レオ・レオーニの絵本づくりに迫る! 『スイミー』の習作から体験型コンテンツまで、老若男女が楽しめる絵本の展示が開催中

  • 文&写真:はろるど
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レオ・レオーニ『マシューのゆめ』原画 1991年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family

デザイナーとしても活動し、世界的な絵本作家として知られるレオ・レオーニの絵本の仕事を紹介する展覧会が、東京・渋谷のヒカリエホールにて開かれている。原画はもちろん、絵本の世界へ没入できるコンテンツも目白押しの展示とは?

人気絵本作家として実力の高いレオ・レオーニ

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『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景(ヒカリエ・ホール、2025年)より、レオ・レオーニ 撮影:Massimo Pacifico

オランダ・アムステルダムの近郊に生まれたレオ・レオーニは、幼い頃から画家を志すと絵画の制作を続け、1932年には前衛美術運動である未来派の活動に参加する。大学を卒業した後はイタリアのミラノにてグラフィックデザインの仕事をはじめるものの、差別的な人種法が公布された39年にアメリカへと亡命。グラフィックデザインや広告の世界で頭角を現しつつ、アートディレクターとして活躍した。

レオーニが絵本作家としてデビューしたのは、実に49歳になってからのこと。59年に初の絵本、『あおくんときいろちゃん』を出版すると、およそ年に1冊のペースで絵本を出版し続けていく。61年にはイタリアにて絵画と絵本制作を中心とする生活をスタートさせ、後にトスカーナへと転居し、99年に亡くなるまで約30年近くに渡ってニューヨークと行き来する日々を送った。『スイミー』や『フレデリック』などでは、アメリカで権威のある絵本の賞としてコルデコット賞を受賞。

細部までこだわり抜いた絵本づくりの技法とは?

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『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景(ヒカリエ・ホール、2025年)より、第1章「テクニック(技法)」

日本では小学校の国語の教科書に『スイミー』と『アレクサンダとぜんまいねずみ』が掲載されるなど、計27冊が刊行されるほど人々に親しまれるレオーニの絵本。その絵本には多種多様な紙を使ったコラージュだけでなく、水彩、油彩、クレヨン、また色鉛筆といった画材が取り入れられ、驚くほど多彩なテクニックが用いられている。そこにはグラフィックデザイナーとしての経験だけでなく、後半生になって本格的に取り組んだ画家としての活動も活かされている。

一連の絵本に最も多く登場するテクニックが、紙を切って貼り合わせたりするコラージュだ。レオーニは紙をハサミで切るだけでなく、手でちぎるなどしてコラージュを行い、特に愛したねずみたちはモフモフした毛の感触を出すために、必ず手ちぎりにて表現している。そのほか、こすって模様を写しとるフロッタージュや、版画技法のひとつで、毎回異なる表情を作り出せるモノタイプなどもよく用いたテクニックとして挙げられる。---fadeinPager---

手業が感じられる、『スイミー』の貴重な習作も公開!

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『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景(ヒカリエ・ホール、2025年)より、スイミーの習作

コラージュに用いた紙そのものに対する強いこだわりにも注目したい。色々な紙を集めるのが大好きだったレオーニは、その中でもイタリアで有名なマーブル紙を多くの作品に使用。また模様の付いた既製品の紙だけでは満足しなかったレオーニは、自ら彩色した紙を切ってコラージュを手掛けることもあった。「どのような紙を使っているのだろう…?」と目を凝らしながら、一点一点の原画を味わっていくと意外な発見もあって面白い。

絵本の中で最も知名度が高い『スイミー』の習作も見どころだ。実は『スイミー』の絵本原画は行方不明となっていて、現在スロバキアの国立美術館に所蔵されている原画も、後に再制作した作品だと考えられている。そして今回公開された5点の習作は、レオーニが再び『スイミー』を描いたタイミングで描かれたと推察されるもの。軽やかなタッチと瑞々しい水彩から、レオーニの手の跡をよりダイレクトに感じとれる。

名作絵本の世界観を五感で体感

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『レオ・レオーニの絵本づくり展』展示風景(ヒカリエ・ホール、2025年)より、第3章「レオレオリウム!」 

インタラクティブな作品の制作をベースにするアートユニット、プラプラックス(plaplax)が手掛けた「レオレオリウム!」にて、レオーニの絵本の世界を全身で体感したい。ここでは「レオと石」、「空想の庭」、「絵本の自然採集」、「スイミー・スクロール」などデジタルを含めた多様なコンテンツを展開。見て、聞いて、あるいは体や手を動かしながら、レオーニが生んだ名作絵本の魅力を存分に楽しめる。子どもから大人まで、誰もがワクワクしながら絵本の中へ入り込めるような展示だ。

「空想の庭」では、絵本『ひとあしひとあし』のイメージや、レオーニの手仕事をグラフィック的に分解した映像を360度の円形スクリーンに投影。レオーニのアトリエがあったイタリアのポルチニアーノの風景をベースとしたジオラマとともに、絵本のイメージの源泉や物語が誕生する背景などを見ることができる。そして「スイミー・スクロール!」では、名作『スイミー』の世界が横方向にスクロールされ、海底に降り立ったような視点で動く魚と一緒になって泳いでいるような気持ちも味わえる。

『レオ・レオーニの絵本づくり展』

開催期間:開催中〜2025年8月27日(水)
開催場所:ヒカリエホール
東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F
開館時間:10時〜19時 ※最終入場は18時30分まで
休館日:7/24
入館料:一般 ¥1,800(7月鑑賞券)、¥2,400(8月鑑賞券)
www.bunkamura.co.jp