喜多川歌麿や北斎の“春画”150点、新宿・歌舞伎町で異例の展示が話題

  • 文:久保寺潤子
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喜多川歌麿『願ひの糸ぐち』より部分 大判錦絵 寛政11(1799)年 浦上蒼穹堂蔵

『北斎漫画』の世界的コレクターにして春画のコレクターでもある古美術商の浦上満のコレクションから、江戸時代に制作された約150点の春画を展示する『新宿歌舞伎町春画展―文化でつむぐ「わ」のひととき。』が新宿・歌舞伎町で9月30日まで開催中だ。

今回展示される春画は、浦上蒼穹堂代表・浦上満のコレクションから、第一会場、第二会場合わせて約150点を一挙公開。浦上のコレクションは2013年、ロンドンの大英博物館で開催された『春画 日本美術の性とたのしみ』展にも出展され、大盛況を収めた。その後15年に東京の永青文庫で開催された日本初の「春画展」は3カ月間で約21万人を動員し、話題を呼んだ。

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会場に一歩足を踏み入れると、江戸の世界へタイムスリップ。

そして25年夏、会場となったのは「新宿歌舞伎町能舞台」だ。1941年に「中島新宿能舞台」として設立されたこの場所は2022年にSmappa!Groupが引き継ぎ、「新宿歌舞伎町能舞台」と改名。観世流能楽師・中島志津雄による謡・仕舞の稽古をはじめ、能楽や日本舞踊、落語や朗読といった伝統芸能の上演や文化観光コンテンツを国内外に発信している。会場のアートディレクションを務めるのはChim↑Pom from Smappa! Groupの林靖高。江戸時代に「笑い絵」「わ印」と呼ばれ、笑い合いながら楽しまれていた春画のおおらかな世界観を表現すべく、会場にはぐるりと輪になって鑑賞できる舞台上の演出がなされている。

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能舞台へは靴を脱いで、座りながらゆっくりと鑑賞できる。

春画は浮世絵の一ジャンルだが、当時「春画を描かなかった浮世絵師はいない」と言われるほど、ポピュラーなものだった。浮世絵のパイオニアと言われる菱川師宣、天才絵師・喜多川歌麿、海外の画家にも影響を与えた葛飾北斎を筆頭に、鈴木春信、歌川国芳など錚々たる絵師たちが技とユーモアを存分に注ぎ込んだ春画は、庶民の贅沢な娯楽だったといえるだろう。江戸幕府から禁制品とされたことを逆手に取った絵師たちが描いた春画が、ジェンダーや国籍、職業を超えて欲望と幻想が混じり合う現代の歌舞伎町で花開く。

会期中は映画鑑賞&トークイベント「春画ナイト!!」や笑福亭羽光・茶光による落語イベント「春の噺」、上野千鶴子&鈴木涼美によるトークイベント「春画とフェミニズム」、歌舞伎町の地形の秘密を探る「スリバチ散歩ツアー」なども開催される。江戸の庶民文化と現代をつなぐ、春画の奥深い世界を堪能できるだろう。

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新宿歌舞伎町能舞台から徒歩数分の場所にある第二会場にはグッズショップもあるので、こちらもぜひ足を運んでほしい。

『新宿歌舞伎町春画展―文化でつむぐ「わ」のひととき。』

開催期間:開催中〜2025年9月30日(火) 
開催場所:
第一会場 新宿歌舞伎町能舞台
東京都新宿区歌舞伎町2-9-18 ライオンズプラザ新宿2F

第二会場 歌舞伎町ソシアルビル9F
東京都新宿区歌舞伎町1-2-15

開館時間:11時〜21時 ※土日祝は10時〜21時、入場は閉館時間の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火曜休)
入場料:一般¥2,200

※チケットは事前予約制。オンラインサイトを参照。

https://artsticker.app/events/78839