaya.com/vi※この記事はPen 2025年10月号より再編集した記事です。