フォトグラファーとしても活躍する、俳優・古屋呂敏の写真展が開催中。モノクロ作品に投影されたその心情とは?

  • 写真・文:石川博也
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モデル、俳優の古屋呂敏。今回はフォトグラファー、映像クリエイターのRobin Furuyaとして写真展を開催した。

モデルや俳優として活躍する古屋呂敏。実はフォトグラファーや映像クリエイターの顔も持ち、Robin Furuyaとしてポートレートの撮影やハイブランドの映像制作なども手がけている。

そんな彼が撮影した作品が並ぶ写真展「MY FOCAL LENGTH」が、東京・西新宿のニコンプラザ東京 THE GALLERYにて6月30日(月)まで開催中だ。その後、7月10日(木)から23日(水)には、大阪・心斎橋のニコンプラザ大阪 THE GALLERYに会場を移し、同様の展示が行われる。

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古屋呂敏/1990年京都府生まれ。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。日本の高校を卒業後、ハワイ州立大学、のちにマサチューセッツ州立大学アマースト校に進学。モデルや俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターとしても活動する。

古屋が写真に興味を持ち始めたのは、ファッション雑誌のレギュラーモデルとして活動していた頃。仕事で関わるフォトグラファーの職人的なところに魅力を感じ、自分も被写体以外の立場でもっとものづくりに携わりたいと思うようになっていった。

そして、自分でも趣味で写真を撮るようになり、プライベートでモデル仲間のポートレートを撮影しているうちに、少しずつ仕事での撮影も増えていく。

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2重になった垂れ幕。揺れ動くことで写真や言葉がゆらぐ仕掛けだ。

写真が好きになった理由について古屋はこう話す。

「被写体になってくれた人が、“呂敏が撮った写真の私、好き”って言ってくれた時に、自分がその人の一番素敵な瞬間を撮れたのかもしれないという思いと、それを見て喜んでくれている姿がたまらなく嬉しかったんですね」

切り取った一瞬に見える美しさが好きだと話す古屋。

「その時の心情を写すことができるところが写真の魅力だと感じます」

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撮影の際は、自分と被写体との距離感に気をつけていると話す古屋。

フォトグラファーとして古屋が大切にしていることは、被写体との距離感だ。

「物理的な距離感もそうですし、空気的な距離感もそう。相手がどの距離感で撮ってほしいのか、どの距離感が一番居心地がいいのか。そこはすごく気をつけて撮影を行っています。積極的に話しかける時もあれば、黙ったまま撮る時もあります。写ってくださる方々の人生を写していると思うので、その方々がありのままでいられることを大事にしたいのです」

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「MY FOCAL LENGTH」の作品。

距離感といえば、今回の写真展「MY FOCAL LENGTH」も、タイトルの通り、焦点距離をテーマにした内容となっている。

「ボク自身の焦点距離を通して、みなさんが見ている世界ってどうなんだろう? なんなんだろう? と考えてもらいたい写真展になっています。自分と向き合いやすく作品に没入できるように、全体をモノクロームに近い暗い世界観にしています」

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写真集「MY FOCAL LENGTH」を手にする古屋。後ろに展示されているのはセルフポートレート作品。

展示作品の中には、古屋が自身を撮影したセルフポートレートもある。

「自分が被写体として撮られる時は、その瞬間の自分の心情を知られることが恥ずかしいと思ってしまいます。本質はあまり見られたくないのでしょうね。だからこそ、今回のセルフポートレートでは、普段自分が見られたくないものをあえて見せるように、包み隠さず撮るようにしました」

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「MY FOCAL LENGTH」のセルフポートレート作品。

展示作品の下にはQRコードが掲示され、古屋自身の声を聴きながら鑑賞できるところも写真展の特徴となっている。まずはそのまま鑑賞し、次は古屋の問いかけに耳を傾け、思考を巡らせながら作品を観ると、より深く展示を楽しむことができるだろう。イヤホンやヘッドホン持参で訪れたい。

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写真集「MY FOCAL LENGTH」¥11,000(ミツバチワークス株式会社)と、今回すべての作品を撮影した「ニコン Zf」。写真集は装丁にもこだわり、インテリアとしても部屋に置きたくなるような一冊が完成した。

また、今回、展覧会と同タイトルの写真集も発売されている。160ページにわたり、全110点の写真作品と、写真に対する古屋の想いや、鑑賞者への問いかけを綴った文章が収録されている。

「ボク自身が今、流れの中にいる瞬間が多いと感じていて。役者としての立ち位置とか、表現できる幅が日々変わっているぐらい、常に現状に満足できず、変化を求めている状態が続いています。だから笑顔の写真は一切ありません。こうした部分も写真集に収録した写真を通して感じてもらえたら嬉しいです」

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写真展「MY FOCAL LENGTH」の会場には「ニコン Zf」のピクチャーコントロールによって表現された、さまざまなトーンのモノクローム作品が並ぶ。古屋が特に気に入っているのは「ディープトーンモノクローム」だ。

陽のバイブスが好きだが、自分自身はどちらかといえば、陰のガソリンで走っていると話す古屋。

「悔しさとか葛藤が原動力になっているタイプで、そういう想いも詰め込まれた写真集になっています」

あらためて今回の写真はすべて古屋自身が撮影したものだ。たとえそれが花であっても人であっても、そこには古屋自身の内面が投影されていると考えていいだろう。写真展ならびに写真集「MY FOCAL LENGTH」から浮かび上がってくるのは、古屋呂敏の今なのだ。

THE GALLERY 企画展

古屋呂敏「MY FOCAL LENGTH」

会場:ニコンプラザ東京 THE GALLERY
会期:2025年6月17日(火)〜6月30日(月)
住所:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階
電話:0570-02-8080
開館時間:10:30〜18:30(最終日は15:00まで)
休館日:日曜

会場:ニコンプラザ大阪 THE GALLERY
会期:2025年7月10日(木)〜7月23日(水)
住所:大阪府大阪市中央区博労町3-5-1 御堂筋グランタワー17階
電話:0570-02-8080
開館時間:10:30〜18:30(最終日は15:00まで)
休館日:日曜

https://nij.nikon.com/activity/exhibition/thegallery/events/2025/20250617_tgt.html

古屋呂敏写真集「MY FOCAL LENGTH」
https://shop.genic-web.com/products/my_focal_length-1