「大人の名品図鑑」サンダル編 #1
夏の装いに季節感と軽やかさを添えるのが“サンダル”だ。素足で履けば開放感を楽しめ、ソックスと合わせれば個性的な足元を演出できる。さらに近年は、スニーカー感覚で履けるスポーツサンダルも人気だ。今回は、そんなサンダルの中から3つの名品にスポットを当てる。ポットキャスト版を聴く(Spotify/Apple)
サンダルは、実に壮大な歴史をもつ履物だ。アメリカ・オレゴン大学の自然史・歴史博物館には、1938年にオレゴン州中部のフォートロック洞窟で発見されたサンダルが所蔵されている。いまから1万500年〜9300年前のものと推定され、ヨモギの仲間であるセージブラシの樹皮で編まれたそれは、現存する最古の履物とされている。
また、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの骨格を比べると、後者のつま先の骨が細いことがわかっている。これは履物が足を支えていた証拠と考えられ、人類最初の“シューズ”は、足裏を簡素に保護できるサンダルに近いデザインだったのかもしれない。
古代エジプト時代の王・ツタンカーメンの墓からは、宝石をちりばめた革製のサンダルが出土している。おそらく儀式用であったと考えられるが、この時代すでにサンダルがステータスシンボルとして豪奢に仕立てられていたことが伺える。また、古代ギリシア時代に建設されたパルテノン神殿に祀られる知恵の女神アテナ、その傍らに立つ女神ニケの神像もサンダルを履いている。このように世界の歴史を検証していくと、サンダルの痕跡に出会うことは稀ではない。
サンダルブランドとして知られるドイツのビルケンシュトックも、長い歴史を誇る。創業は1774年。ヨハン・アダム・ビルケンシュトックが教会の公文書に「臣王のシューマイスター」として名を記した年に始まる。その子孫であるコンラート・ビルケンシュトックは1896年、フランクフルトで靴店を開業。解剖学に基づいて設計された中敷き「フットベッド」を自ら開発し、足をしっかりサポートする革新的なインソールを世に送り出した。この革新的なインソールを広めるためにドイツやオーストリアなどを回って、専門的な講習会を開催し、ビルケンシュトックの足の健康に対する考え方や「フットベッド」の普及にも努めた。
コンラートが開発した「フットベッド」の最大の特徴は、土踏まず部分などを立体的に盛り上げた形状にある。前部は高めにつくられており、踏み込みや蹴り出しの際に足指を保護。つま先に近いふくらみは「トゥグリップ」と呼ばれ、指を自然な位置で広げることができる。さらに土踏まずを支えるアーチや踵を包み込む「ヒールカップ」も立体的に設計されており、歩行を安定させるとともに、足の筋肉を鍛える役割を果たす。
「フットベッド」に用いられる素材は、ラテックス(ゴムの木から採れる樹脂)を混合した天然コルク、通気性に優れた2種類の麻、そして柔らかなスエード。これらを重ね合わせた4層構造のソールが、適度な硬さで足裏全体をしなやかに支え、快適な歩行をもたらしてくれる。---fadeinPager---
四季を跨いで愛される、クロッグの定番「ボストン」
長く自社の「フットベッド」インソールを主力としてきたビルケンシュトックが、そのインソールを用いたサンダル「マドリッド」を発売したのは1965年のこと。数年後にはヨーロッパだけでなくアメリカにも輸出され、1970年代にはヒッピーを象徴とする自然回帰のファッションと相性のよい靴として世界的な注目を集めた。以降、世界各都市の名を冠したサンダルやシューズが次々と登場し、多くのモデルが今日までロングセラーを続けている。
今回取り上げる「ボストン」は、1976年に発表されたモデル。つま先から甲全体を覆うクロッグスタイルで、脱ぎ履きが容易なのも特徴だ。アッパーの素材やカラーによって多彩な表情を見せ、カジュアルにもモードにも自在に対応する。また、オープントゥのサンダルに比べて着用期間が長く、春夏は素足で、秋冬はソックスと合わせてと、シーズンを跨いで活躍する。初めての一足としても安心して選べる、ブランドを代表するモデルである。
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ビルケンシュトック・ジャパン カスタマーサービス
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