ローマの歴史的建造物・カステル・サンタンジェロを舞台に、ドルチェ&ガッバーナが7月15日、最新のアルタ サルトリア コレクションを披露した。聖職者の装束からインスピレーションを得た特別なコレクションは、“聖なるファッションショー”と呼ぶにふさわしい壮麗なスペクタクルとなった。

会場となったカステル・サンタンジェロは、単なる歴史的建造物にとどまらない。紀元123年、皇帝ハドリアヌスが自身の霊廟として建設を命じたこの建物は、その後のローマ史において霊廟、要塞、教皇の邸宅と、さまざまな役割を担ってきた。
中でも象徴的なのが、6世紀末に起きたとされる奇跡の逸話だ。疫病に苦しむローマで、教皇グレゴリウス1世が赦しを求めて行進していた際、大天使ミカエルが天に剣を収める姿を現したという。この出来事が「聖天使城(カステル・サンタンジェロ)」という神聖な名の由来とされている。さらに17世紀、バロック美術の巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニとその弟子たちが、建物へと続くエリア橋に10体の天使像を彫刻。それぞれがキリスト受難の象徴を携え、橋全体を信仰の巡礼路へと昇華させている。
今回のコレクションの核にあるのは、何千年ものあいだ教会が育んできた美学への深い敬意だ。ドルチェ&ガッバーナは、教皇や大司教、枢機卿といった聖職者たちの荘厳な装束に着目。その装いには、時を超えた美と規律が宿っている。
ティツィアーノ、ラファエロ、ミケランジェロ、ベルニーニといったルネサンスやバロックの巨匠たちが描いた祭服は、霊性と美の究極的融合を体現するものだった。その精神は、現代においても、フェデリコ・フェリーニの映画やパオロ・ソレンティーノの『ヤング・ポープ』、エドワード・ベルガーの『教皇選挙』といった映像作品に受け継がれている。式典ごとに異なる厳格なプロトコルに従いつつも、祭服にはイタリアが世界に誇る職人技「ファット・ア・マーノ(手仕事)」の伝統と精緻な技巧が宿る。一針一針に込められた技巧が、神聖さと美しさを両立させているのだ。
興味深いのは、歴代の教皇たちが新たな“聖なるファッションショー”を幕開けするたび、自身の美意識を装束の細部に織り込んできた点である。その伝統と精神は、今回のドルチェ&ガッバーナのコレクションにも通底している。
カステル・サンタンジェロという歴史の証人を前に披露されたこのショーは、単なるファッションの枠を超えた文化的体験となった。2000年にわたって継承されてきた美の系譜と、現代のクリエイションが交差した瞬間——それは、永遠なるものと刹那の美が出会う、まさに神聖な時間であった。




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