ハミルトンを代表する「カーキ」7選! 陸・海・空を制覇する、いま手に入れるべきモデルを厳選

  • 文:並木浩一、富永淳
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ハミルトンは、語り尽くせない多面的な魅力を持つ時計ブランドだ。1892年、アメリカ合衆国ペンシルバニア州ランカスターで創業。最高の精度を要求された鉄道時計で名声を築いた技術の一方で、数々のハリウッドスターらが身につけたデザインの名作も数多い。そのハミルトンの不朽のベストセラー&ロングセラーにして、時計界屈指の大名跡が「カーキ」コレクションである。目移りするラインアップから、象徴的な7本を紹介する。

ハミルトン「カーキ」とは?

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1966年、ベトナム戦争中のアメリカ軍に供給された「GG-W-113」をオリジンとする、現在の「カーキ フィールド メカ」。5分刻みの三角マーカー、シリンジ型の時分針、24時間インデックス、NATOストラップ、マットなケースの仕上げなど、ミッションウォッチの古典からデザインコードを踏襲している。

ハミルトンには熱狂的なコレクターが潰えない世界最初のLEDデジタルウォッチ「ハミルトン パルサー」、エルヴィス・プレスリーの愛用した「ベンチュラ」といった、伝説的モデルが存在する。その中でもひと際、存在感を示すのが「カーキ」である。

「カーキ」は陸・海・空それぞれでの真似のできないストーリーを連ねた、ハミルトンの代表作だ。その原点にあるのは1917年からアメリカ軍に供給され、60年代にはイギリス軍向けにも採用された、ハミルトンの軍用モデル群である。また30年代には既にアメリカの主要航空会社4社の公式時計とされたパイロットウォッチの歴史も、重要なルーツとして挙げられる。ミリタリーウォッチとして広まった知名度は、全地球上をもれなく活動の場所とするミッションウォッチへとステージを上げ、いまに至る。「カーキ」は文化的・歴史的に価値あるアイコンであり、現在進行形の伝説を構成する一本ごとのストーリーを綴る、稀な腕時計である。

1. カーキ フィールド オート

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カーキ フィールド オート/自動巻き、SSケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、カウレザーストラップ、10気圧防水。¥106,700

ミリタリーウォッチのオリジンにインスパイアされながら、テイストは極めて現代的なモデルである。搭載するムーブメントは手巻きではなく高性能の自動巻き「H-10」に換装され、約80時間のロングパワーリザーブを誇る。デイト表示も備えられた。

米国をルーツとしながら腕時計の最先進国に拠点を移した「アメリカンスピリッツ、スイスメイド」のハミルトンらしい、長所を生かし合う掛け合わせが好ましい。ベゼルはポリッシュ仕上げで、サテン仕上げのケースとのコントラストと立体感を強調する。深みのあるブルーのダイヤルはサンレイエフェクトを施しながら、アワーリングにスネイル加工を組み合わせた。凝った平面構成が光を反射して、いままでにないテクスチャーをみせる。

2. カーキ フィールド メカ

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カーキ フィールド メカ/手巻き、SSケース、ケース径38㎜、パワーリザーブ約80時間、NATOストラップ、5気圧防水。¥89,100

引き通しのNATOストラップが最も似合う時計は、このモデル以外にありえないだろう。1960年代にアメリカ軍に供給されたオリジナルモデルのスタイルを忠実に復刻し、一方でスペックは最先端のレベルにバージョンアップしている。傷がつきにくいマット仕上げのケースに、24時間インデックス、大きめのリューズ、蓄光塗料を幅広に塗布したシリンジ型の時分針は、いずれもミリタリーの出自を雄弁に物語る。

ミッションウォッチでありながら風防はサファイアクリスタル製、ロングパワーリザーブの高性能ムーブメント「H-50」を搭載する仕立ては、間違いなくスイス高級腕時計としての存在感を示す。

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3. カーキ ネイビー スキューバ GMT

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カーキ ネイビー スキューバ GMT/自動巻き、ブロンズ×チタンケース、ケース径43㎜、パワーリザーブ約80時間、NATOストラップ、30気圧防水。¥249,700

GMTを搭載した、ハードスペックのダイバーズモデル。ストレートに想定される用途通り、海外に潜りに行くのには絶好の逸品だ。ステンレス・スチール製のモデルも用意されているが、写真は艶やかなブロンズケースのモデルで、逆回転防止ベゼルのインサートはセラミック製。

