気鋭の漆職人が出合った、フェラガモのクラフツマンシップあふれるレザーシューズ

  • 写真:嶌村 吉祥丸
  • スタイリング:梶雄太
  • 文:佐野慎悟
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フェラガモは2022年に、当時26歳のマクシミリアン・デイヴィスをクリエイティブ・ディレクターとして抜擢。ジャマイカとトリニダード・トバゴにルーツを持つ新進気鋭のデザイナーが、ブランドに新しい息吹を与えている。アッパーにジップが施されたシューズは、2025年秋冬コレクションの新作。ジップとともに、張り出したコバのディテールもモダン。¥198,000/フェラガモ(フェラガモ・ジャパン)

存続の危機に瀕した漆産業の現状に立ち向かう京都の職人と、フィレンツェで伝統を受け継ぎつつ革新を続けるフェラガモ。ふたつの古都で、ものづくりのフィロソフィが共鳴する。

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京都の漆塗りが模索する、新たな波

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堤 卓也(つつみ・たくや)●堤淺吉漆店 四代目。1978年、京都府生まれ。北海道大学農学部卒業後、精肉業を経て、2004年に家業である堤淺吉漆店を継いだ四代目。シャツ¥132,000、Tシャツ¥71,500、パンツ¥198,000/すべてフェラガモ(フェラガモ・ジャパン)

京都間之町通で曽祖父の代から続く堤淺吉漆店を継ぐ堤卓也は、縄文時代から使われてきた伝統的な漆を次世代につなぐため、さまざまな活動に取り組んでいる。

その堤淺吉漆店では国内外の産地から届くウルシの樹液を精製し塗料として販売してきたが、需要減少と業界規模の縮小は、年々加速度的に進行しているという。

「私が生まれた1970年代は、国内で年間に約500トンの漆が消費されていましたが、店を継いだ2004年にはそれが100トンになり、いまではわずか23トンにまで減少しています。このまま漆がなくなっていくことに対してアクションを起こさずにいたら絶対に後悔すると思い、生産者から消費者まで、小さくても強い輪をつくるための活動を、できることから少しずつ進めています」

そのような活動の中で堤は、趣味とするサーフィンで使うサーフボードに目をつけ、オーストラリアのシェイパーのトム・ウェグナーやプロデューサーShin & Coの青木真とともに漆塗りのウッドボードを製作した。

「漆と木なら、環境負荷の少ない100%ナチュラルなサーフボードになるし、絶対に格好いいものが出来上がると確信していました。私たちはサーフボードの原型と言われるアライアに漆を塗った『URUSHI ALAIA』を完成させ、さらにその制作風景を自主制作映画としてまとめて海外の映画祭にも出品しました」

『BEYOND TRADITION』と名付けられ、日本の漆産業の現状と、美しい海への思いを伝えたこの映画は、フロリダ・サーフ・フィルム・フェスティバルにおいて最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞。その後イギリスやカナダなどでも上映された。革新的なアイデアによって、世界に漆の魅力と可能性をアピールすることに成功した堤だが、彼の目標はあくまで、産業全体の底上げと活性化にある。植樹、若い職人の育成、雇用の創出など、健全でサステナブルなサプライチェーンを築き上げるための地道な活動にも力を注ぐ。

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左:曽祖父の代から使われている堤淺吉漆店の工房で、漆の色みの確認を行う堤。 右:艶、粘り気、乾きの速さなど特性が異なる8種類ほどの漆を調合して、要望に沿った漆をつくる。季節やその日の気候によっても、精製方法や調合を細かく変えているという。

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サーフボードシェイパーの松田ホドリゴが削り出した木製サーフボードに、堤淺吉漆店で漆塗りを施してオーダーメイド。サーフボードの原型と言われるアライアを含め、多くのバリエーションが揃う。 左:フィッシュタイプのショートボードに漆を塗り、アートワークを施したボトム。 右:上写真のボードのデッキ。漆の艶やかな表情が感じられる。
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フェラガモのメンズシューズの最高峰に位置づけられる「トラメッザ」ラインの一足を眺める堤。
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ミッドソールとしてコルクの代わりにレザーを用いることで、足馴染みのよさを実現。「履き心地のよさに驚きました」と、実際に足を通した堤は語る。

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フィレンツェの靴職人が模索した、新たな道

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サルヴァトーレ・フェラガモは9歳の時に独学で初めての靴をつくり、妹にプレゼントしたという逸話を持つ。まさに天性の靴職人。

故郷・京都の伝統産業を心から愛し、クリエイティビティの力によって次世代へつないでいこうとする堤の感性は、いまから約100年前にブランドを興し、イタリアのものづくりの素晴らしさを世界に知らしめた、サルヴァトーレ・フェラガモのフィロソフィにも通じる。

16歳でアメリカへと渡り、南カリフォルニア大学で解剖学を修めたサルヴァトーレは、美しさだけではなく、足を傷めない快適な靴づくりを追求した。やがてマリリン・モンロー、イングリッド・バーグマン、オードリー・ヘップバーンなど、数々のハリウッドスターたちを魅了し、“スターの靴職人”と呼ばれるようになった。1927年には故郷のイタリアへと帰国して、古都フィレンツェにてブランドを創設する。47年には透明のナイロン糸を用いた「インビジブル・サンダル」で、ファッション界のオスカーとも呼ばれるニーマン・マーカス賞を受賞。その後もトスカーナの伝統的なクラフツマンシップに革新的なアイデアを掛け合わせ、数々の名作シューズとともに360以上の特許を取得したサルヴァトーレは、現代の靴づくりの礎を築いた。

彼の死後は妻のワンダがビジネスを継承。のちに6人のこどもたちとともに、シューズに加えてバッグ、プレタポルテ、アイウエア、フレグランス、さらにはホテルやワイナリーまで次々に事業を拡大させた。そしていまなおファミリー経営によるメイド・イン・イタリーのものづくりを続けている。

京都とフィレンツェ。姉妹都市としても知られるふたつの歴史ある街で、代々受け継がれてきたクラフツマンシップを次世代へとつなぎ、産業全体の未来を切り拓いていく先駆者たち。彼らのものづくりは、過去と未来が混ざり合う、“現在”という瞬間を鮮やかに体現している。

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右:フェラガモが誇るイタリア・フィレンツェのファクトリーで、職人がトラメッザのシューズのソールにコバを取り付ける。 左:ベテランとともに若い職人たちも数多く働く。古くから皮革産業が盛んな街で培われた技術やノウハウは、次世代へと継承される。photo: Naoya Toita
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フィレンツェの伝統的な職人技術により、約300の異なる工程と、6 時間以上の手作業を経て製作される トラメッザのシューズ は、グッドイヤー・ウェルト製法をベースとしながら、ミッドソールにしなやかなレザーを用いたオリジナル製法でつくられる。数回履くとレザーのレイヤーが変形し、足の形状を記憶。堅牢なつくりながら、一枚革で仕立てた流線形のフォルムが、フェラガモらしいエレガンスを体現する。¥209,000/フェラガモ(フェラガモ・ジャパン)

 

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フェラガモ ISETAN メンズポップアップストア

会期:9月3日~9月16日
会場:伊勢丹新宿店メンズ館1階プロモーション
(東京都新宿区新宿3-14-1)
営業時間:10時〜20時
www.ferragamo.com/shop

 

フェラガモ・ジャパン

TEL:0120-202-170 
www.ferragamo.com
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