クラシックなフォルクスワーゲン・ビートルをベースにした、砂漠仕様の改造モデル「T-Bug(ティーバグ)」が発表

  • 文:宮田華子
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@designboom - Xのキャプチャ画像

イギリス・ヨークシャーに拠点を置くTwisted Automotive社(以下「Twisted」と表記)が、新たなスペシャルプロジェクトとして、クラシックなフォルクスワーゲン・ビートルをベースにした改造モデル「T-Bug(ティーバグ)」を発表した。T-Bugは、1960~80年代の空冷式ビートルを出発点に、現代の過酷なオフロード地形にも対応するべく完全に再構築されたオフローダーである。

 

本格オフロード仕様。シャーシからサスペンションまで徹底強化

このモデルの最大の特徴は、Twistedが得意とする本格的なオフロードチューニングに基づいて設計されている点にある。まず、元の車体から全ての部品を取り外し、シャーシを密閉・強化。その上に、ロングトラベル仕様のビルシュタイン製サスペンションとEMPI製Bajaホイール、そしてBF Goodrich製の特大オフロードタイヤを組み合わせることで、砂漠や砂丘、岩場などあらゆる地形に対応可能な走破性を実現した。

馬力よりも体験を重視するエンジン

 T-Bugに搭載されるのは、オリジナルの空冷水平対向4気筒エンジンをベースに出力を倍増させた改良版だが、それでもあえて80馬力以下に抑えられている。これは、単にスペック競争を追うのではなく、ドライバーがマシンと一体になり、路面や地形の感触をダイレクトに体感できるよう設計された結果である。「現代の車はドライビング体験から我々を遠ざけている。T-Bugはその感覚を呼び戻す存在だ」と、創業者チャールズ・フォーセット氏は語る。

 


チャールズ・フォーセット氏。

「バハスタイル」の美学

外観は、いわゆる“バハスタイル”を踏襲しており、大きく張り出したフェンダーやリフトアップされた足回りなどが特徴的だ。このスタイルは、メキシコ・バハカリフォルニア半島で行われる過酷なオフロードレース「バハ1000」に由来し、極限の地形に対応するための実用的な改造手法として知られている。T-Bugもその系譜に属し、砂漠での走破性と独自の個性を両立している。

ボディは完全なベアメタル状態からレストアされ、内外装ともにオーナーの希望するカラーで仕上げられる。インテリアは手作業で仕立てられ、タンレザーやアルカンターラなど上質な素材が使用されており、クラシックな雰囲気と現代的な快適性が見事に融合している。デジタルスピードメーターやLEDライトなどの現代的な装備も備え、実用性も高い。

子どもの頃の憧れを現実に――創業者の原点が形に

TwistedはこのT-Bugを単なるレストモッドではなく、「再解釈されたバハバグ」と位置づけている。フォーセット氏が子供時代に姉の部屋に飾られていたバハバグのポスターにインスピレーションを受け、何十年もの歳月を経て実現した夢のプロジェクトだという。「T-Bugは私にとって、過去の憧れを現代の技術で具現化した“砂漠の反逆”です」と語るその言葉からは、確固たる情熱とこだわりが感じられる。

この唯一無二のT-Bugは、ロンドン・ケンジントン・ミューズにあるTwistedのショールームにて、2025年5月29日に限定公開されたばかりだ。価格は未発表であり、各車がオーナーの希望に応じてカスタマイズされる「一点もの」だ。量産モデルとは一線を画す「希少性を持つライン」として愛されていくだろう。