ミリタリーにつきものの装飾や勲章をモチーフに採用されたブロンズは、頑丈で耐食性を備えた性質の半面、移ろいゆくテクスチャーの経年変化も楽しめる。ブラックの文字盤にライトグリーンの蓄光マーカー、秒針とGMT針の赤い差し色と、カラーコーディネートのセンスが絶妙。ブラックとゴールドのNATOストラップのセットアップも、ブロンズのカラーとマッチする。

4. カーキ ネイビー オープンウォーター

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カーキ ネイビー オープンウォーター/自動巻き、SS(ブラックPVD加工)ケース、ケース径46㎜、パワーリザーブ約80時間、ラバーストラップ、30気圧防水。¥209,000

特徴的なフォルムのリューズプロテクターと波の形状のラバーストラップを備えたスパルタンなダイバーズモデルだ。そもそも「カーキ ネイビー」コレクションのルーツにあるのは、ハミルトンが製作し、米海軍の潜水士に供給されたミッションウォッチである。アーミーだけでなくネイビーの系譜を持つのが、ハミルトンの歴史だ。

第二次世界大戦時に腕時計やマリンクロノメーターなど100万個以上のタイムピースを軍に供給し、5度も「Army-Navy "E" Award」を受賞した。"E" とは"Excellence in Production" =「生産における卓越」の頭文字であり、陸軍・海軍へのサプライヤーを厳選して授与したもの。現代のダイバーズモデルにも、そのエッセンスは継承されている。

5. カーキ フィールド マーフ

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カーキ フィールド マーフ/自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径38㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、10気圧防水。¥152,900

ハミルトンの腕時計と映画の関係は濃密で、プレスリーやジェームス・ディーンが劇中で着用したことはよく知られている。その中でもとびきりのストーリーを持つのが通称「マーフウォッチ」である。「マーフ」とはクリストファー・ノーラン監督のSF映画『インターステラー』(2014)に登場する、主人公の娘の役名。腕時計の秒針がみせた奇妙な動きを、少女時代にモールス信号であると見抜く。

やがて成人した彼女はそれが宇宙空間で行方不明の父からのモールス信号であると気づき、滅亡寸前の地球を救う方程式を解読する。古風なカテドラル針を備えたカスタムメイドのその時計は、熱望に応えて2019年に一般発売されて現在に至る。オリジナルのブラックダイヤルを備えたブレスレット仕様は、38㎜サイズの新作だ。

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6. カーキ フィールド エクスペディション

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カーキ フィールド エクスペディション/自動巻き、SSケース、ケース径37㎜、パワーリザーブ約80時間、シースルーバック、カウレザーストラップ、10気圧防水。¥159,500

フィールドで方位を確認するためのコンパス機能をベゼルに備えたモデル。2023年にコレクションに加わり、41㎜と37㎜ケースの2サイズが用意されている。両方向回転のコンパスベゼルは、世の中にもそう多くはない。時計と太陽の位置で方位を確認する方法は、アウトドアの上級者などにはよく知られている。

時針を太陽の方向に向け、12時との中間が南。コンパスベゼルでその位置を“S”に合わせることで、全方位を一目で認識でき、GPSやスマホのマップが使えない時に役立つ。そうしたシチュエーションを想定したスペック設定のストーリーが、真のミッションウォッチには必要だ。ねじ込み式のリューズを装備し、防水性も高い。

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7. カーキ パイロット パイオニア メカ クロノ

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カーキ パイロット パイオニア メカ クロノ/手巻き、SSケース、ケース径40㎜、パワーリザーブ約60時間、カウレザーストラップ、10気圧防水。¥329,900

ツーレジスターのパイロットクロノグラフ。独特なヴィンテージ感を持つミリタリーアビエーションデザインは、ハミルトンと航空界が紡いだストーリーにつながる。1970年代に英国空軍(RAF)パイロットのために製造されたクロノグラフが、デザインのルーツ。右側が膨らんだ形状のケース、“ボックス型”サファイアクリスタル、グレイン仕上げのブラックダイヤルにホワイトラッカー仕上げの蓄光針。

インデックスのベージュカラーは、かつて使用されていた放射性のラジウム塗料で灼けたヴィンテージを彷彿とさせる。一方、搭載された手巻きムーブメントには最新の技術が駆使され、パワーリザーブも約60時間、バランスホイールにはシリコン製ヒゲゼンマイを装備する。

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並木浩一(桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト)
1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。

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