横尾忠則の「連画」の個展からライアン・ガンダーの展覧会まで【今月の展覧会2選】

  • 文:青野尚子(アートライター)
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一枚の記念写真から流れ出る、横尾忠則の「連画」の暗示するもの

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『連画の河を描く』2023年 作家蔵

遠い昔、川のほとりで同級生たちと撮った記念写真。篠山紀信が撮影したこの写真をもとに1994年、横尾忠則は『記憶の鎮魂歌』という大作を描いた。今回の個展にはそれに続く約60点の新作が並ぶ。展覧会タイトルの「連画」は「連歌」から着想を得たもの。川は生と死をつなぐものであり、悠久の時の流れを暗示する。横尾が川の流れに導かれるようにして描いた「連画」は初めて見るはずなのにどこか懐かしい、記憶の川からすくい上げたようなイメージだ。

『横尾忠則 連画の河』

開催期間:~6/22
会場:世田谷美術館
TEL:03-3415-6011
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥1,400
www.setagayaartmuseum.or.jp

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とらえどころのない曖昧さが生む、ライアン・ガンダーの迷宮へ

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『You Complete Me, or I see things you can’t see (A Frogs Tale)』 2025年 Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. photo: Ryan Gander Studio

人間の言葉を話すカエル、読めない時計、仮想の国旗など、とらえどころのなさがかえって見るものを惹きつけるアート。1976年生まれ、イギリスのサフォークを拠点とするライアン・ガンダーの作品だ。彼は自身を「特定の様式を持たないアマチュア哲学者」といい、「アートの目的は触媒として曖昧さを提供すること」だという。今回の個展は大半が日本初公開、この個展のための新作も多数並ぶ。館内のさまざまなスペースに現れる作品が楽しい迷宮に連れていってくれる。

『ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー』

開催期間:5/31~11/30
会場:ポーラ美術館
TEL:0460-84-2111
開館時間:9時~17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:無休
料金:一般¥2,200
www.polamuseum.or.jp

※この記事はPen 2025年7月号より再編集した記事です。