SUVもウカウカしていられない? アウディの底力を感じる「A5アバント」の全方位的な仕上がり

  • 文:小川フミオ
  • 写真:アウディジャパン
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アウディジャパンが2025年2月に「A5」を発売。車型はセダンとアバント(ステーションワゴン)の2タイプ。伝統的ともいえる布陣だが、最新のプラットフォームを活かした走りは出色だ。

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今回「A5アバント」には110kWの前輪駆動版と150kWのクワトロ(写真)が用意される。

今回乗ったのは「A5アバントTFSIクワトロ 150kW Sライン」(以下・A5アバント)。A5は従来のA4に代わる新車名で、アバントは1982年いらいステーションワゴンモデルにアウディが与えた独自の呼称(最初は77年にアウディ100のハッチバックに使われた)だ。

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ボディの凹凸を極力減らし「空力デザイン」に先鞭をつけた82年の「100アバント」。(写真:Audi)

空力という機能をデザインに採り入れた先達は……。82年の「アウディ100アバント」なのか、同年にウベ・バーンセン(Uwe Bahnsen)がデザイン部門を率いていた欧州フォードが送り出した「シエラ」なのか、多少の意見は分かれる。

Ford_Sierra.jpgエアロルックなどと呼ばれ大きな話題を呼んだ欧州フォードの「シエラ」。(写真:Newspress)

82年のアウディ100が大きな話題を呼んだのは、車体をまわりの空気をスムーズに後方へと流すための”フラッシュサーフェス”なる手法の採用による。サイドウインドウも湾曲させたため、窓枠から外れないようにガイドピンがつけられていた。

並行して、アウディは高性能を追求。フルタイム4WDシステム搭載の「クワトロ」を80年に発表し、おなじ年にラリーに参戦している。81年には世界ラリー選手権で優勝。続けて3回、選手権を獲得した。 

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ラリー選手権で向かうところ敵なしというかんじだったスポーツクワトロS1(85年)。(写真:Audi)

アウディ、特にアウディジャパンでは、ここ数年、電動化技術とサステナビリティ活動への応援に力を入れてきた。

そのせいで、というのもなんだけれど、従来のAシリーズ(Aで車名が始まるA3やA4やA6、さらにSやRSで車名が始まるS3やRS3を含めたエンジン搭載車)は、バッテリー駆動の「e-tron」に少々押されぎみだったような気もする。

さらに、アウディだとQで車名が始まるQ4やQ6は、SUV人気ゆえ、市場では強力な競合だっただろう。

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ステーションワゴン版であるA5アバントだがデザインはスポーティで美しい。

ここで大書したいと思うのは、セダンやアバントの出来のよさだ。最新のA5アバントTFSIクワトロは、すばらしい出来映えだ。先代ともいえるA4も操縦性が高く、乗っていて幸福な気分になれるモデルだった。その上をいく、といってもいい。

全長4835mmの車体を2895mmのホイールベースと組み合わせたパッケージ。ステーションワゴンだが、いかにも荷物がたくさん積めますとアピールするのでなく、スタイリッシュさを重視するのがアウディの独自性。そのコンセプトは不変だ。 

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立体的な造型になったフロントグリルとボディの曲面に合わせたデザインとなったヘッドランプなどが特徴的。(写真:筆者)

ロングノーズとショートデッキが組み合わされたプロポーションと、「立体的で彫りの深い、エッジを減らした連続的な面構成による力強い抑揚を持つ」とされるボディが、アウディとすぐわかる一方で、新しさが感じられる外観上の特徴だ。

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物理的スイッチよりタッチスイッチが増えたのがA5シリーズの特徴。(写真:筆者)

スタイリッシュなデザインだけが特徴ではない。エルゴノミクスと機能性の面で「MMIパノラマディスプレイ」の採用が特筆点だ。11.9インチ表示スクリーンの「Audiバーチャルコックピットプラス」と、14.5インチの「MMIタッチディスプレイ」、さらに望めば、助手席用の10.9インチ「MMIパッセンジャーディスプレイ」が搭載できる。

搭載アプリのウィジェットが画面にずらりと並ぶさまは壮観。通信機能も備えているし、会話型のコマンドシステムは、あいにく日本では外部接続式(コールセンター)ではないものの、聴き取り性能が高く、ウインドウを開けるとかナビのコマンドを入れるとか、使い勝手がよい。

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湾曲した大きいスクリーンにさまざまなウィジェットが並ぶ。サードパーティが開発したアプリは使えない。

走行性能も高い。2リッター4気筒エンジンの出力は、車名にあるとおり150kW。最大トルクは340Nm。アクセルペダルを踏み込んでいくと、さっと上の回転域まで上がっていく。

最高出力の発生回転数が4300rpmから6000rpmと高めに設定されていて、エンジンを回して走ったときの加速感覚は、エンジン車ならでは、と感じられる。 

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写真はスポーティな仕様である「S-line」専用シートで、立体的なダイヤモンドパターンが見た目にも美しい。(写真:筆者)

25年に日本発売された「Q6 e-tron」のように、日本でもバッテリー駆動車に力を入れるアウディだが、エンジン車に手を抜いていない。二者択一でなく、常に選択肢を多めに用意する。それがアウディの底力だろう。

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3人がけの後席は空間的余裕がある。(写真:筆者)

Audi A5 TFSI クアトロ 150kW

全長×全幅×全高:4835×1860×1450mm
ホイールベース:2895mm
車重:1870kg
エンジン:1984cc4気筒 オンデマンド全輪駆動
変速機:7段AT
最高出力:150kW
最大トルク:340Nm
乗車定員:5名
燃費:13.1km@L(wlTC)
価格:681万円
問い合わせ:アウディジャパン
www.audi.co.jp