
ジャン=リュック・ゴダールは、映画という枠組みを解体し、映像と詩と政治を自由に往来した稀有な存在。その晩年の集大成とも言える長編作品『イメージの本』は、まさに彼の頭の中を覗き込む映像詩のよう。新宿・歌舞伎町にて開催中の『感情、表徴、情念 ゴダールの「イメージの本」について』展は、その複雑な思考をスクリーンの外へと表現する試みだ。
会場である王城ビルのフロアを多層的に使い、映像インスタレーションをメインに構成された展示は、訪れた者が自ら空間を移動しながらたどるものとなっている。第1章「リメイク」では、重ねられた布の間を人が往来し、映画における「リメイク」という概念を空間として体感できる。第2章「サン・ペテルスブルグの夜話」では、床に点在するテレビが墓標のように並び、戦争に関する映像が流されている。自然光を多く使った第3章「線路の間の花々は旅の迷い風に揺れて」では、映画と列車の関係性がテーマだ。布と複数のプロジェクターが織りなす揺らぎが、モンテスキューの『法の精神』を可視化する第4章「法の精神」。そして最終章「中央地帯」では、「幸福なアラビア」をテーマに、別れとオマージュの映像がダンスシーンやエンドロールとともに流れ、ゴダールの終わりなき問いを表現している。
幻想的な空間で、ゴダールの思想を紐解く。スイス、ドイツ、フランスなどに続き、最大級の規模で展開される本展で、その表現の奥深さを体感してほしい。


感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本について』展
開催期間:開催中〜8月31日(日)開催場所:王城ビル
東京都新宿区歌舞伎町1-13-2
入館料:一般 ¥2,200
https://godardtokyo.com