
スケートカルチャーに根ざした独自の視点で、日常の風景に静かな違和感と美しさをもたらすアーティスト・山口幸士の個展『SIGHTS』が、東京・青山のライトシード・ギャラリーで開催中だ。
スケートボードを通じて培った柔軟な感覚とストリートへの親和性を、絵画やドローイング、コラージュといった表現に昇華してきた山口。初期には、サンフランシスコのウォーレンバーグやチャイナバンクといった伝説的なスケートスポットを主題に風景画を描き、2015年からのニューヨーク滞在では、怪我によってスケートを一時中断するも、街そのものを“滑る場”として再定義する思想に出合う。以来、彼の関心はストリートの片隅に咲く花や、塗りつぶされたグラフィティの跡といった、日常の中の気配へと移っていく。
今回の展示では、2023年からスタートしたシリーズ「30 min quick painting」の新作50点を公開。街を移動しながら気になる光景を見つけると、その場でイーゼルを立て、30分以内に油彩で描き上げるという即興性の高いアプローチだ。これは、スケーターが瞬間的に状況を判断し、技を決めては次の場所へと移っていく所作に通じている。絵の表面には時に、風で舞い込んだ砂埃や小さな虫、車の排気による微細な粒子が付着しているが、山口はそれらも「街のリアルなテクスチャー」として作品に取り込む。また、『Evisen Skateboards』のスケートデッキ用に描き下ろされた連作の展示にも注目していきたい。
「都市の再開発」をテーマに、見慣れた風景の中に潜む変化にそっと光を当てる。山口の作品は、過ぎゆく日常の中でふと立ち止まるきっかけを与えれくれるだろう。



山口幸士 『SIGHTS』
開催日時:開催中~6月8日(日)
開催場所:ライトシード・ギャラリー
東京都渋谷区神宮前3-7-6 オン・サンデーズB1F
開廊時間:11時~20時
入場料:無料
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