建築家の謝欣曄お薦め、台南建築を体感するスポット4選!

  • 文:衣奈彩子、Pen編集部
  • 写真:齋藤誠一、興村憲彦
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台南ならではの時間が過ごせる、魅力的な場所を4つ紹介! 台湾の歴史をいまに伝える建物や、古さを活かした新スポットなど、台南建築の堪能できるスポットを新進気鋭の建築家である謝欣嘩(シェ・シンイェ)と歩く。

飛び立てば、4時間程度であっという間に到着する異国、台湾。まるで国内旅行のような気分で行ける身近な距離でありながら、そこには日本とはまったく違う世界が広がっている。いま体感すべき台湾の魅力は、「古さと新しさの出合い」。さあ、“OLD MEETS NEW”な台湾を探しに、出かけよう。

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台南永樂市場(タイナンヨンラァシィーチャン)

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台南の食と文化の中心地とも言える通り、「國華街(ゴォーホァージェ)」に面して立つ。

新旧が入り混じり、活気あふれる古き市場

街の中心部に位置し、“OLD MEETS NEW”な台南を象徴する場所とも言えるのがこの市場。1963年に建てられた鉄筋レンガづくりの2階建てのビルに、およそ200軒以上の露店が並ぶ。市場やその周辺には台南グルメの名店も集まっており、行列をつくる店もちらほら。

面白いのは、1階には小吃と呼ばれる軽食などを提供する店がひしめくが、薄暗い階段を上がって2階に行くと、地元の人が住む住居の間にびっくりするようなお洒落なバーやカフェ、ショップがいくつもあること。

「ひと言で言うと、活気にあふれているのがここの魅力。古いだけじゃなくて、若い人たちが新しいエネルギーを注いでいるから、現在進行形で盛り上がっているんです」

謝がそう太鼓判を押す通り、昼も夜も観光客とおぼしき若者たちが楽しそうに出入りする。2階のバーで深夜まで飲んでから、早朝にオープンする1階の露店で台南名物の牛肉湯(生の牛肉にお湯を注いで食べるスープ)で締める……なんて遊び方は、ここでしかできない。滞在中、何度も通ってしまいそうなスポットだ。

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薄暗い廊下には、住居と店舗が混在している。
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左: 市場の1階には飲食店などが数多く入っている。行列のできる店などもあり、熱気にあふれている。 右: 2階にあるアンティークショップには、古いポートレートなどがたくさん置いてあった。

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台南永樂市場の正面口

台南永樂市場(タイナンヨンラァシィーチャン)
住所:台南市國華街三段123號

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文鼎留声博物館(ウェンディンリョウシェンボーウーグァン)

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謝欣曄が内装を手掛けた1階のカフェは、クラシックな雰囲気。

音響機器の歴史を、落ち着いた空間で振り返る

フランス、ドイツ、アメリカ製の蓄音機やオルゴールをコレクションする私設ミュージアム。実は、この建物の一部は謝が手掛けている。
「クラシックな蓄音機から現代のターンテーブルへと至る造形の変遷を、空間デザインに落とし込んでいます」という設計は、たとえば1階のショップからカフェまで続く天井に、時代の異なるデザインを重層的に配置している。

上階にはマホガニー製の本体にラッパ型のスピーカーがふたつ付いた、20世紀初頭のフランス製の蓄音機や、ジュークボックスのようなオルゴール、エジソンが初めて開発したシリンダー型の蓄音機のレプリカなどを展示。音響機器の歴史はやがて、60年代に日本で開発された世界初の電子オーディオプレーヤー、テクニクス社の「SP-10 ターンテーブル」へと続く。

「私財を投じて収集された姿勢を尊敬しています」と謝が語るオーナーは、「ダーリン」というターンテーブルで有名な台湾のオーディオ&家電メーカー、ヤ・ホン・エレクトロニックを経営している人物。音響機器の歴史と文化を振り返ることで、音楽の楽しみ方が広がりそうだ。

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1975年築の住居をリノベした館内は、美しい螺旋階段や天窓も一見の価値あり。
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2〜4階が展示室。ラッパ型やシリンダー型の蓄音機やオルゴール、ターンテーブルなどが陳列されている。展示室への入場料200元、ガイドツアー100元
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博物館の展示室。

