レトロかつモダンなスタイルで、昨今の台南の風景をつくり出している建築家、謝欣曄(シェ・シンイェ)。彼の考える“台湾らしさ”とはどんなものなのか。その魅力を紐解き、語ってもらった。
飛び立てば、4時間程度であっという間に到着する異国、台湾。まるで国内旅行のような気分で行ける身近な距離でありながら、そこには日本とはまったく違う世界が広がっている。いま体感すべき台湾の魅力は、「古さと新しさの出合い」。さあ、“OLD MEETS NEW”な台湾を探しに、出かけよう。
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台湾人なら口をそろえて「台南には台湾らしさが残っている」と語る

台南は「台湾発祥の地」ともいわれる古都で、何層にも歴史が塗り重ねられてきた場所だ。また、都市開発が遅かったために市内には細い路地が残り、台北以上に古い建物が多い。そしてリノベーションがアツいエリアでもある。
その理由のひとつは、まだ台北ほど地価が高騰していないため。故に、若いクリエイターが新規事業を始めやすく、トレンドを反映したショップが多いのだ。そんな近年の流れを牽引しているのが、建築家の謝欣曄だ。彼が代表を務める本事空間製作所の拠点は台中と台南にあるが、いまやその人気は全国区。「本事宇宙マップ」という、彼らが手掛けた店舗を記した地図まで登場し、それを片手に建築巡礼をする人までいる。
謝が初めて台南に来たのは、大学院を終えてからだった。
「先輩の仕事を手伝いに数週間滞在したんです。その時、お洒落な店が点在する古い街並みと、おいしい食べ物にすっかりハマってしまって。街のサイズ感もちょうどよかった」
すぐに台南へ移住した謝は、建築事務所勤務を経て、台中の先輩とともに事務所を立ち上げ、台南を中心にリノベーションを受け持つようになった。今回本誌で取材した店にも、彼が手掛けたものが多数登場する。
いろいろなスタイルの建築を手掛けるが、台南で彼がつくるものは、どこか懐かしさを感じさせるものが多い。ノスタルジックかつモダンな空間は、そのまま台南の印象と重なる。謝は、「見慣れていて見向きもされないもの、古臭くてダサいと思われるものを、あえて新しくつくったりもする」とその仕事を解き明かす。
面白いのは、彼の言う「台湾らしさ」は、デザインに限った話ではないという点だ。
「自分にとって、台湾らしさというのはいい意味でのいい加減さや柔軟性があること。たとえば、椅子が壊れたら、その辺にある椅子を持ってきて用を足す。同じもので揃えなくてはいけない、という考え方はないんです。そんな『あるものでやりくりする』精神性やいい加減なところを、あえて真似しています」
意図的にタイルをずらす、椅子の柄をバラバラにして配置する……。彼の建築に見られるディテールへのこだわりには、謝のそんな考えがあるのだ。
若者たちが、レトロなものをかっこいいと捉えるようになったのは、2019年前後だと謝は言う。00年代から、時代の波とともに、独自性が次第に薄れてきたことへの反動なのだろう。
台湾人は口を揃えて、「台南には台湾らしさが残っている」と言う。懐かしさと新しさが混ざりあった街を歩き、ぜひいまの台湾を感じてほしい。
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