いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「ブルーのフルセラミック」。今年新作時計でひと際注目を集めるフルセラミック製モデルを要チェック!
2025年の新作時計でひと際注目を集めているのが、ブルーのフルセラミック製モデルだ。オーデマ ピゲやゼニスなど歴史あるブランドから話題作が発表されたが、なかでも大きなニュースはシャネルの新作「J12BLEU キャリバー12.1」だ。メンズフレグランスの名作「ブルー ドゥシャネル」のボトルをイメージさせるような深いブルーを、シャネルが誇る「J12」に重ねた。
高級時計のマテリアルとして、セラミックはゴールドを急追する期待を背負う。高い硬度による傷つきにくさやアレルギーフリーの生体適合性だけでなく、深い色合いや光沢感もセラミックの長所であり、今後も無限の可能性を秘めている。特にブルーは18金では描けない色の代表といえるだろう。
腕時計におけるセラミックの歴史を振り返ると、いくつかのエポックメイキングなモデルを挙げられる。1986年、ハイテクセラミックを初めてブレスレットに採用したラドーの「インテグラル」、90年に同じくラドーが発表したケース一体型のセラミックモデル「セラミカ」、そして今日まで続く高級時計の素材として広く普及するきっかけをつくったのが2000年にシャネルが発表した「J12」だ。近年ではウブロが、モノクロだったセラミックの世界に鮮やかな色を提示してみせた。
英語でブルー・ブラッドが高貴な血筋を意味するように、ノーブルなブルーの腕時計は、セラミックの独壇場になりそうである。そうこの分野は文字通り、ブルーオーシャンに違いない。
1.CHANEL(シャネル)
J12 BLEU キャリバー 12.1

セラミック素材で時計界に衝撃を与えたメゾンのアイコンウォッチ「J12」の誕生25周年を祝う、オールブルーの新作。マットなダークブルーでケース・ベゼル・ブレスレットを彩るだけでなく、文字盤のベースまで“黒に近い青”で統一。搭載するムーブメントはケニッシ製のシャネル専用「キャリバー 12.1」で、COSC認定の高精度を誇る。
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2.HUBLOT(ウブロ)
ビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー ブルー インディゴセラミック

躯体をインディゴブルーで統一したセラミック製の「ビッグ・バン インテグレーテッド」。2018年に目の覚めるような鮮やかなレッドセラミックモデルを発表し、腕時計として初のカラーセラミックの開発・製造に成功したウブロ。本作もカラーセラミックをリードしてきたウブロならではの会心の出来で、美しい発色が目を引く。
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3.RADO(ラドー)
トゥルー シンライン ネイチャー コレクション

「マスター・オブ・マテリアル」の異名を持ち、1980年代よりさまざまな先進素材の開発を先導してきたラドー。本作は「水」を表現した印象的なブルーで、ケース、ブレスレット、文字盤を統一。青は著名なイタリアの庭園協会グランディ・ジャルディーニ・イタリアーニの3色のロゴから採られたものだ。同協会と提携し「トゥルー シンライン」に誕生したのが“ネイチャーコレクション”で、ブルーのほかブラウンやグリーンもラインアップする。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。※この記事はPen 2025年6月号より再編集した記事です