ミニの真髄ここにあり! 新型「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス」は軽快・爽快・痛快

  • 文:小川フミオ
  • 写真:MINI
Share:

ミニは「ドライビングのみならず、ライフスタイルを楽しむ人たちに人気を博している」と自負するクルマづくりをしている。2025年5月に英国で、まさに“ドライビング”と“ライフスタイル”、それぞれの楽しさを併せ持つ「JCW」モデルのメディア向け試乗会が開催された。

BF_MINI_JCW_Icy_Sunshine_Blue_052025_00032のコピー.jpg
ミニ・ジョン・クーパー・ワークスは赤いアクセントカラーを持つ。

「待ってました!」と快哉(かいさい)を叫ぶ、ミニファンとかホットハッチ(速いハッチバック車)好きは、きっと少なからずいると思う。

JCWとは、ミニに興味を持ったことのある人なら先刻ご承知のとおり、ジョン・クーパー・ワークスの頭文字。1960年代初頭にミニ・クーパーなる、ちっちゃいけれど速い、という画期的なモデルを世に送り出したレースカーの技術者がJCだ。

P90364010_highRes_mary-quant-pictured-.jpg
マリー・クワントが大ヒットさせたミニスカートの名もミニから借用したとか。

クーパーとかジョン・クーパー・ワークスは、BMWがミニを傘下に収めてからもずっと大切にしてきたブランド内ブランド。このサブネームが意味するのは、心が躍る性能ぶりをもったモデルだ。CよりJCWが性能で上をいく。はたして、今回のJCWも期待を裏切らなかった。 

BF_MINI_JCW_Icy_Sunshine_Blue_052025_00019のコピー.jpg
クリーンなサーフェスを特徴としていて車輪の存在感の大きさがスポーティ。

乗ったのは、「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス」と「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス・コンバーチブル」。赤色を効果的に使ったデザインで、視覚的にも実際の操縦性でも”ホット”ぶりをたっぷり味わわせてくれた。

クラシカル・ミニ、あるいはオリジナル・ミニも誕生は1959年。大戦直後の疲弊した経済状況下にあって、移動の足がほしい人たちは、当時バブルカーと呼ばれた、4輪のモーターサイクルのような簡便なウルトラコンパクトカーに乗らざるを得なかった。

P90364015_highRes_ringo-starr-the-beat.jpg
1964年にモンテカルロラリーで優勝したミニ・クーパーと一緒にいるのはリンゴ・スター。

そこでBMC(ずっと後ではローバーになった)という当時の英国の自動車会社では、サイズは抑えつつ、クオリティがうんと高いクルマには市場があるはずと見込み、つくりは上級車並み、設計も凝っていて、かつ全長はほぼ3mのクルマをつくり上げた。その基本設計の高さに注目して、チューンナップしたのがF1マシンでも知られていたJCだったのだ。

BF_MINI_JCW_Convertible_Copper_Grey_052025_00022のコピー.jpg
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス・コンバーチブルは爽快なオープンドライビングができる。

今回の2台に共通するのは、1998cc直列4気筒エンジン(最高出力170kW、最大トルク380Nm)と、7段デュアルクラッチギアボックスの組合せ。どちらも前輪駆動だ。

コンバーチブルと、ミニ(3ドア)、どちらも車体全長が4mを切っていて凝縮感が強い。ミニでは「カリスマティック・シンプリシティ」なる言葉で、シンプルだけれど力強さのあるボディデザインを表現している。 

BF_MINI_JCW_Convertible_Copper_Grey_052025_00034のコピー.jpg
丸い輪郭のヘッドランプと八角形の大きめのグリルがミニのデザイン・アイデンティティ。

2つのモデルは、ただし、違うマーケットを相手にしている。言ってみれば、「ミニ」はドライビング自体を楽しみたい人で、「コンバーチブル」はオープンエアドライブが好きなライフスタイル重視の人。

ドライブした印象はまさに期待を裏切らないものだ。とくにコンバーチブルは電動ホロを開けての走行が、たいへん爽快。ミニJCWコンバーチブルは、特にオープン感が強いデザインだ。

BF_MINI_JCW_Convertible_Copper_Grey_052025_00057のコピー.jpg
バスタブなどとも形容されるオープン感が強いコンバーチブルのキャビン。

ミニのコンバーチブルは、ウインドシールドが短くて、しかも立ち気味。ドライバーズシートからすこし視線を上げるだけで、前方の空が眼に入る。サイドウインドウを下ろすと、いい感じで風がコクピットに入ってきて、昔のオープンモデルを知っている人にはたまらない。

英国のカントリーサイドは、緑が多く、背の高い木がクルマに覆い被さってくるようなところもある。そんなところをオープンで走るのは、爽快の極み。日本でも緑のなかを走れるところはたくさんあるから、きっと楽しいはず。

BF_MINI_JCW_Convertible_Copper_Grey_052025_00060のコピー.jpg
直径240mmの大型円形モニターは豊富な機能をそなえ、ゴーカートモードでは出力とトルクの瞬間表示が可能。

エンジンは活発で、低い回転域からしっかり力が出る。「コア」というドライブモードが言ってみれば標準モードだが、昔風のトグル型スイッチ操作で「ゴーカート」モードを選ぶと、これぞJCWというぐらい、スポーティなドライブができる。

アクセルペダルの踏み込みに対する反応がより鋭くなる。開発者が「調整に心をくだいた」というステアリングホイールを切り込んでいった時は、車体の敏感な反応がすばらしく楽しい。加速も、カーブを曲がるのも、軽快そのもの。

特にアクセルペダル操作について感心させられる。踏み込んでいくときの加速感が実に繊細だし、踏み込んでいたのを戻していくときの減速感というか、速度の調整もまた繊細。このセンシブルなドライビング感覚がミニの真髄なのだと、英国・湖水地方のカントリーロードや、自動車専用道を走りまわって、感心した。

BF_MINI_JCW_Icy_Sunshine_Blue_052025_00062のコピー.jpg
操作すると10秒だけパワーアップするブーストボタンをそなえる。
BF_MINI_JCW_Icy_Sunshine_Blue_052025_00053のコピー.jpg
ヘッドレストレイント一体型シートは高いホールド性と快適な座り心地。
BF_MINI_JCW_Icy_Sunshine_Blue_052025_00017のコピー.jpg
三角形のリアコンビネーションランプがスポーティな雰囲気。

ミニのほうも基本的な印象は同じだ。基本的にクルマは2プラス2でいいと割り切れるなら、小回りがきき、すばやく、かつ気分を昂揚させるハッチバックという、なかなかお目にかかれない存在感を発揮している。

価格は比較的こなれていて、「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス」が536万円、「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス・コンバーチブル」が585万円。価値ある買い物だと思う。

MINI John Cooper Works

全長×全幅×全高:3876×1744×1452(3880×1795×1435)mm
ホイールベース:2495mm
1998cc4気筒 前輪駆動
最高出力:170kW
最大トルク:380Nm
7段デュアルクラッチ変速機
乗車定員:4名
価格:¥5,360,000(5,850,000)
問い合わせ:MINI
www.mini.jp
(※カッコ内はConvertible)