世界的なコーヒーブームは台南にも伝播して、南国ならではのメロウな空間と融合した。いまでは街のあちこちに居心地のいいカフェがたくさんある。
お薦めの老舗カフェを紹介してくれたのは、客室乗務員として約15年にわたり空を飛びながら、世界45カ国以上のカフェを巡り、各地のコーヒー文化を読み解いている、咖啡空少Jerry (カーフェイコンサァオ ジェリー)。
彼が教えてくれた3軒は、「ローカルなつながりが感じられて、居心地がいい」お店。台南に自家焙煎コーヒーがまだ少なかった2011年、王宏榮(ワンホンロン)が路地裏で始めた「甘單珈琲館(ガンダンカーフェイグァン)」で働いていたのが「エスティーワン カフェ」の店主、ストーン。彼が独立するのと同じ頃、カフェ「ステーブルナイス ビルディング」を開いた張育齊(チョウユゥチー)は、ストーンが焙煎するコーヒーを看板メニューにしている。約10年前に芽生えたこのブームの背景は、台湾中南部・嘉義(かぎ)県にある阿里山にコーヒー農園が増えたこと。霧深い高地で育つ高品質の豆が、焙煎にこだわる店主たちの興味をそそったのだ。
たとえば、璟隆咖啡荘園(ジンロンカーフェイジョアンユェン)のコーヒーは、蜂蜜やベリーの香りも併せ持つ濃厚な味が素晴らしい。「コーヒーを自分だけの小さな風景が広がるような静かな場所で楽しめたら」と王が古民家を店に仕立てたように、日常に密着した店が増え続けている。
飛び立てば、4時間程度であっという間に到着する異国、台湾。まるで国内旅行のような気分で行ける身近な距離でありながら、そこには日本とはまったく違う世界が広がっている。いま体感すべき台湾の魅力は、「古さと新しさの出合い」。さあ、“OLD MEETS NEW”な台湾を探しに、出かけよう。
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焙煎技術の高さに定評のある、スペシャリストが営むカフェ

海が近い台南のパーマカルチャーを彷彿とさせる心地いい空間。


左:コーヒーを語り出したら止まらないオーナーのストーン。 右:自家焙煎のコーヒー豆は阿里山やエチオピアの浅煎りを多めにラインアップ。オンラインショップでも購入可能。


左:カフェラテ150元、ほんのり甘いミルクペーストのトースト、自製香濃奶酥120元 右:飲料メーカーと開発したコーヒーハイボールはクセになる味。180元
オーナーのストーンは、珈琲評議員も務めるスペシャリスト。郊外だが台南中心部から車やバイクで20分で行けるので、休日などに足を運ぶ客も多い。この日も開店直後に豆だけを買っていく客が見られた。お薦めの阿里山(ありさん)コーヒーは、複数の農園の豆から選べ、果実味も香りもそれぞれ全く異なる。「阿里山の豆は国際的にも評価が高い。品質向上に伴い、種の改良や焙煎の技術が進歩し、コーヒー産業全体が革新しています」とオーナー。
ST.1 Cafe’
住所:台南市永康區大橋一街328號
TEL:06-302-9366
営業時間:9時~17時
不定休
www.st1cafe.com
クリエイターたちも集う、コーヒーとアートの交差点

カフェ空間は日差しの影響を受けない造りになっているので太陽が照りつける日でも快適に過ごせる。

台北で音楽イベント企画などをしていたオーナーが、地元に戻って幼少期に住んでいた建物を改修し、デザインやアート関連のクリエイターが集える複合施設をオープン。ギャラリーや会員制の図書館も併設する。ビルの1階に位置するカフェは、デザートが充実していて長居してしまう。一番人気はティラミスだが、オーナーが好きなのはプリン。「エスティーワン カフェ」の豆で淹れるキンキンに冷えたアイスアメリカーノがよく合う。
StableNice BLDG.
住所:台南市中西區南寧街83巷9號
TEL:06-225-8349
営業時間:10時~18時
不定休
stablenice.com
もうすぐ15周年を迎える、自家焙煎コーヒーの火付け役

老舗の自家焙煎コーヒー店。ダイニングチェアからラウンジチェア席、ベンチやスツールまで、趣の異なる古家具ががさりげなく並ぶ。


台南の自家焙煎コーヒー店の先駆けとして、オープン以来15年近く、路地裏に佇む人気店。「当時、店を開くということは、自分らしさを表現することだと捉えられていましたが、長く営むうち最終的にたどり着いたのは、コーヒーに生活感を与えることでした」というオーナーは、誰もが気負わず自然に受け入れられるような“心地いい質感”を、コーヒーの味わいにおいても、古民家に古家具を並べた店の空間においても大切にしている。
甘單咖啡館
住所:台南市中西區民權路二段4巷13號由中山路79巷進入
TEL:06-222-5919
営業時間:13時30分~21時
不定休
Instagram:@ktcafa2011

咖啡空少Jerry /カーフェイコンサァオ
客室乗務員として約15年にわたり空を飛びながら、世界45カ国以上のカフェを巡り、各地のコーヒー文化を読み解く。国際的なカッピング資格やバリスタ資格も取得。著書に『空少的咖啡之旅:東京』がある。SNSでは「咖啡空少 world coffee shops」として情報を発信。
@worldcoffeeshops
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