第106回“彫刻になる絶景の足湯”【小山薫堂の湯道百選】

  • 写真:アレックス・ムートン
  • 文:小山薫堂
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〈神奈川県足柄下郡〉
彫刻の森美術館 森の足湯

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いまや全国各地にある足湯を、美術館として初めて設置したのが箱根にある「彫刻の森美術館」だった。日本屈指の名湯である箱根に存在し、広大な敷地を歩き回って鑑賞する野外美術館……。ここに足湯を設置することは、実に理にかなっている。しかもその足湯が、開館55周年を記念して大きくリニューアルされ、魅力が増したのだ。

リニューアルのポイントはふたつ。まず、これまで彫刻を鑑賞しながら浸かっていた足湯の向きを変更。箱根の山々を借景として、大自然を眺めながら足湯に浸かれるようになった。新しく命名された「森の足湯」という名にふさわしい環境である。もうひとつは、足湯に使用した素材。彫刻でも使われる石に注目し、国内外の異なる産地の石を15種類集めて組み合わせた。大きいもので4トン。なかにはアンモナイトがそのまま埋まっている原石もあるので、色や模様を楽しむことができる。

そして肝心の湯がこれまた文句なしにいい。5本の源泉をブレンドしたナトリウム塩化物泉で温度は42度。心地よい風に吹かれながら絶景の山々を眺めていると、10分とたたないうちに額に汗がにじんでくる。彫刻で心を潤し、足湯で身体を癒やす。

ここに足を浸けたら最後、誰もがその心地よさに動けなくなり、彫刻のようになる。つまりあなたも、彫刻の森美術館の作品のひとつになってしまうのである。

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小田急電鉄の箱根湯本駅からクルマで約20分。1969年に開館した「彫刻の森美術館」は自然と芸術の調和を目指してつくられた、国内最初の野外美術館。約7万㎡の広大な敷地のいたるところにアート作品が配置。 

 

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赤い石は「ロッソガズビーラ」、灰色は「ルナパール」で、どちらもイタリアの御影石を使用。

彫刻の森美術館 森の足湯

住所:神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121
TEL:0460-82-1161
営業時間:9時~17時
定休日:無休
料金:無料(別途、美術館入館料として一般 ¥2,000)
www.hakone-oam.or.jp/others/morinoashiyu

※この記事はPen 2025年8月号より再編集した記事です。