文鼎留聾博物館(ウェンディンリョウシェンボーウーグァン)
住所:台南市中西區民權路二段162號
TEL:06-221-0177
営業時間:10時~17時30分
定休日:月、火
料金:200元
www.wenting-museum.com.tw

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La Cupola 圓頂西餐廳(ラ・クーポラ ユェンディンシーツァンティン)

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Provintia Hotelの最上階にあり、見晴らしは抜群だ。

レトロクラシックな空間で、本格ディナーを

台南市内で本格的な西洋料理を味わえる名店として、1985年に創業したホテルレストランが、2023年の全館リニューアルに伴い最上階にお引っ越し。見晴らしのいいダイニングに生まれ変わった。こちらを設計したのもやはり謝だ。

「人気のレストランで、家族行事や記念日のデートは必ずここで過ごしたという思い出を持つ年長者も多いので、お店の空気感を損なわないかたちでリノベーションを施しました」と彼が言うように、細かいタイルの壁やすりガラスの間仕切りなど、台湾の建造物に昔からよく見られる建材をあえて取り入れるなど工夫している。窓からの眺めを独占でき、親密な時間を味わえるボックス席を多く設置。椅子にはベルベットの座面を採用するなど、レトロクラシックを追求した空間になっている。

メイン料理をオーダーすると、前菜、パン、デザートはブッフェから自由に食べ放題。これも前店から継承したスタイルで、この場所に思い入れのある親子3代での食事などにも喜ばれているという。旅行者にとっても、値段を気にせずお腹いっぱい楽しめるのは、ありがたい。

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親密感を感じる時間を過ごせるボックス席。
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メイン料理の価格には前菜やスープ、パン、デザートのブッフェが含まれているのがうれしい。ジャーマン・ポーク・ナックル(豚足のグリル)790元、グラス赤ワイン300元
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レストランの入り口。

La Cupola 圓頂西餐廳(ラ・クーポラ ユェンディンシーツァンティン)
住所:台南市北區成功路202號R樓
TEL:06-226-1901
営業時間:6時30分~10時、11時30分~14時30分、17時30分~21時(月〜金) 6時30分~10時、11時30分~15時、17時30分~21時(土、日)
無休

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東來理髮廳(ドンライリーファーティン)

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グレーの壁が印象的な空間。照明や鏡など、昔から使われているアイテムがレトロな雰囲気をつくり出す。

レトロな理容院で、台湾カルチャーを体感

いま台湾では、昔ながらの理容院が提供する散髪や髭剃りの技術の高さ、レトロな店内設備に魅力を感じる若者や観光客が増えている。謝もそのひとりで、この店にはずっと興味があったが、なかなか入れずにいたという。

「古い内装やデザインに惹かれてずっと気になっていたのですが、オープンな雰囲気の美容室と違って窓がほとんどないので、入るのを躊躇していました。でも勇気を振り絞って入店し、一度サービスを受けたらハマってしまって」

施術は、シャンプーや髭剃りはもちろん、キュウリの冷パックやフェイシャルマッサージまで。爪磨きも耳かきも、ベテランスタッフがチャキチャキと手際よく進めてくれる。

オーナーの王秀蓮(ワン・ショウリェン)は、理容師歴45年。「理髪店は清潔さが大事、熱々の真っ白なタオルでお迎えするのよ」と笑顔で客を迎える彼女は、優しいお母さんといった雰囲気で、自分の腕には絶対の自信を持っている。何年も通う常連客を大切にする一方、男性、女性問わず、20〜30代の客の髪を整えるのもうれしいと言う。

「史跡を訪ねるのと同じ感覚で、昔ながらの雰囲気が残るこの店に足を運んでみてほしい。楽しい体験ができるはず」と謝は背中を押す。

旅行客も大歓迎だが、週末は混雑するので予約するほうがベターだ。

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この道45年のオーナー、王秀蓮。8人の従業員は全員女性でテキパキと仕事をこなす。
FB-17_L1010535.jpg爪の手入れも手早い。洗髪とブローだけ希望する若者やカップルも増えている。
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入り口には石膏像が鎮座し、そのユニークさに惹かれて初来店する人も。

東來理髮廳(ドンライリーファーティン)
住所:台南市中西區成功路63號之1 
TEL:06-221-5898
営業時間:9時~19時 
定休日:月

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